ゼウスのスチルライフマジック Vol.16

ミスト vs 波紋…オーデトワレの香りを表現する水の演出
Photo&Words:Tetsuro Takai Photo :Yuki Matsui

高井哲朗が
スタジオスチルライフ撮影の
アイデアと 愉しみを 伝授
創造主ゼウスのように
光を操って 宇宙を創造しよう
スチルライフ それは あなたが
神になれる世界

2020年に事務所を設立。現在、広告フォトグラファーとして活躍している松井友輝さん。
学生の頃、東京写真研究倶楽部(ゼウスクラブの前身)によく来ていた。
今日は久々に彼を呼んで、オーデトワレのボトルをテーマに「プロ技」対決。
松井さんは高井スタジオに機材一式を持ち込んで、複雑な多灯ライティング。
ゼウス高井はアクリル水槽に水を張ってボトルを置く。赤と青、動と静のコントラスト。

Photo:松井友輝



霧雨の中のラブストーリー

うっ なんだこれ クソ重い  なんと まるで ちいさな引越し
黒いセンチュリー 5 本 ブロンカラー一体型ストロボ 5 灯
ジナーP3 に パソコン2 台
よくこんなの タクシーに詰め込めるな? 移動は 筋トレだな

松井くんが 写真倶楽部に 連れて来られて もう 6年ぐらいか
学生の時から ブロン 買って 毎日 訓練撮影してたみたいだな
卒業して 博報堂プロダクツで働き その後 フリーで活動
もう スチルライフ ポートレイト
仕事案件が しっかり 動いてるみたい

きょうは 香水 
それにつけても 立派すぎる機材だ 
気楽に遊べよって 言ったんだけどなぁ
スタジオのライトも追加して 
メインライト3 灯 後ろから2 灯
霧吹きで作るミストに1 灯 花に1灯か
よく コントロールできるな

セットアップした後に
クライアントの要望に 応えるために
完成後の 先を見越したライティング方法
考え方が 柔軟だ

香水の中身のグラデーションを 演出するため 
銀紙レフの代わりに 空中でミストを作るらしい 
これは 見ものだ

PS:撮影後の片付けも終わり 大きな荷物 いっぱい
タクシーに運び込んだ その時 白い美しい姿が スッ と
助手席に飛び込んだ  ん? AQUA だ
霧雨の中のラブストーリー 爽やかに 風のよう
いいね 楽しい 写真生活



ライティングの組み立て             

ライト:❶❷❸❻❼broncolor siros 400 ws+L40 standard reflector ❹broncolor
Picolite+Picobox ❺broncolor Striplite 60 Evolution ❽broncolor Pulso G
Head+P 70 standard reflector /カメラ:Sinar P 3+PhaseOne IQ 250/レンズ:
Sinar Sinaron Digital Macro 120mm F5.6/1/125秒 f16 ISO100

 

ライト❶❷❸。乳白アクリル越しのトップライト。
ライトにはアートレとアンバーフィルターを貼っている。
ライト❹❺でボトルのエッジにハイライトラインを作る。
ライトにはアートレとアンバーフィルターを貼っている。
撮影台の下からブルーフィルターをかけたライト❻。
ボトル内部が明るくなると同時に、被写体上の乳白アクリル
に反射して、ボトルに青のハイライトが入る。
さらにグリッドをつけたライト❼を手前の花にあてる。
オレンジのフィルターをかけた❽を背後から入れる。
ライトのセッティングはこれで完成だが、商品背後に霧を吹く
と、その水滴がライトの光を拡散にして、ボトル内部を明
るくするレフの役割をする。

球状のボトルキャップになめらかなハイライトを入れるため、薄手の乳
白アクリル板で商品全体を覆ったセット。透過光用撮影台には透明ア
クリルと乳白アクリルを重ね、下からライトを入れている。
霧吹きを使ったパフュームの演出。ミストに反射した光がボトル内部に
輝きを入れる。




