水曜日のカンパネラによる、歴史上の人物をモチーフにした楽曲シリーズの最新作のMV がとにかくすごい。「エジソン」や「聖徳太子」のMV も手がける渡邉直監督に取材をした。映像演出を担当したツアー中に初めて聴き、一度聴き終わる頃にはMV の大筋が出来上がっていたという。
外国人男性が肉を上げ下げする絵もそこで思いついたものだ。




「 2019年に僕が手がけたxiangyu『プーパッポンカリー』のMV がリファレンスになっています。その時も中東や東南アジアの方々を起用し、彼らの目に魅力を感じていました。ただし牛肉を扱うので宗教やモラルに反しないかは慎重に。生の牛肉を上げ下げするという行為に同意する方々に出演していただきました」。
渡邉氏は撮影当時、AI の知見を深めていたタイミングで全編AI で作成することも考えたが、視聴者がAI 表現に目が慣れ始めている今、あえて手作業で“AI っぽさ“ を再現することで世の中にカウンターを仕掛けた。事実、YouTube コメントには「AI か?」という声もあり、狙い通りだったと言える。また、中間あたりの中華店や道路の絵は渡邉氏が台湾出張の際に素材撮りしたもの。それが、“ いつ・どこかわからない感” を加速させた。




編集も渡邉氏が手がけた。なかなか編集の時間が取れず、別件でマイアミに向かうフライト中の15時間で仕上げた。「 『何をしているんだ…』という隣席の
方の視線はひしひしと感じました(笑)。編集でかなりジャンプアップしたところもあり、たとえば比率はもともと16:9で撮影していましたが、“ 胡散臭さ” が足りないと感じ、4:3に変更しました。レトロな質感への仕上げと相まってより時代性がわからなくなって良くなりました。『公式YouTube チャンネルから、MAD動画のような変なものが出ている』と視聴者を驚かせられたらいいなと」。
もともとの構想としては「シャトーブリアン」という単語がイエティやネッシーのようにどこからともなく発生し、果ては『世にも奇妙な物語』の名作「ズンドコベロンチョ」のような、「結局、シャトーブリアンって一体何なんだろう…」という読後感の残るストーリーにしたかったという。肝心のヴォーカル・詩羽の扱いについてだが、当初からカメオ出演、言い方を恐れずにいえば、あえて“ 雑な扱い” にすることは決定していたそうだ。ラストサビでようやく登場…と思いきや、よくみると詩羽風ギャルでフェイント、本人はさらに雑な登場。キャスト全員をオンラインミーティング画面で登場させる大団円シーンも渡邉氏のお気に入り。ちなみに、サビのパラパラ映像で流れる世界各地の天気予報の各都市の頭文字を取ると、とある意味のある言葉が生まれる。一度視聴すると、夢にまで出てきそう。そんな「シャトーブリアン」の沼にハマってみてほしい。



