ゼウスのスチルライフマジック Vol.36

自然光+照明の料理&キッチン撮影
Photo&Words: Tetsuro Takai Photo: Sayuri Sone

高井哲朗が
スタジオスチルライフ撮影の
アイデアと 愉しみを 伝授
創造主ゼウスのように
光を操って 宇宙を創造しよう
スチルライフ それは あなたが
神になれる世界

フードコーディネーター曽根小有里さんのキッチンスタジオは、
高井写真事務所の2軒隣り。今日はそちらにお邪魔して撮影をする。
曽根さんが作ってくれたのは、春らしい色合いの手毬寿司。
料理のアップは曽根さん自身に撮影してもらい、
ゼウスは引きの写真で、キッチン全体の空間撮影をする。

Photo:曽根小有里

スタジオの前を 颯爽とかっ飛ばす黒塗りチャリンコ
“おはようございます” 言葉が 風に流されず
朝から 元気だ 健康的

小有里さんは ゼウスクラブの前身
東京写真研究倶楽部からのメンバーだ

それが まぁ
どんな理由で そうなったのか
ゼウスのスタジオの 2軒先に
キッチンスタジオを 作った

それが また
旦那さんの設計らしく とっても素敵だ

いいな このスタジオは 光も 綺麗に入ってくる

料理を作る人に 自分の料理写真
撮ってもらうのもいいな

なんてことで
キッチンスタジオのオーナー
曽根小有里さんの登場です

明るい キッチンスタジオは
陽の光を 綺麗に入れるために
設計の段階で いろいろ試行錯誤 したみたいで
人工的な光は あまりあてなくてもいいように
考えられてる

さて どんな感じに
光 コントロールするのかな?

ライティングの組み立て             

ライト:❶ Aputure LS 60X + LS60 Softbox
カメラ:Canon EOS 6D
レンズ:EF50mm F2.5 コンパクトマクロ/1/10秒 f11 ISO200

キッチンスタジオの窓から入る自然光のみで撮影。
左斜めから入る順光で、料理全体に光が行き渡るが、
右サイドと画面奥はやや暗い。
銀レフをテーブルに立てて、皿右側の明るさを補う。
斜め後ろからLEDのソフトボックスライト❶を加える。
逆光で画面奥を明るくするとともに、ボトル、グラスの透明感を出す。
LEDの色温度は暖色にして、写真全体に赤味をのせて、
春らしいイメージに仕上げた。

ZEUS’S STILL LIFE MAGIC

Photo:高井哲朗

小有里さんが 撮影していた時は
外からの光が 綺麗に入っていたんだが
ゼウスが撮る頃には 陽が傾き 光も翳り
くらーい部屋に なってしまってた

さて どうしたもんやら
人工光 で 作るしかないな
窓から 光が差すように
メイン光を アンブレラの拡散光にして
春霞の光のように 柔らかい光で 包んだ感じにしてみた

室内光も うまく使って 影の部分を 極力少なくして
カウンター 付近に ソフトボックスで 光を加えて

奥の壁には
窓際の光のように スリップライトで
部分的にハイライトを 入れていく

ゼウスのスタジオも
このスタジオも
周辺の再開発で
もう解体されてしまうから
この雰囲気も残して
空間撮影として残そうと 考えた

優しさ 暖かさ 
ほんわりとした 柔らかな感じを
硬い直射光でなく
柔らかなバウンスで
包んでみようと 光を使ってみた

フィルム撮影の時には
直射日光で撮っても 飛ぶってことがなかった
それは フィルムベースの部分だけは
ちゃんと残るからね

デジタル撮影になって
光のコントロール ちょっと 難しくなってきたね

芯のある 強い光
コントラスト高めの光の使い方は
後々 レタッチ難しくなるから

撮影方法も 光は回すようにして
撮影後の レタッチするときに
コントラストとトーン 調整するほうが
うまくいくみたいだ

でも どうかな
最近のデジタルカメラ すごく優秀になってきてる
ディティール 細かく再現できるように
なってきてるから
あまり 気にしなくて いいかもね

強い光で 対象物 引き立てる
柔らかい光で 包みこむようにして
全体のイメージを 表現する

光で 季節的な表現も 演出できるよね

スチルライフ 柔らかな日

光の 伸びやかさ 春色のイメージ

ライティングの組み立て             


ライト:❶ broncolor Pulso G Head + Umbrella white ❷ Aputure LS 60X + LS60 softbox
    ❸ broncolor Striplite 60 Evolution
    ❹ broncolor Head(旧タイプ)+ broncolor Quadroflex 80×80cm softbox
カメラ:Canon EOS R6/レンズ:EF24-105mm F4L IS II USM 1/10秒 f16 ISO200

