
IOC公式フォトエージェンシー Getty Images の撮影体制
2026年2月、ミラノ・コルティナで開幕した冬季オリンピック。
IOC公式フォトエージェンシーGetty Imagesは、開会式が⾏われた2026年2⽉6⽇から閉会式の2⽉22⽇までの期間中、フォトグラファー、エディター、オペレーションスタッフを含む120名体制で臨み、600万点以上の画像を撮影・編集する。
ミラノ・コルティナ地域にある16の冬季オリンピック競技会場すべてをカバーするため、39名のエディトリアルフォトグラファーを配置、さらにロンドンのゲッティイメージズオフィスおよびリモート拠点から20名以上のエディターがリアルタイムで編集を⾏う。
さらに、独自ネットワークにより、撮影画像は最短30秒で世界へ配信される。
そこに写るのは単なる“速報写真”ではない。
光、構図、判断…そのすべてが研ぎ澄まされた一枚だ。
極寒、スピード、混雑、厳しい制限下という条件のもと、最前線でシャッターを切るフォトグラファーは、どのように瞬間と向き合い、どんな装備で臨んでいるのか。
この連載では、現地で撮影を担う3名のフォトグラファーに直接コメントを得ながら、作品・機材構成を通して、オリンピック競技撮影のリアルに迫る。
表現を支える機材構成
最終回の第6回目は、ゲッティイメージズ EMEAスポーツ部門 チーフフォトグラファー、Ryan Pierse氏(ライアン・ピアース)の機材 & 装備をコメントと共に紹介する。
前回紹介したRyan Pierse氏(ライアン・ピアース)作品はこちらから

極寒経験とコルティナの環境
2026年ミラノ・コルティナ冬季オリンピックは、Getty Images として私にとって4回目の冬季大会となります。
平昌や北京では氷点下30〜40度まで下がる極寒環境を経験しましたが、イタリアの山岳地帯では、概ね+5〜−10度程度と、比較的対応しやすいコンディションになると予想されています。
とはいえ、低温下ではバッテリー性能が低下するため、予備バッテリーの準備など寒冷地対策は依然として重要です。
それ以外については、撮影機材は通常どおり問題なく機能する見込みです。
担当競技と事前準備
私はドロミテ山脈に位置するコルティナを拠点に、女子アルペンスキー(リンゼイ・ボン、ミカエラ・シフリンを含む)、スライディング競技(ボブスレー、スケルトン、リュージュ)、カーリング、クロスカントリースキー、バイアスロン、スキージャンプなど、幅広い競技を担当します。
冬季オリンピックは特に好きな大会の一つですが、大会と大会の間は冬季競技を撮影する機会が限られるため、新しい会場では常に学習と慣れのプロセスがあります。
11月にコルティナ・スライディングセンターで行われたボブスレーおよびスケルトンのテストイベントを取材したことで、会場への理解と自信を高めることができました。
滞在拠点とコンディション維持
コルティナは、約3週間半にわたる滞在の拠点として、美しく、設備も整った街です。長くハードな撮影日が続く中で、名高いイタリアン・エスプレッソは間違いなく私たちの心強い味方になるでしょう。
通常の食事が取れない場合でも、プロテインバーや IM8 のサプリメントドリンクでエネルギーと集中力を維持しています。
また、雪や寒さに長時間さらされるため、バッテリー式のヒーター付きソックスやグローブ、さらに使い捨てのカイロは必須アイテムです。
フルレンジで対応する機材構成
冬季スポーツの撮影では、超至近距離から遠距離撮影まで幅広いシーンに対応する必要があります。
そのためフルレンジのレンズを持参しています。
主な機材
カメラボディ:
Canon EOS R1 ×2/Canon EOS R5 Mark II/Canon EOS R5
レンズ:
RF400mm F2.8 L IS USM/EF 300mm F2.8 L IS USM/RF70-200mm F2.8 L IS USM/RF24-70mm F2.8 L IS USM/ RF50mm F1.2 L USM/EF85mm F1.4L IS USM/EF 35mm F1.2/EF135mm F2L USM/RF10-20mm F4 L IS STM/EXTENDER RF1.4x
サポート機材:
Gitzo Monopod/Manfrotto Tripod & Ball Head/Manfrotto Clamp and Ball Head/Mini Tripod/Manfrotto Mini Stand/4 × PocketWizard Remote Triggers/5G Device/Apple M2 Pro Computer/Memory Card Reader
バッテリー:
Canon LP-E19/Canon LP4-EN
防寒・装備:
Heated Socks & Gloves/Hand and Foot Warmers/Gloves ×3/Crampons(Heavy & Light)/HH Jacket/Puffer/Trousers/Sorel Boots/Finisterre × Palladium Boots/Fulfil Protein Bars/IM8 Supplement drink/Ski goggles
【フォトグラファー プロフィール】

Ryan Pierse (ライアン・ピアース)
ゲッティイメージズ EMEA スポーツ部門 チーフフォトグラファー
英国を拠点に活動するオーストラリア出身の受賞歴を持つフォトグラファー。2004年にオーストラリア・メルボルンにて、ゲッティイメージズのスタッフフォトグラファーとしてキャリアをスタート。2013年から2021年にかけては、クリケット・オーストラリア公認フォトグラファーとしてオーストラリア代表クリケットチームに帯同。2017年にゲッティイメージズのAPAC チーフ・フォトグラファーに昇進し、2021年にロンドンオフィスへ異動。現在は EMEA(欧州・中東・アフリカ)スポーツ部門 チーフ・フォトグラファーとして、サッカー、フォーミュラ1、ラグビーを中心に、特別企画、特集、映像制作などを手がけている。
これまでに ATP、NIKE(グローバル)、IOC、FIFA、UEFA、ICC、RFU、Adidas Europe などのために、独占的に撮影を担当。作品は世界有数の国際的な新聞・雑誌に掲載。
また夏季オリンピック5大会、冬季オリンピック4大会、FIFAワールドカップ4大会、コモンウェルス・ゲームズ4大会、UEFA欧州選手権、ウィンブルドン、全仏オープン、全豪オープンテニス、F1グランプリ多数、国際クリケット・テストマッチ75試合以上を取材してきた。
Instagram:https://www.instagram.com/ryanpierse/
Getty Imagesが紡ぐ、記録と記憶

本連載では、6回にわたり、冬季オリンピックを撮るGetty Imagesのプロフェッショナルフォトグラファー達の現場と、それを支える機材と組織の構造を追ってきた。
会場の最前線で光を読み、ポジションを選び、瞬間を見極めるフォトグラファー。
その一枚を即座に選別し、整え、世界へ送り出す編集・配信体制。
極限の一瞬は、個の技術だけでも、組織の規模だけでも成立しない。
判断と準備、構造と経験。そのすべてが噛み合った時、はじめてオリンピックの“記録”は、世界の“記憶”へと変わる。
ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック。
そこに残る一枚一枚は、競技の結果だけでなく、プロフェッショナルの仕事そのものを写し出している。
ゲッティイメージズとオリンピック
gettyimages.com/collections/olympics
本連載一覧|ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック 撮影最前線レポート
第1回|Adam Pretty 作品編
第2回|Adam Pretty 機材編
第3回|Dean Mouhtaropoulos 作品編
第4回|Dean Mouhtaropoulos 機材編
第5回|Ryan Pierse 作品編
第6回|Ryan Pierse 機材編
