ゼウスのスチルライフマジック Vol.49

高井哲朗が
スタジオスチルライフ撮影の
アイデアと 愉しみを 伝授
創造主ゼウスのように
光を操って 宇宙を創造しよう
スチルライフ それは あなたが
神になれる世界

最近、広告業界でも何かと話題の「画像生成AI」。

無から有を生み出す創造神のように、風景や人物のリアルな映像を瞬時に作り出すその能力に、
ゼウス高井も興味津々。

AIクリエイターのLukaさんをスタジオに招き、AIの基本レクチャー&撮影会を行なうことになった。

お題は「潰れたペットボトル」。

AI Operation:Luka

Lukaさんのインスタ 見て びっくり
とんでもない 幻想世界 載っていた
しかも 動画も音付きで

この前まで 風景とか 花を題材に
ボケをうまく使って 綺麗な写真 載っけていたのに

あまりに 衝撃すぎたので
連絡とって 話を聞いてみた

iPhoneに 言葉を入れただけで
映像が出てきた
一瞬で出てきた

これじゃもう 写真 撮らなくても できちゃうね
ただ ただ すごいね
こんなの できちゃったら
写真家は廃業だね
写真の技術で お金もらってる人
どうするんだろうね
写真作家として 生きるしかないのかな

なんて 考えてしまった

まぁ ゼウスは これまで
しっかりお金もらって
遊んだから いいけどさ
これからの人は 大変だな

あれこれ いろいろ考えながら
AI の事 教えてもらった

どんななの? AI
アナログの魅力 写真的な魅力
って 何なの?
AIと 写真家の「見えているもの」の違いを 探ってみた

撮影〜画像生成

AIイメージ・ジェネレーター「Leonardo AI」を使って、
スマホで撮った写真に、簡単な水のシズルを加えてみた。
AIのオペーレーションはLukaさん。

スマホで撮ったままの写真。潰れたペットボトル。
インクで色をつけた水が入っている。(Ph.01)
Ph.01を「Leonardo AI」に読み込んで、最初に生成された画像。
綺麗にライティングされて画面も整理されたが、
いきなり初手からキャップが上下についたボトルとは、
「AIもなかなかの発想力」とゼウス高井を唸らせる。
「ネットに沢山の情報がある風景、人物ポートレイトの生成は得意ですが、
潰れたペットボトルというのはAIも解釈に困ったのでは?」とLukaさん。
何度か画像生成、プロンプトの編集を行なってできた画像。
これをPhotoshopで読み込み、若干の色味調整をして完成。

ペットボトルを撮影するLukaさん。
光やパースの補正はAIがやってくれるので、ライティングや背景などはあまり気にせず、
さっとスマホで撮影。
撮影した写真を読み込んでAIが生成した画像(「Leonardo AI」画面)。
キャップが余分にあることを除けば「夏の太陽のような光」「コントラストの強い影」
「ハイライトの入り方」「透過光の床面への映り込み」など、非常にリアルな仕上がり。
上の生成画像のプロンプト(英文プロンプトをGoogle翻訳で和訳)。
この記事のキャプションを書いている編集者が逃げ出したくなるような、的確な写真解説…。
プロンプトを編集中の「Leonardo AI」画面。画面上の英文がプロンプト。
プロンプトの最後に「ファンデーションのCMのような水を使った背景に
〜The watery background is reminiscent of a foundation commercial」という
一文を追加して完成させた。
AIイメージ・ジェネレーターにも得意分野やクセがある。
ということで、同じ元写真から「Midjourney」が生成した画像。
ペットボトルの潰れ具合も、ライティングもややソフトな仕上がり。

ZEUS’S STILL LIFE MAGIC

Photo:高井 “ゼウス” 哲朗 

ChatGPTに 生成AIで画像を作りたいと 聞いてみた
そしたら ちょっと 長めの文章が出た

それをさらに ChatGPTに コピペして
簡単な文章にしてもらい
詩的に 並べてもらったら こんな感じになった

〜生成AIツールを選び 言葉を紡ぐ
 心の中のイメージを
 ひとつの言葉に 閉じ込めて
 プロンプトを作り 世界を描く

 その言葉を AIに託し
 無限の可能性が広がる 世界を形にする

 生成された映像が 心の中の風景となり現れる

 静かな喜び
 その美しさに触れ 

 画像を手に取るように 保存する〜

なんて 出てきたよ

プロンプト 呪文みたいなものだね
「ちちんぷい 出てこい 画像」って 感じかな

フィルム時代の撮影とは 全く違うけど
頭の中の映像を
目で確認できる映像にすることは
おんなじなのかな?

