水槽銀河の小惑星とコップの中の入道雲
Photo&Words:Tetsuro Takai Photo :Shinjo Arai

高井哲朗が
スタジオスチルライフ撮影の
アイデアと 愉しみを 伝授
創造主ゼウスのように
光を操って 宇宙を創造しよう
スチルライフ それは あなたが
神になれる世界
被写体を正確に描写するだけがスチルライフフォトではない。
スチルライフマジックなら、石ころを銀河の小惑星に、牛乳を入道雲に見立てることもできる。
という訳で、今回は、2年前にNYから戻り、プロとして独立した荒井真丞さんをスタジオに呼んで、
アイデアとトリックを駆使した「見立て」撮影。
合成なし、CGなし。一発勝負のスチルライフイメージング。

スタジオの中に「宇宙空間」を作ってみてよ
“しんじょうくん たんじょうび おめでとう
そろそろかな ニューヨークは?
がんばって修行して 帰ってきたら また あそびにきてね”
そんな メールしてから もう何年も 経ったね
あれから ニューヨークに行き 土井浩一郎さんのアシスタント
青木健二さんとも お話しして
トップフォトグラファーの 写真を作る流儀 いろいろ刺激を受けて
いいもの 盗んできたのかな?
いまは 料理の撮影から 車の撮影まで いい仕事してるね
撮影仕事の 評判良くて それが 次の仕事を呼ぶ
いい循環だね
忙しいとは思うけど また APA アワード 公募が始まるから
あたらしい世界に チャレンジしても いい頃だね
APA アワード2023 は グランプリ ¥100 万 らしい
ゲット してみてよ
水槽は 用意するからさ
いままで 見たこと ないような
イカした 写真 撮ってほしいな
宇宙空間 みたいなの 天地創造 神の道 ゼウス
ブラックホールから 何が 生まれてくるか?
表彰式 楽しみにしてるよ
ライティングの組み立て

メラ:Canon EOS 5Ds R/レンズ:TS-E90mm F2.8/8秒 f18 ISO100

撮影台下のタオルに向けて打つ。

させ、分光したスペクトルを水面と石にあてる。





露光で撮影。水面が揺らぐことで水槽の下に敷いたタオルの布目が消え、
はじけたエアポンプの泡、水槽の底の気泡はブレて滲み、星雲のように見える。

牛乳の入道曇を作るマジック
おめでとう
えっ なに APA 賞 ノミネート えっ 本当ですか?
それは 突然のことで 棚からぼた餅的な 素敵な連絡だった
表彰式は 赤坂プリンス 宴会場
最初の APA 賞は コダックの広告だった
APA 賞のコピー 「サクセスストーリーの序章」
第一回目受賞者 篠山紀信 って書いてあった
サクセス ね 最高 頑張ろうって 思った
次の年も コダックのポスターで 応募した
前回より 斬新な出来
当然 賞 獲れると思っていたら 入選だけだった
なんで? そんなことないだろう 審査員 クソだなって 思った
でも その翌年 賞 もらったことで 新しい 宝石の仕事が 入った
いいのが 撮れた それで また APA 賞 もらった
化粧品会社からも 写真見せて欲しいと 連絡があった
新たなクライアント ゲット
広告仕事 どんどん 増えてきて スタジオも 作った
なぜか 怖いもんなしで ガンガン イケイケだった
そんなある時 コマ・フォト表紙撮影の 話が来た
「水って 瞬間撮影すると 氷みたいに 固まるじゃない?
柔らかい表現って できないの?」
なんて 当時の編集長 河村さんから 問題提起された
柔らかい水ね
ツンツンヘアーの頭が ぐるぐるした
水槽に 水 張って バシャバシャやって
ストロボあてると フリーズするよね
でも 水の中に水を入れたらどうだろう
ゆるやかに 動く? 比重差 水流 いけるかも
なんてことで やってみたのさ 夏の日は 入道雲だよね
写真ってさ 面白いよね 世界 作れるよ ゼウス 降臨だね
ライティングの組み立て

broncolor Pulso G Head+conical snoot /❸broncolor Pulso Spot 4+
Optical snoot ❹broncolor Impact 21+Fibrolite/カメラ:Canon EOS
5 D MarkII/レンズ:EF 50 mm F 2 . 5 コンパクトマクロ/1 / 100秒 f 10
ISO100

ブルーフィルターで青のグラデーションを作る。

やや斜め後ろからの光で、牛乳が広がった時、逆光気味に
牛乳の雲にハイライトが入るようにセット。

フィルターをつけ、コップ内の牛乳に色を入れる。

❸のスポットの色が弱まる。

なお、牛乳の雲は形や密度がコントロールできないため、
スヌート❷による左側のハイライトやFibrolite❹による色の入り方は、
実際に撮ってみないとわからない。
牛乳の入道雲を作る手順


垂れてしまったらやり直し。水槽を洗い直して1に戻る。


水槽の水を攪拌しないように注意。

水流で牛乳が湧き上がる瞬間を連写する。

この撮影のポイントはコップと牛乳の雲が水中にあるのを、気づかせないこと。
水中の気泡や水の濁りは厳禁。雲の形や広がりは偶然の産物なので、
1 回の連写で良いカットが撮れなければ、水槽やコップを洗い直して再度撮影する。

当時は連写ができない4 × 5フィルムでの撮影。
ワンショットごとに水槽とコップを洗い、フィルムを交換して再度撮影、
しかもフィルムの現像が上がるまで、ベストのタイミングでシャッターが
切れているかわからなという、非常に手間と時間(とフィルム代)がかかる撮影だった。
荒井真丞
あらい・しんじょう/1991年福島県生まれ。日本大学芸術学部を卒業後、都内スタジオ勤務の後、渡米。2018 年帰国。静物撮影を中心に活動中。
shinjoarai.com
高井哲朗
たかい・てつろう/1978年 フリーとして活動開始。1986年(株)高井写真研究所設立。広告写真を中心に活動するかたわら、ゼウスクラブを開催し、写真の可能性を伝導する。
www.kenkyujo.co.jp/
x.com/tetsurotakai
コマーシャル・フォト2022年9月号記事より
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