照明機材のオーソリティ
「玉ちゃん」こと玉内公一氏と、
担当編集者との掛け合いでお届けする、
ライティングの基礎と実践。
2009年から約3年間にわたって
コマーシャル・フォトで
連載した記事から抜粋して
お届けします。
編 コマーシャル・フォトで好評連載された「玉ちゃんのライティング話」、装いも新たに、Web版のスタートです。
しかし、せっかくのWeb版だというのにずいぶんとシンプルな作例写真ですね。
玉 基礎なので、光のあたり方がわかるようにという配慮です。追々、具体的な被写体も増えていきます。
編 それを聞いて安心。で、基礎実践編というのは?
玉 ストロボを使ったスタジオライティングを、基礎の基礎から色々と考えてみようと思ってます。


玉 さて、モノが自然で立体的に見える光とは、どんな光だと思いますか?
編 それはやっぱり自然の光でしょ。
玉 そう。明るい部分があって、適度に影がある。当たり前ですが、我々人間が一番見慣れた太陽の光、つまり自然の状態の光が、もっとも「自然」なわけです。
昔は5月〜10月、薄曇りの日のワシントンD.C. の10時から14時までの光が写真的昼光=Photogenic Daylight なんて言われてましたしね。
編 なんでワシントンD.C. ?
玉 アメリカのフィルムメーカーが決めたことだから…。
それはさておき、もう少し分析していきましょう。自然の光は、太陽が光源です。
とても離れた地点から、地球にあたっている。だから、平行光線と考えられます。そして地球には大気があり、太陽の光はその大気で散乱(拡散)され、ちょうどドームのように空全体が明るくなるわけです。
南の空に太陽がある場合、南からの光がモノを照らし、反対方向に影を作りますが、それと同時に空全体、周囲360度からも柔らかな光があたっているわけです。
編 つまりその状態が、モノが自然に見える状態だと?
玉 そうです。スタジオライティングとは、人工の光でその状態を作ることからスタートしているんですね。南からの日差しがメインライト、天空から周囲に回り込む光はフィルインライト。フィルイン(fill in)とは「満たす」ということです。
曇りの日はメインの太陽光が弱まり、影が薄くなる。つまりメインライトにトレペなどのディフューザーをかけた状態ですね。
たとえば月には大気がないので、月面の写真は明暗差が激しいでしょう?
スタジオで1灯を直に被写体にあてると、これに近い光になります。これではモノは自然に見えません。
編 スタジオ撮影でも空全体からの光が必要なんですね。
玉 そう。もちろん被写体のサイズによっては、1灯でも全体に光が回る場合もありますが、通常はメインに対して、被写体全体を柔らかく覆う光を入れる。簡単なのは反対側にレフを置くことですよね。2灯使うなら、1灯を強めのメインして、もう1灯はバンクなどを使い、広い範囲の拡散光を あてればいい。
編 なるほど。だからメイン1灯とバンク1 灯が基本になるわけですね。
玉 基本ついでに言うと、メインがあたる明るい側と、影の側の明るさの比は3:1。
ただし、あくまで基本ですよ。表現や目的によってまた違った解答はあるわけですから。
1灯 水平正面から

1灯 斜め45 度から

左斜め1灯+レフ板

左斜め1灯+バンク1灯

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