caretta studio gallery  島田敏次 「Ryu -A story begins-」

電通クリエーティブキューブ FACTORYカレッタスタジオ「caretta studio gallery」にて、2023年5月15日〜6月13日に開催された島田敏次による撮り下ろし作品「Ryu -A story begins-」。

今回、島田が撮影に挑んだのは、まだデビューまもない若手俳優・齋藤璃佑。
島田は、未完成な彼の魅力をどう引き出したのか。フォトグラファー、被写体それぞれの立場から話を聞いた。

INTERVIEW

島田 齋藤くんのマネージャーが知り合いで、僕から作品撮りのモデルを紹介して欲しいと打診していたんです。そこで紹介されたのが齋藤くんでした。
撮影はスタジオとロケを含めて計4回。当初はそれほど撮る予定はありませんでしたが、良いものが撮れたし、この展覧会の話が持ち上がったこともあり、継続して撮影することにしたんです。

僕ら広告フォトグラファーって、仕事ではカンプがあって、完成された魅力を持つタレントさんを撮ることが多いじゃないですか? でも、今回の被写体はモデルの経験も少ない俳優さんで、これから伸びていく若手。それをどう表現するかが、僕のチャレンジでした。


齋藤 雑誌の企画で撮影していただくことはありましたが、これほど時間をかけてじっくり撮る撮影は今までなかったので、すごく緊張しました。


島田 確かに最初は表情が硬かったね(笑)。だから、スタジオでの初シューティングでは、とにかく動いてもらいました。顔を右に向けてとか、手を上げてとか、とりあえずフォルムを作った後、ジャンプしてもらったり、徐々にそのフォルムを崩して、本人にあまり深く考えさせないように撮っています。

撮影中、齋藤くんは「僕、何してるんだろう?」と不思議だったかもしれません。今だから言うけど、最初の頃は何を言われているのか、意味がわからなかったでしょ(笑)?


齋藤 そうですね(笑)。だから、上がりの写真を見た時は驚きました。こんなかっこよく出来上がるのかって。僕としては、写真に撮られる時はしっかりとポーズをとり、動きを止めるイメージだったんです。

でも、島田さんと撮影を重ねていくうちに、それだけが正解ではなく、もっと自由でいいんだとわかりました。自分でも、結構成長できたかなと思っています。


島田 それが写真の面白さの1つだと思うんですよね。プロのモデルのように1カットずつポーズを作るより、動作の中の一瞬を切りとる方法ですね。

撮影前の齋藤くんとの打ち合わせでは予定調和を避けたかったので、敢えて細かく説明せず、撮影中の良いアクシデントを期待していました。その分、スタイリストやヘアメイクとはどういった表現の撮影をするかの打ち合わせをかなり綿密にしています。

共有する時間が増えて、徐々にラポールを築いていくと、良い表情が撮れました。元々の才能なのか、滲み出る魅力があるんですよ。
撮り手としては、回を重ねるごとにだんだん表情が変わる面白さもあるし。彼の故郷、秋田での撮影はリラックスした表情が撮れました。


齋藤 島田さんと2人きりで、楽しかったです。
島田さんに車を運転していただいて、ヘアスタイリングも自分で。寝癖を直した程度ですが(笑)。


島田 男2人きりでよく付き合ってくれたと思います(笑)。
男性のポートレイトの場合、かっこよさだけではつまらないから、それをどう崩していくかなんですよね。
一旦崩してから今まで見えなかった部分を引き出す。そうすると、僕も狙っていなかった別の齋藤璃佑が出てくるんです。それも、写真の面白さですよね。

今の時代、カメラも高性能だし、センスが良い人が多いから、アマチュアの方もかっこいい写真を撮ることはできると思います。でも、かっこいいだけではポートレイトとしては成立しないんですよね。見る人が感情移入できる、委ねられる写真が好きなんですよ。

まだまだ彼には魅力が眠っていると思います。経験や環境がトリガーとなって、これから新たな魅力が出てくるはず。それを追い続けられたら嬉しいですね。

ST :当間美友季(KIND) HM :MIU(KIND) Ret :田辺正明(VONS pictures)

島田敏次
(しまだ・としつぐ)

博報堂フォトクリエイティブ(現・博報堂プロダクツ)を経て、フリーランス。
APAアワードほか受賞歴多数。
lu-tas.com
@toshi_shimada

齋藤璃佑
(さいとう・りゅう)

2004年秋田県生まれ。ユニバーサル ミュージックアーティスツ所属。
2021年ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト グランプリ。
ryusaito.bitfan.id

※この記事はコマーシャル・フォト
2023年9月号から転載しています。