広角レンズは「広く写す」だけにとどまらない。被写体と背景の関係を再構築し、見る者の感覚を揺さぶる豊かな視覚体験を生む手段だ。コマーシャル・フォト8月号 特集「広角表現の可能性」では、4名のフォトグラファーが16mm、20mm、24mm、28mmの焦点域でそれぞれ撮り下ろし、ジャンルを超えたアプローチを試みた。
この記事では、EOS R5 Mark IIとRF24mm F1.4 L VCMを用いて香水瓶、アロマスタンドといったガラス小物をドラマティックに捉えた池嶋徹郎氏の作品を紹介する。
広角ならではのパースペクティブや空間表現を、撮り下ろし写真とともに探っていく。
RF20mm F1.4 L VCMで撮り下ろした八木斗希雄氏の記事はこちらから
池嶋徹郎 RF24mm F1.4 L VCM



Interview
“現代の広角” RF24mm F1.4 L VCM
破綻のない描写力
プロダクト撮影の世界では、被写体の形を正確に伝えることが大前提です。プロダクト撮影に限らず、広角レンズ特有の歪みや像の流れは、多くの方が気にされるポイントだと思います。そういった広角レンズの懸念点も踏まえながら、キヤノンEOS R5 Mark IIとRF24mm F1.4 L VCMを使って、3つのアプローチで広角単焦点レンズの特性を検証しつつ、新たな表現を探ってみました。
❶では、広角ならではの空間的な広がりを出すために、香水瓶を建築物に見立てて、ランドスケープ的な視点で撮影しました。背景にはディフューザー越しに、月に見立てた円型のライトを設置し、香水瓶の天面やロゴを照らすメインライトと、プロダクトの形を際立たせるハイライト用のライトを組み合わせています。
❷は、広角で寄った時に出やすい歪みや「像流れ」など、収差的なポイントを確認するようなイメージで撮りました。背景には銀色の筒を立て、青いボトルやカクテルグラスを組み合わせて、縦の直線ラインを意識した画づくりにしています。
❸は、自分の作品制作にも近いアプローチです。絞って寄ってみることで、どこからどこまでピントが合うのか、どのくらいの絞り値でボケがでるのか検証しました。作例ではF16まで絞って全体をしっかりと写しています。RF24mm F1.4 L VCMを使って感じたのは、「極めて現代的なレンズ」ということです。
像の流れがなく、きちんと結像していて、フリンジも少ない。描写にも癖がなく、絞り込んでも画が崩れません。全体的に画としての破綻が少ない印象を受けます。
歪みに関しては、ボディ側や現像ソフトによる歪曲収差補正を前提に画質や結像性能にしっかり振ったレンズという印象があります。もちろん、歪まないに越したことはありませんが、歪曲収差は撮影後でも比較的補正がしやすい。
一方、フリンジや像の流れをボディ側で自動補正すると撮影した画の印象が変わってしまうため、撮影者自身の画像処理に任せることを前提に設計されているような、潔い割り切りを感じました。レンズ自体のコンパクトさも含めて、まさにデジタル時代のレンズだと感じます。
今後、このRF24mm F1.4 L VCMを別の現場で使うとしたら、動画撮影で試してみたいです。
最近は、写真と動画の境界が曖昧になってきていて、現場でも動画撮影の機会が格段に増えています。でも、スチルライフフォトグラファーにとって、プロダクトを動画でどう見せるのか、何を動かして動画として見せるのかを悩まれる方は少なくないですよね。そんな時こそ、広角レンズで視点を動かしてみると、これまでとはまったく違う世界が立ち上がってくるかもしれません。
中でもRF24mm F1.4 L VCMは、そうした“視点の変化”の面白さを引き出しやすい画角だと感じています。新たな表現の入り口として、非常に魅力的な選択肢になるのではないでしょうか。
Making



池嶋徹郎(いけじま・てつろう)
1977年生まれ。2001年マッシュ入社。
静物写真を得意とし、動画の撮影にも力を入れている。日本広告写真家協会・正会員。
Web:https://www.mash-photo.net/

RF24mm F1.4 L VCM
対応マウント:RFマウント
焦点距離:24mm
明るさ:f1.4
レンズ構成:11群15枚
寸法:約Φ76.5×99.3mm
質量:約515g
詳細はこちらから
https://personal.canon.jp/product/camera/rf/rf24-f14lv
RF20mm F1.4 L VCMで撮り下ろした八木斗希雄氏の記事はこちらから
協力:キヤノンマーケティングジャパン
コマーシャル・フォト2025年8月号より転載

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