六本木スタジオの広い白ホリでモンスターバイクを撮ってみよう
Photo&Words: Tetsuro Takai Photo: ISEKI

高井哲朗が
スタジオスチルライフ撮影の
アイデアと 愉しみを 伝授
創造主ゼウスのように
光を操って 宇宙を創造しよう
スチルライフ それは あなたが
神になれる世界
六本木スタジオ。
ゼウス高井も若かりし頃、ここのスタジオスタッフとして、先輩フォトグラファーの撮影現場を沢山見てきた。
今はビルも新しくなったけれど、なつかしい学校のような場所。
そんなプロ御用達の名門スタジオで、同じく六本木スタジオ出身のISEKIさんとバイクを撮影する。
協力:六本木スタジオ www.roppongi-st.co.jp

六本木スタジオ 通称六スタ
昔 ここでスタジオマンをしていた
その六スタで 何か撮ってみるのも
面白いんじゃないの なんてこと 考えた
一緒に撮影するフォトグラファーには
六スタ卒業生 ISEKIさんを 紹介してもらった
広いスタジオ 何を題材にするか? 随分と悩んだけど
以前 シーシャを一緒に撮った 戚くんの友達 心源くんが
素敵なバイク 買ったって 話を聞いた
それは ちょうどいいかも
心源くんのバイクは 赤いDUCATI
綺麗なボディラインと 鮮烈な赤
女性フォトグラファーの ISEKIさんは ブツ撮り 得意で
化粧品なんかの撮影も 多いけど バイクは詳しいのかな?
スタッフの男の子に 色々 聞いてるみたいだけど
どんな撮影になるんだか 楽しみだな
懐かしの スカイライト
紗幕で 光 回すのか
基本的に タングステンライトと モデリングの定常光で
ハイライトを 作り込んでいくのかな?
定常光は 光のあたり方が すぐわかるから
見てるだけで 楽しいな
ライティングの組み立て

ライト:❶ スカイライト(スタジオの天井バトンに取り付けられたライト)
❷1KW PRIMO ❸アイランプ ❹❺Profoto ProHead Plus+Profoto Pro-11
カメラ:NIKON D810 レンズ:Carl Zeiss 25mm F2.8 1.6秒 f22 ISO100

天紗幕にバウンスしたライト❷の光を、カウル部にあてる。



カウル前面の明るさを補う。

光を回さないように、白ホリ背景から床にかけて大きな黒布を敷き、
右のカポックも黒面を内側に向けて立てている。

右の四角い光芒は、天紗幕上のスカイライト(天井に吊った大型バンクライト)の透過光。
左の円形の光芒が天紗幕下からあてたライトのバウンス光。

黒ボードでカメラ側に漏れる光をカットしている。

高い位置からの点光源で、カウル・風防に小さなハイライトを作っている。

イタリアのモンスターバイク。
ZEUS’S STILL LIFE MAGIC

バイク撮影で 思い出した
IMAMU-MOTORS 今村くん
六スタの後輩で 篠山紀信さんの アシスタントも勤めて
その後 プロとして活躍してた
突然 写真を卒業して 整備士の学校に入り
最近 バイクショップのオーナー やってるらしい
連絡してみたら 自分で乗っているのは
Harley-Davidson
これは 興味深い
だいぶ 乗りこなしたロードキング
大きくて イカツイ奴らしい
これは絵になりそうだ ってことで ご登場 お願いした
六本木スタジオは 創業57年 僕が入ったのは 50年前
当時の社長は 池田さんで 内藤さんが マネージャーだった
大阪から出てきて 面接に行ったら
「ああ いいよ 明日から 布団と着替え 持っておいでよ」
と言われ 東京での寝床もできた
あの頃はみんな そんな感じだった
仕事は 噂には聞いていたけど なかなかにハードワーク
だけど スタジオライティングも 沢山 覚えた
そして ここで学んだ大切なことは
写真で楽しく稼いで 生活する方法だった
池田社長は 元ヤナセのトップセールスマン
資本主義社会で生き抜く 生活のルール レールの敷き方を
たっぷりと お話しいただいた
お金の使い方 などもね
この歳まで 写真だけで 楽しく生活できたのは
あの六スタ修行時代が あったからこそ
すでに プロフォトグラファーとして活躍している
六スタ卒業生は 300人を越しているらしい
いま現在も 更新中だし
ある意味 職業訓練教室 かも
当時 ちょっとヤバそうな18歳だった あの今村くんも
楽しい写真生活 送れたくらいなんだから
人としての 大切なコミュニケーション
それを 育ててくれたような そんな スタジオだった
特別な 訓練場所だね
六本木スタジオ
仕事はちょっと 大変だったけど
素晴らしい生活のための 第一歩 なんだよ
夢を 叶えるためのね
ライティングの組み立て