ちょっと 試しに
AIクリエイター Lukaさんと
ペットボトル 撮影してみよう

スチルライフのアナログ的な基本
繊細な描写 的確な質感描写
視点を集める構図
それを見つめて
デジタルカメラで 追いかけます

光が柔らかく 物を包み
影は静かに 踊りながら 調和を見つける
物を置くその一瞬
バランスの中に物語が生まれる

細部に込めた思いが ひとつひとつ輝き出す
色は光に溶け 温かさと冷たさが交差する

背景は 静かに整い 余白が 物を引き立てる
シャッターが優しく 美しい一瞬を 切り取る
写真は 物語となり
ただの物ではなく
光と形が語る 世界へと変わる

フィルムから デジタルに そして AIに変わっても
思考から表現する能力 想像力ってのは重要なのさ

ライティングの組み立て             


ライト:❶broncolor Striplite 60 Evolution ❷broncolor Picolite+Picobox
    ❸amaran 300c  ❹Aputure INFINIBAR PB3  
カメラ:Canon EOS R6  レンズ:EF24-105mm F4L IS USM 1/50秒  f10  ISO100

バーライト❶の透過光を撮影台の下から入れる。
小型ボックスライト❷をアクリル水槽右サイド、下目から入れる。
ペットボトル右上からLEDのカラーライト❸を入れて、画面全体に色を乗せる。
撮影台真下から多色カラーグラデーションのLEDバーライトを
入れてライティング完了。
仕上げに「煙入りシャボン玉」を飛ばして撮影。

物事を整理する傾向にあるAIに対抗して、ゼウス高井はカオスで応えた。
ペットボトルを無秩序に積み重ね、今にも崩れそうな状況を俯瞰で撮影する。
撮影台下からの3灯(ストロボ×2、LED×1)でペットボトルに透過光を入れ、
右斜め上からの1灯(LED)のカラーライトで、撮影台に敷いた乳白アクリルに色をつける。
撮影台真下のLEDバーライト。
このライトの出力で、画面全体の明るさを調整する。
前号に引き続き、小型スモークマシンSmoke NINJA PROを使用。
このスモークマシンはバブルノズルとバブルリキッドを使ってシャボン玉を作ることができるのだ。
仕上げはスモークマシンで煙入りシャボン玉を作り、ペットボトルの上に飛ばして撮影。
煙が入ったシャボン玉はすぐに落ちて割れてしまうため、タイミングを合わせて素早くシャッターを切る。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 15_049-04-11AI-673x1024.jpg
撮影した写真をそのまま「Leonardo AI」に読み込んでみた。
ペットボトルのカオスで有機的な「重なり」や「潰れ」、
多方向からのライティングによる偶然の光の重なりは整理され、
シャープで無機質なイメージが生成された。

Luka
写真撮影・AI生成画像制作。
実際の風景や被写体をカメラで切り取りつつ、AIを使って新しいビジュアル表現に挑戦中。
リアルとデジタルの融合を目指し、写真の持つ瞬間の美しさと、AIが生み出す独創的な世界観を組み合わせた作品作りを行なう。
Instagram:@lukaai44

高井哲朗
たかい・てつろう/1978年 フリーとして活動開始。1986年(株)高井写真研究所設立。広告写真を中心に活動するかたわら、ゼウスクラブを開催し、写真の可能性を伝導する。
www.kenkyujo.co.jp/
x.com/tetsurotakai

コマーシャル・フォト2025年05月号記事より

ゼウスのスチルライフマジック 記事一覧

コマーシャル・フォトで好評連載中の「高井哲朗/ゼウスのスチルライフマジック」がMOOKとしてまとまりました。
化粧品のボトル、ジュエリーから自転車、バイクまでさまざまな「ブツ撮り」に挑戦。

Vol.1
「ゼウスのスチルライフマジック

プロフェッショナルスタジオライティングのアイデアと実践」

Vol.2
「光を操るスタジオ・スチルライフ ライティングのアイデアと実践」

【特集】「ワンオペ映像撮影力を鍛える」

写真の現場でも「動画も撮れること」が求められる今、フォトグラファーが直面するのは“ワンオペ”での映像撮影。本特集では、ディレクション・撮影・編集まで一人でこなす映像制作者たちに取材。ミュージックビデオ、CM、ウエディング、プロモーション映像など多様なジャンルの現場から、少人数制作のリアルな工夫とノウハウを紹介。すでにワンオペ映像撮影を始めている人、これから挑戦したい人に向けた特集。
出演 加藤マニ/三戸建秀/Shuma Jan/ヒガテツヤ

Blackmagic Camera (Application for smartphones)/DaVinci Resolve 18 Special Interview
Kroi「Method」 木村太一(ディレクター)・西田賢幸(カラリスト)・内田誠司(DIT)

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