バービードールズのラグジュアリーファッション撮影
Photo&Words:Tetsuro Takai Styling:Norio Kawada

高井哲朗が
スタジオスチルライフ撮影の
アイデアと 愉しみを 伝授
創造主ゼウスのように
光を操って 宇宙を創造しよう
スチルライフ それは あなたが
神になれる世界
今回は、ゼウスの古くからの知り合い、ジュエリーデザイナー川田紀夫さんの
バービードールコレクションを撮影することになった。
川田さんの手により入念にスタイルング、ポージングされたミニチュアの人形を、
実際のファッションフォトのようなライティングで撮っていく。

川田さんは ジュエリー・デザイナー
いつも 撮影する前から
簡単な デザインスケッチ いろいろ 見せてくれながら
キラッと とか バキバキ とか
なんか わかるような わからない ような
説明らしき言葉と
ジュエリーに まつわる 秘められたストーリー
いろんなイメージを 語ってくれる
形なきものを 映像にすること
美しき形 求めていて 難解な撮影だった
毎回 毎回 チャレンジ撮影だったけど
そのたびに 発見があり
それが また面白く 楽しかった
そんな 川田さん
素敵なコレクション 持っていて
ジュエリー雑誌の 撮影の時に
秘蔵のバービー人形 見せてもらった
バービー用に あつらえた 洋服 シューズ
ハイ・ジュエリーを アレンジして
組み立ててくれてたのが とても 魅力的だった
あのイメージを また撮ってみたくて 連絡したら さ
人形も 年をとるみたいで
「あの時と 違うよ どうかな?」 なんて 言われた
そんな 彼女たちに 久々のご挨拶
ご機嫌伺いながら 撮影したんだけど
川田さんのお嬢様たち ちょっと お年?
それは 初々しさ から
艶っぽさへの 変化なのかな?
ライティングの組み立て

❷broncolor Picolite+Picobox ❸broncolor Pulso+P70 standard reflector
カメラ:Canon EOS R6 レンズ:EF50mm F2.5 Compact Macro 1/20秒 f13 ISO100




彼女(人形)たちがつけているアクセサリーは本物のダイヤモンドや真珠。
ショールもミンクで、クリスチャン・ルブタンのヒールといったスーパーラグジュアリーないで立ち。

ライトの構成としては、Paraライトのような大型アンブレラで全身をカバー、
逆目からソフトボックスで起こし、スカイライトでヘアアクセントを入れるスタジオ
ファッションフォトのライティングを、ミニチュアセットで再現。

ライトをオンにしたまま1/20秒のシャッター速度(露光時間)で撮影。
これによりストロボ光での瞬間的な露光後、タングステン・モデリングライトの暖色が
かぶり、人形の肌に赤味がのって自然な感じになる。


通常のファッション撮影同様、大きな面光源で撮影空間全体の光を作っているので、アングルの寄り/引きも
そのままのライティングで対応できる。
人形の瞳にはオパライトの丸いアイキャッチがちゃんと入っている。
ZEUS’S STILL LIFE MAGIC

ライティングの組み立て

❹broncolor Pulso+P70 standard reflector
カメラ:Canon EOS R6 レンズ:EF50mm F2.5 Compact Macro 1/85秒 f11 ISO100
1959年3月9日
バービーは ニューヨーク トイフェアで デビューしました
最初のバービーは
白と黒のストライプの 水着を着て
彼女のトレードマークとなる ポニーテールスタイルでした
バービークリエーター
ルース・ハンドラー
ルースは 娘 バーバラのために
“You Can Be Anything
あなたは 何にだってなれる”
そんな想いを込めて バービー人形を作ったのです
バービーは ファッションだけでなく
多様性を表現し 未来に向かって
自分らしく 進んでいく人と ともに歩んでいます
お子さまから 大人まで
You Can Be Anythingという メッセージを届け
一人一人の可能性を 一緒に支えていきます
人形に 自由に生きることを託す
そんなことも考えたのかな?
夢と希望
人が生きていくことの楽しみ
それを 膨らませていく
人形を見つめるとき
そこから 湧いてくる 一つの ドラマ
命のない人形から 命が育まれていく
命ある 不思議な有機物は
ロボットのような 無機物からも
進化していくんだろうか?
生命のもとが 暗闇で でたらめに
生まれたように
ゼペット爺さんが ピノキオが 作り
妖精が 命を吹き込み
心ある人間になるような そんな童話の世界から
やがて Ai が
統計的 記録的経験頭脳から 進化していき
ロボットが 身体性の頭脳を持ち 心をも 作っていく
そんな世界が 来るのかもね
スチルライフは
一つの物を 見つめることで 人類の未来をも 見つめる
人間は
想像力に 夢と 希望をのせて 楽しく 生きていくのさ
エンジョイ ハッピーライフ
美しい世界の形