Photo:高井哲朗



水の寓話 水が語る物語
そんな名前の オーデトワレ

AQUA ALLEGORIA
水の寓話 水が語る物語 そんな名前の オーデトワレ

パルファンParfum 
オーデパルファン Eau de Parfum
オーデトワレ Eau de Toilette
オーデコロン Eau de Cologne

エタノール濃度が高く 高額な パルファンは フランス語で まさに 香水
Eau de とは 水の という意味 まぁ 水で薄めたってとこね

オーデコロンは ケルンの水
ドイツの都市 ケルンで イタリア人調香師が 1709 年に製造
世界最古の 香水らしいね これが 語源ね

Toilette とは 化粧 という意味
Eau de Toilette は 化粧水 って とこかな

商品撮影は 知識力 大事

香りを 感知する嗅覚は 他の感覚とは 異なり 
脳に ダイレクト そのため 記憶と 香りは かなり 密接な関係

写真は ダイレクトに こないんだな
瞬間で 知覚に キャッチするけど 感覚は 動物的でない
知覚のフィルターを 通す
過去の 知覚の記憶をね

感覚と知性の違いだな
文字を 読ませるほどでないけど 知性が 記憶を辿る
匂いは 本能を揺さぶる ダイレクトにね
そうなんだよ あの時の匂い あの時の笑顔
瞬間的に ワープする

ふっ と 
喧騒の中 出逢い 夜の散歩 あてもなく ピッタリ 寄り添った 
深夜映画 座席シート 朝焼けの 千鳥足帰還 
そんな日の ベッドに残る やさしい 残り香
マンダリン バジル 濃密な時間の 記憶

揺れ動く 水のよう 白い雲 ゆったりと ゆめごこち
ここちよい匂いに よみがえる 

香りは 濃密な秘密 ちいさな虹も しあわせの 夢
密月の関係



ライティングの組み立て

ライト:❶❷ broncolor Boxlite 40 /❷❸broncolor Pulso G Head+standard
reflector P70/❹broncolor Pulso Spot 4+Optical snoot
カメラ:Canon EOS 5D Mark II/レンズ:EF50mm F2.5 コンパクトマクロ/1/100
秒 f13 ISO100
 

 

左右のボックスライト❶❷で商品を描写。
トップライト❸。水面に模様を作り、水面に反射した光が
ボトル内部を明るくする。
水槽下からのフットライト❹を入れる。❸と❹の光量のバ
ランスで背景の明るさ、濃さを調整する。
フロントライト❶❷と背景用ライト❸❹を合わせた状態。
アクセントとして虹色フィルターを仕込んだスポットライ
ト❺を、手前の乳白アクリル板Bの下面にあてる。
アクリル板に反射した虹を銀のボトルキャップ上と商品の
肩の部分に映り込ませた。水面に波を立てると、模様が滲み、
自然な感じに仕上がる。

セット全体を覆う乳白アクリル板Aには、波型に切ったフィルターが貼ってある。
アクリル水槽は底も透明。水槽の下に5 mmほどのスペーサーを入れて、
上から順に、透明ブルーのアクリル板、乳白アクリル板、ガラス板の順
に重ね、下からライトを入れると、水面が青くなる。




松井友輝
まつい・ゆうき/1996 年生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、博報堂プロダクツ入社。現在はフリーに転向し、広告撮影を中心に活動中。
matsuiyuki.com

高井哲朗
たかい・てつろう/1978年 フリーとして活動開始。1986年(株)高井写真研究所設立。広告写真を中心に活動するかたわら、ゼウスクラブを開催し、写真の可能性を伝導する。
www.kenkyujo.co.jp/
twitter.com/TetsuroTakai


コマーシャル・フォト2022年8月号記事より

おすすめ商品・アイテムRecommend Items

ゼウスのスチルライフマジック プロフェッショナルスタジオライティングのアイデアと実践 Vol.1

別冊MOOK

ゼウスのスチルライフマジック プロフェッショナルスタジオライティングのアイデアと実践 Vol.1

コマーシャル・フォト本誌で好評連載中、高井哲朗「ゼウスのスチルライフマジック」2021年4月号から2022年9月号分記事を1冊にまとめました。