ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック 撮影最前線レポート 第5回|ライアン・ピアース Ryan Pierse が拡張する“視界”

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IOC公式フォトエージェンシー Getty Images の撮影体制

2026年2月、ミラノ・コルティナで開幕した冬季オリンピック。
IOC公式フォトエージェンシーGetty Imagesは、開会式が⾏われた2026年2⽉6⽇から閉会式の2⽉22⽇までの期間中、フォトグラファー、エディター、オペレーションスタッフを含む120名体制で臨み、600万点以上の画像を撮影・編集する。

ミラノ・コルティナ地域にある16の冬季オリンピック競技会場すべてをカバーするため、39名のエディトリアルフォトグラファーを配置、さらにロンドンのゲッティイメージズオフィスおよびリモート拠点から20名以上のエディターがリアルタイムで編集を⾏う。
さらに、独自ネットワークにより、撮影画像は最短30秒で世界へ配信される。

そこに写るのは単なる“速報写真”ではない。

光、構図、判断…そのすべてが研ぎ澄まされた一枚だ。

極寒、スピード、混雑、厳しい制限下という条件のもと、最前線でシャッターを切るフォトグラファーは、どのように瞬間と向き合い、どんな装備で臨んでいるのか。

この連載では、現地で撮影を担う3名のフォトグラファーに直接コメントを得ながら、作品・機材構成を通して、オリンピック競技撮影のリアルに迫る。

前回記事はこちらから


技法で切り拓くオリンピック表現

第5回は、ゲッティイメージズ EMEAスポーツ部門 チーフフォトグラファー Ryan Pierse氏(ライアン・ピアース)

彼は競技そのものだけでなく、異なる撮影アプローチを通して大会を記録している。

人の目では捉えられない世界を写す赤外線シリーズ
赤外線「Infrared」

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赤外線(Infrared)は、ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックで、人の目には見えない電磁スペクトル領域を捉えられるよう改造したミラーレスカメラで撮影されたシリーズです。

フルスペクトラム仕様にコンバートしたカメラに、4種類のレンズ装着型赤外線フィルターを使い分けることで、目的に応じた表現を実現しています。

カラーフィルターは可視光に近い幅広い色域を通す一方、IRブラック&ホワイトの表現に使用する850nmフィルターでは、選手のウェアのロゴやゼッケンさえ検出されない独特の描写になります。

Ryan Pierse コメント

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1956年のGraflexカメラでスマートフォン記録・ライブ送信へ
Graflex「Back to the Future」

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「Back to the Future」は、1956年にコルティナで冬季オリンピックが開催された当時使用されていたカメラへのオマージュとして、ヴィンテージのGraflexカメラで撮影したシリーズです。

現代的なアプローチとして、これらのカメラはスマートフォンに画像を記録できるよう改造されており、撮影したコンテンツをライブで送信することが可能です。

このカメラでの撮影には、非常に浅い被写界深度のため手動でピントを調整する必要があること、スマートフォンの画面に映る像がフォーカシングスクリーンの反射によって上下逆になること、そして明るい条件の方が画質が向上することなど、独特の難しさと魅力があります。

Ryan Pierse コメント

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最大10メートルのポールをスマートフォンで遠隔操作
ポール撮影「Above the Games」

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「Above the Games」は、伸縮式ポールを使用してオリンピック会場を俯瞰で捉えたシリーズです。

最大約10メートルまで伸ばすことができるポールの先端に装着したカメラを、スマートフォンからワイヤレスで操作し、フォーカスや露出の調整、シャッター操作を行っています。

Ryan Pierse コメント


次回は、Ryan Pierse氏(ライアン・ピアース)の機材構成とカバンの中身を紹介する。


【フォトグラファー プロフィール】

Ryan Pierse (ライアン・ピアース)
ゲッティイメージズ EMEA スポーツ部門 チーフフォトグラファー

英国を拠点に活動するオーストラリア出身の受賞歴を持つフォトグラファー。2004年にオーストラリア・メルボルンにて、ゲッティイメージズのスタッフフォトグラファーとしてキャリアをスタート。2013年から2021年にかけては、クリケット・オーストラリア公認フォトグラファーとしてオーストラリア代表クリケットチームに帯同。2017年にゲッティイメージズのAPAC チーフ・フォトグラファーに昇進し、2021年にロンドンオフィスへ異動。現在は EMEA(欧州・中東・アフリカ)スポーツ部門 チーフ・フォトグラファーとして、サッカー、フォーミュラ1、ラグビーを中心に、特別企画、特集、映像制作などを手がけている。

これまでに ATP、NIKE(グローバル)、IOC、FIFA、UEFA、ICC、RFU、Adidas Europe などのために、独占的に撮影を担当。作品は世界有数の国際的な新聞・雑誌に掲載。

また夏季オリンピック5大会、冬季オリンピック4大会、FIFAワールドカップ4大会、コモンウェルス・ゲームズ4大会、UEFA欧州選手権、ウィンブルドン、全仏オープン、全豪オープンテニス、F1グランプリ多数、国際クリケット・テストマッチ75試合以上を取材してきた。

Instagram:https://www.instagram.com/ryanpierse/

ゲッティイメージズとオリンピック
gettyimages.com/collections/olympics

本連載一覧|ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック 撮影最前線レポート

第1回|Adam Pretty 作品編

第2回|Adam Pretty 機材編

第3回|Dean Mouhtaropoulos 作品編

第4回|Dean Mouhtaropoulos 機材編 

第5回|Ryan Pierse 作品編

第6回|Ryan Pierse 機材編

【特集】特集「注目の若手フォトグラファー」
本特集ではコマーシャル・フォトが注目する若手フォトグラファー5名にフォーカス。直近の仕事を起点に、日々の制作への向き合い方、これから挑戦したい表現やフィールド、そして撮り溜めてきたパーソナルワークについても話を伺った。
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【特集】注目レンズを使った撮り下ろし
2人の若手フォトグラファーが、注目の交換レンズを用いて新たな表現に挑戦
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