陽の傾きで、光のラインが2体の人形の目の高さと重なるタイミングで本番撮影開始。


ライトの振りで赤〜黄の光が顔に、青の光が肩にあたるように調整している。



左手の窓のロールスクリーンを下げて、上下の隙間から差し込む光を壁にあてている。

窓から差し込む光とミックスして背景を作っている。

色違いの短冊状カラーフィルターが並べて貼ってあり、ライトの角度(左右の振り)で
人形の鼻筋にあたる光の色を調整できる仕掛け。

このライトで人形の全身を描写。
斜め上、後ろからトレペを貼ったリフレクターの光で、人形の頭部にハイライトを入れる。

ドレスの色に合わせた耳飾りの他、バービーがつけているジュエリーは川田さんデザイン。
それらのジュエリーにもハイライトが入るように各ライトの距離と角度を細かく調整した。
高井哲朗
たかい・てつろう/1978年 フリーとして活動開始。1986年(株)高井写真研究所設立。広告写真を中心に活動するかたわら、ゼウスクラブを開催し、写真の可能性を伝導する。
www.kenkyujo.co.jp/
x.com/tetsurotakai
コマーシャル・フォト2025年03月号記事より
ゼウスのスチルライフマジック
好評発売中
コマーシャル・フォトで好評連載中の「高井哲朗/ゼウスのスチルライフマジック」がMOOKとしてまとまりました。
化粧品のボトル、ジュエリーから自転車、バイクまでさまざまな「ブツ撮り」に挑戦。
Vol.1
「ゼウスのスチルライフマジック
プロフェッショナルスタジオライティングのアイデアと実践」
Vol.2
「光を操るスタジオ・スチルライフ ライティングのアイデアと実践」


コマーシャル・フォト 2025年7月号
【特集】レタッチ表現の探求
写真を美しく仕上げるために欠かせない「レタッチ」。それはビジュアルを整えるだけでなく、一発撮りでは表現しきれないクリエイティブな可能性を引き出す工程でもある。本特集では、博報堂プロダクツ REMBRANDT、フォートンのレタッチャーがビジュアルの企画から参加し、フォトグラファーと共に「ビューティ」「ポートレイト」「スチルライフ」「シズル」の4テーマで作品を制作。撮影から仕上げまでの過程を詳しく紹介する。さらに後半では、フォトグラファーがレタッチを行なうために必要な基本的な考え方とテクニックを、VONS Picturesが実例を通して全18Pで丁寧に解説。レタッチの魅力と可能性を多角的に掘り下げる。
PART1
Beauty 石川清以子 × 亀井麻衣
Portrait 佐藤 翔 × 栗下直樹
Still Life 島村朋子 × 岡田美由紀
Sizzle 辻 徹也 × 羅 浚偉
PART2
フォトグラファーのための人物&プロダクトレタッチ完全実践
講師・解説:VONS Pictures (ヴォンズ・ピクチャーズ)
基礎1 フォトグラファーが知っておくべきレタッチの基本思想
基礎2 レタッチを始める前に必ず押さえておきたいポイント
人物レタッチ実践/プロダクトレタッチ実践
ほか