ゼウスのスチルライフマジック Vol.41

高井哲朗が
スタジオスチルライフ撮影の
アイデアと 愉しみを 伝授
創造主ゼウスのように
光を操って 宇宙を創造しよう
スチルライフ それは あなたが
神になれる世界

凝った女性ポートレイトを自身のサイトで発表しているフォトグラファーSatoshiさん。

中でもバスタブで撮影したという水とミストと女性を絡めた「ゆらぎ」シリーズは代表作のひとつ。

幸いにもゼウス高井の新しいスタジオには屋内と屋内に浴槽が二つもある。

ならば今回はブツ(物)をテーマに風呂撮影。

Photo:Satoshi

水芸の達人 Satoshiくん

それは彼が ジャグラーの元世界チャンピオンで
繊細な指使いが できるからかな

思い描いたように 素敵な 水波ができる

最近では お風呂で
ちょっと不思議な ポートレイト 撮影してる

スモークマシンでなく ミストを使って
霧の中のような淡い色使いが
ロマンチックで 水彩画みたいで 綺麗

ゼウスの新しいスタジオは
外風呂 と 内風呂 2つ あるので
お風呂撮影 共作もありかも

そんなわけで Satoshiくんに
登場をお願いした

いつもは ポートレイト撮影 たくさんしてるけど
ブツ撮影は あまりしたことがないみたい
どうなるかな?

まず 何を どう撮るか?
ここから だけど
いろいろ 考えているみたい
楽しみだね

ライティングの組み立て             

ライト:❶ Profoto B10X Plus ❷ Profoto B10X Plus+OCF IIバーンドア
カメラ:Hasselblad X1D II 50C/レンズ:XCD 120 1秒 f14 ISO200で撮影

ライト❶。浴室の天井に向けてバウンス。
ライト❷。浴室壁際に立てた丸型レフ(銀面使用)に向けて照射。
被写体のスピーカーとミスト発生器のスイッチをオン。
スピーカー、ミスト発生器共、内蔵LEDがランダムなカラーで発光するので、
タイミングを見ながら、カメラ三脚固定、シャッター速度1秒の長時間露光で撮影。

Satoshiさんが撮影するのは防水スピーカー。
浴槽に浅く水を張って、少し角度をつけた俯瞰でカメラをセットする。
スピーカーの横にあるのがミスト発生器。
浴室の天井に向けた1灯(天バン)と、浴槽の縁に立てた円形の銀レフに向けた1灯の計2灯。
狭い浴室での撮影のため、ライト(ストロボ)はモノブロックタイプを使用。
被写体の防水スピーカーは、音に合わせて内部に仕込まれたLEDが多色で発光する製品。
ビート感強目の曲をかけながら撮影をする。
超音波ミスト発生器。超音波で水をミストにして噴霧する。
こちらも内蔵LEDがランダムに発色する。
浴槽に張った水はバスソルトで薄いブルーに着色。
元々モデルの撮影ために考案した仕掛けなので、人体にも優しい。

