FEATURE 池嶋徹郎 写真展「Etude」

2025年12月16~28日の期間中、会期を分けてUltraSuperNew Gallaryとピクトリコ・ショップ&ギャラリーの2ヵ所のギャラリーで開催された池嶋徹郎氏による個展「Etude」。

香水瓶やスニーカー、万年筆などに光をあて、物体としての形の美しさをソリッドに際立たせた作品だ。

その撮影方法や池嶋氏の考えるスチルライフの魅力など話を聞いた。

INTERVIEW

――作品テーマは?

この「Etude」はメッセージ性を持たせず、その名のとおり習作として自主練のような感覚で撮影しました。

もしテーマがあるとすれば「正しく美しく撮る」です。この撮影はブツ撮りの中でも、いわゆる「単品切り抜き」というジャンルです。

仕事で撮る「単品切り抜き」はロゴを含めて全体をしっかりと見せますが、今回はロゴを見せるより物体としての形を際立たせて抽象化しました。

被写体は身の回りのものや仕事をきっかけに触れたものの中からライティング映えしそうなものを選んでいます。


――被写体ジャンルは様々ですが、作品全体的に統一感があります。撮影のルールはありますか?

普段のスチル撮影はストロボですが、今回は全てLEDライトを使いました。

最近は各メーカーから様々な種類のLEDが発売されていたり、動画撮影のオファーが格段に増えたこともあり、この撮影を通してLEDライトをブツ撮りで使うメリット・デメリットを自分なりに検証しました。

他にはルールというほどではありませんが、できる限り正確に撮影することですね。水平垂直を保ち、カメラをきっちりと構えてビューカメラでアングルを出して光をあてています。

あまり作品撮りをするタイプではないので、この撮影を通して改めてものの美しさとは何かを突き詰める作業ができました。撮ってみて発見だったのは予想より「美しくない写真」が多く撮れたことですね。


――作品を観ると百発百中に見えます。

実際はそんなことはないです(笑)。事前に仮説を立てて撮影に臨んでも、はずれることもあれば、逆に予想よりも良いものが撮れた場合もあります。偶然良い光を見つけたから、その光を元にして撮り直すなんてこともありました。

それができるのは作品撮りの良さでもあり、面白いところですよね。仕事なら確実に良い絵にしなければならないし、スタート時点ですでに着地点が見えていることも多いので、偶然の産物はほとんどありません。

作品撮影は偶然からアイデアが生まれることもあるし、最後の着地点を自分で決められる自由さがあります。


――仕事ではブツ撮り以外の人物や動画も撮影されていますね。

ジャンルや撮影内容によってそれぞれ楽しさや難しさがありますが、さっきお話した偶然性という意味では人物撮影の中でも、撮られ慣れていない一般の方のポートレイトはコミュニケーションの中で想像していないものが生まれる楽しさがあります。

一方でスタジオでのブツ撮りの場合、偶然性は少ないけれど過程を積み上げることで見えてくる面白さがあります。

ブツ撮りって「どれだけきれいに大きな積み木を積めるかの競争」みたいなものだと思うんですよ。

写真を仕上げるまでのプロセスをいかに緻密に積み上げられるかが1つの楽しみになっていて、言葉が適しているかわかりませんがゲーム的な面白さがあります。

撮影での偶然性や工程の積み上げ、そのどちらも写真らしさなのかもしれません。


――写真らしさや写真の力は池嶋さんが所属されているMASHのテーマでもありますね。

最近はCGの存在を通して改めて写真とは何かを考える機会が増えました。10年前なら写真撮影していた仕事がフルCGになることもあれば、CGではなくぜひ実写で、と依頼されることもあるんです。

写真を撮るとは一体どういうことか、写真らしさとは何か、を自ずと考えてしまうんですよ。 

この作品にしても「正しく美しく撮る」ために、一切の狂いなく水平を取ったり、左右対称均等な光を入れたいのなら写真ではなくCGの方が適しているのかもしれません。「Etude」の写真はきれいには撮っているけれど、きれい過ぎない。

レタッチもゴミ取り程度だし、ちょっとしたズレや歪みもあります。でも、もしかしたらそれが写真らしさなのかなとも思うんですよね。

そう考えると、技術が進んでも全てがCGにはならないんだろうなとか、そういったことを最近感じています。

20年ほど写真の仕事をしてきましたが、知らないこと、やってみたいことがまだまだあります。それを1つずつ潰していく作業も必要だなと。いろんなトライをしてまだまだスキルアップしていければと思います。

池嶋徹郎(いけじま・てつろう)

1977年 東京生まれ。2001年 東京学芸大学卒業、マッシュ入社。最近の主な仕事にEDWIN,PAUL &JOEなどがある。
Web:www.mash-photo.net
Instagram:@tetsuroikejima

<コマーシャル・フォト 2025年2月号より転載>


【特集】ブツ撮影の設計術
4人のフォトグラファーが撮り下ろす グラス撮影のアイデア&テクニック。光をどう設計し、どの角度から見せ、どこにフォトグラファーの発想を差し込むか。
その組み立ての違いによって、同じモチーフでもビジュアルは大きく変化する。岩崎幸哉、AKANE、川端健太、南雲暁彦の4名が、共通の被写体としてシンプルなグラスを撮り下ろし。四者四様の“設計術”から、ブツ撮りの現在地を探る。

【広告特集】
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【EXHIBITION REPORT 】
高木由利子 写真展 「Threads of Beauty 1995-2025 ― 時をまとい、風をまとう。」

【FEATURE 】
竹中祥平「ピンクとオレンジ」

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ほか