アンブレラ❶。
手毬寿司の皿を中心に、テーブル全体の広い範囲に光をあてる。
斜め後ろからのソフトボックス❷を加え、ボトル、グラスの透明感を出す。
背景用ライト❸と❹でキッチン奥の光量を補う。
ライト❸は前面に乳白アクリルがはまったボックスライトで、
ツヤのあるキッチンの壁に長方形のハイライトが入る。
大きめのソフトボックス❹はキッチンの奥壁全体にあたる拡散光で、
壁に反射した光は手前のテーブルにも回り、画面全体が明るくする。

調理中の曽根さん。
本日のメニューは春らしい彩りの手毬寿司。
寿司ひとつひとつに細かな細工をしていく。
手毬寿司を盛り付けた皿をメインテーブルに置いて撮影開始。
まずは曽根さんがアップで撮影。
その後、被写体位置はそのまま、引きのアングルでゼウス高井が撮影した。
セット全体。料理に対しては、窓からの自然光に加え、
左手前からのアンブレラと左奥からのソフトボックス(LED)の2灯。
さらに奥のキッチンの壁に向けて左右からライトを入れている。
日中、窓から陽がさしている時は、キッチン奥の光沢のある壁に窓の光が映り込む。
それを再現するために60cm長のボックスライトを立てて、ハイライトを作った。
キッチンスタジオには自然光が入る大きな窓があるが、
撮影時は陽が傾いてしまったため、窓辺に置いたアンブレラライトの拡散光で補う。
キッチン右の80cm×80cmソフトボックス。
棚下の照明(地明かり)を活かし、光沢のある奥壁に余分なハイライトを作らないように、
ライトの角度を浅くしている。

曽根小有里(Sayuri Sone)
フードコーディネーター、管理栄養士、ソムリエ、ビアソムリエ。
栄養士として勤務後、タイへ料理留学をし、帰国後は料理教室の講師を務める。その後、料理専門の制作会社を経て独立。現在、各種企業や書籍、雑誌、WEB等に向けてのレシピ開発、撮影スタイリングを行う。ワインやビールに合わせたおつまみレシピや健康レシピが得意。
URL:sayurisone.com/
Instagram:@sayurisone

高井哲朗
たかい・てつろう/1978年 フリーとして活動開始。1986年(株)高井写真研究所設立。広告写真を中心に活動するかたわら、ゼウスクラブを開催し、写真の可能性を伝導する。
www.kenkyujo.co.jp/
x.com/tetsurotakai

コマーシャル・フォト2024年04月号記事より

ゼウスのスチルライフマジック 記事一覧

コマーシャル・フォトで好評連載中の「高井哲朗/ゼウスのスチルライフマジック」がMOOKとしてまとまりました。
化粧品のボトル、ジュエリーから自転車、バイクまでさまざまな「ブツ撮り」に挑戦。

Vol.1
「ゼウスのスチルライフマジック

プロフェッショナルスタジオライティングのアイデアと実践」

Vol.2
「光を操るスタジオ・スチルライフ ライティングのアイデアと実践」

コマーシャル・フォト 2025年6月号

【SPECIAL FEATURE:TAKAY】
撮り下ろし:ドリアン・ロロブリジーダ
TAKAYインタビュー/作品紹介

NYと東京を拠点としファッション誌からラグジュアリーブランドの広告、アーティストのジャケットワークまでを手掛けるTAKAY氏。ドラァグクイーン、ドリアン・ロロブリジーダ氏とのフォトセッションを皮切りに作品紹介とインタビュー、写真展紹介で綴る22ページ。

【特集】
この春、編集部が選んだ「今、注目すべき5人のフォトグラファー」。彼らがシャッターを切る理由は? 写真で何を語ろうとしているのか?キャリアの原点から最新作までを深掘りし、それぞれの”視点”に迫る。未来の一枚をつくるヒントが、きっとここに。
大野隼男/クロカワリュート/杉田知洋江/Miss Bean/Leslie Zhang

【連載】
長山一樹流 違いを生むコマーシャル・ポートレイト
「 ハッセルブラッドで撮るポートレイト」

Create My Book -自分らしいポートフォリオブックを作る-
Vol.10 「オールドレンズ」 金村美玖

ほか