ライト:❶Aputure LS 60X ❷broncolor Striplite 60 Evolution ❸スカイライト
❹Aputure INFINIBAR PB12
カメラ:Canon EOS R6 レンズ:EF24-105mm F4L IS USM f/2.8 1/10秒 f13 ISO100

LED直光でヘッドライト、風防のロゴをシャープに描写する。

このライトは奥の白ホリ背景にも回っている。

背景を明るくなり、風防エッジにもハイライトが入った。

それに合わせてLEDライト❶の出力を下げる。
露光時間を長くすることで、色温度の低いスカイライト❸の暖色が、
背景にかぶってくる。


ビビットな赤と白の「Ducati Panigale」とは対照的な黒と銀の塊。
機材搬入用大型エレベーターで、B1Fの第3スタジオまで運び込む。

被写体が大きく、一度配置をすると動かすのもなかなか大変なため、
まずはフロントライトの位置を決め、そのライト1灯でアングルを検討する。

ハイライトの映り込み具合を見ながら、手持ちで角度、位置を決めた後、
ライトをスタンドに固定する。

チューブタイプのLEDにトレペを巻き、乳白アクリル越しに手持ちで左右に振る。
長時間露光(1/10秒)のブレも加え、風防に柔らかな映り込みを作った。

バイク風防にハイライトを入れつつ、背景にも光が回り込むように、白ホリ寄りにセットした。

左から、バイクオーナーIMAMU-MOTORSの今村敏彦さん、フォトグラファーISEKIさん、
ゼウス高井はサングラスに革ジャンも用意してバイカーのコスプレ。
ISEKI
六本木スタジオ卒業後、SHINMEI氏に師事。2021年独立。
化粧品、ジュエリーなどスチルライフを中心に活動。
www.isekinaoko.com
高井哲朗
たかい・てつろう/1978年 フリーとして活動開始。1986年(株)高井写真研究所設立。広告写真を中心に活動するかたわら、ゼウスクラブを開催し、写真の可能性を伝導する。
www.kenkyujo.co.jp/
x.com/tetsurotakai
コマーシャル・フォト2024年05月号記事より
ゼウスのスチルライフマジック
好評発売中
コマーシャル・フォトで好評連載中の「高井哲朗/ゼウスのスチルライフマジック」がMOOKとしてまとまりました。
化粧品のボトル、ジュエリーから自転車、バイクまでさまざまな「ブツ撮り」に挑戦。
Vol.1
「ゼウスのスチルライフマジック
プロフェッショナルスタジオライティングのアイデアと実践」
Vol.2
「光を操るスタジオ・スチルライフ ライティングのアイデアと実践」


コマーシャル・フォト 2025年6月号
【SPECIAL FEATURE:TAKAY】
撮り下ろし:ドリアン・ロロブリジーダ
TAKAYインタビュー/作品紹介
NYと東京を拠点としファッション誌からラグジュアリーブランドの広告、アーティストのジャケットワークまでを手掛けるTAKAY氏。ドラァグクイーン、ドリアン・ロロブリジーダ氏とのフォトセッションを皮切りに作品紹介とインタビュー、写真展紹介で綴る22ページ。
【特集】
この春、編集部が選んだ「今、注目すべき5人のフォトグラファー」。彼らがシャッターを切る理由は? 写真で何を語ろうとしているのか?キャリアの原点から最新作までを深掘りし、それぞれの”視点”に迫る。未来の一枚をつくるヒントが、きっとここに。
大野隼男/クロカワリュート/杉田知洋江/Miss Bean/Leslie Zhang
【連載】
長山一樹流 違いを生むコマーシャル・ポートレイト
「 ハッセルブラッドで撮るポートレイト」
Create My Book -自分らしいポートフォリオブックを作る-
Vol.10 「オールドレンズ」 金村美玖
ほか