浴室の室内光を消して撮影。
ミスト発生器を左手に、レリーズを右手に持ち、ミストのかかり具合とLEDの色の効果を見ながら、
シャッターを切っていく。

ZEUS’S STILL LIFE MAGIC

Photo:高井 ZEUS 哲朗 

露天風呂に 浸かりながら 日本酒を クイッと一杯

そんな感じのイメージ 撮ろうと思った

真昼間 光注ぐ お風呂
水に 揺れる波紋が 光を浴びて泳ぐ

火照った体に キリッと冷えた お酒
喉ごし スッキリ

グラスに映る 太陽の光
キラキラ と

酒の故郷は
「岐阜県のグランドキャニオン」と最近話題の川辺町
町の中央を 飛騨川が流れる 豊かな山と 川に囲まれた町

白扇酒造は 江戸時代後期から 味醂屋としてスタート
材料選び 麹造り 仕込み 熟成 仕上げ
どの工程も 手入れを欠かさず
時間をかけ 大切に醸した一滴

複雑で旨みのある 美味しいお酒

日本酒のイメージ写真は
溪谷など 美しい自然の風景を背景に
撮られてることが多い

それを 東京のど真ん中
ゼウススタジオで 撮影すると どうなるか?
チャレンジです

バスタブに お酒のボトル 泳がせた
太陽の直射光で 水面が輝いた

波が揺れる ここちよい 光の形

鏡で 輝きに動きを加え
元気いっぱいな はじける味わいを演出

象徴的な 髭文字のラベルに ボックスライトをあてる
綺麗な水に磨かれた お酒を 光の中に泳がせるように

黒松白扇は 白扇酒造の 新しいブランド
日本の伝統と 現代の文化を合わせた 新しい日本酒で
世界にチャレンジしたい
そんな想いを 水と光だけで 演出してみた

美しい清流の 自然の中に溶け込む お酒でなく
お酒そのものが 語りかけてくるように

チャレンジブランドが 立ち上がるように

ライティングの組み立て             

ライト:❶broncolor Palso ヘッド(旧タイプ)+Softbox60×60(旧タイプ)
カメラ:Canon EOS R6/EF100mm F2.8L マクロ/ 1/200秒 f14 ISO100で撮影

自然光のみ。太陽光は右斜め上から差している。
手前からボックスライトのストロボ光を当てて、奥面の影、
磨りガラスのボトル表面を明るくする。
スタンドミラーのレフ光をグラス周囲に入れる。
すだれ状にしたトレペで影を入れると、
ミラーレフの効果はっきりとわかる。
水面を揺らして、さざなみを立てて撮影。

新しいスタジオのベランダには、元々、バスタブが備えつけられていた。
ここで裸になり風呂に浸かるのは流石に躊躇するが、撮影セットとしては色々と使えそう。
今回はゼウスの故郷、岐阜の白扇酒造「黒松白扇 純米酒 あらばしり」を撮る。
日当たりの良いベランダ。バスタブに浅く水を張り、日本酒の瓶とグラスをセット。
白いバスタブ内は光がまわるため、自然光だけでも充分だが、コントラストを整えるために、
手前からソフトボックスで弱目の光を入れる。
アクセントとして丸いスタンドミラーを浴槽の縁に置いて、反射光をグラスにあてる。
右サイドにポールを立てて、カッターですだれ状に切り込みを入れたトレペを吊るす。

Satoshi
1988年 福岡生まれ。海外出張の記録にカメラを購入したのをきっかけに、人物写真で表現をする世界に足を踏み入れる。「偶然の美は人智を超える」を信念にあいまいさや偶然性の高い写真を撮る。元ジャグリング世界チャンピオンの経歴を活かし、アートとエンターテイメントの間の表現を模索している。
Web:satoshi-art.sloth.co.jp/
Instagram:@satoshi.etoh
X:@Satoshi9ball

高井哲朗
たかい・てつろう/1978年 フリーとして活動開始。1986年(株)高井写真研究所設立。広告写真を中心に活動するかたわら、ゼウスクラブを開催し、写真の可能性を伝導する。
www.kenkyujo.co.jp/
x.com/tetsurotakai

コマーシャル・フォト2024年09月号記事より

ゼウスのスチルライフマジック 記事一覧

コマーシャル・フォトで好評連載中の「高井哲朗/ゼウスのスチルライフマジック」がMOOKとしてまとまりました。
化粧品のボトル、ジュエリーから自転車、バイクまでさまざまな「ブツ撮り」に挑戦。

Vol.1
「ゼウスのスチルライフマジック

プロフェッショナルスタジオライティングのアイデアと実践」

Vol.2
「光を操るスタジオ・スチルライフ ライティングのアイデアと実践」

コマーシャル・フォト 2025年6月号

【SPECIAL FEATURE:TAKAY】
撮り下ろし:ドリアン・ロロブリジーダ
TAKAYインタビュー/作品紹介

NYと東京を拠点としファッション誌からラグジュアリーブランドの広告、アーティストのジャケットワークまでを手掛けるTAKAY氏。ドラァグクイーン、ドリアン・ロロブリジーダ氏とのフォトセッションを皮切りに作品紹介とインタビュー、写真展紹介で綴る22ページ。

【特集】
この春、編集部が選んだ「今、注目すべき5人のフォトグラファー」。彼らがシャッターを切る理由は? 写真で何を語ろうとしているのか?キャリアの原点から最新作までを深掘りし、それぞれの”視点”に迫る。未来の一枚をつくるヒントが、きっとここに。
大野隼男/クロカワリュート/杉田知洋江/Miss Bean/Leslie Zhang

【連載】
長山一樹流 違いを生むコマーシャル・ポートレイト
「 ハッセルブラッドで撮るポートレイト」

Create My Book -自分らしいポートフォリオブックを作る-
Vol.10 「オールドレンズ」 金村美玖

ほか