照明機材のオーソリティ
「玉ちゃん」こと玉内公一氏と、
担当編集者との掛け合いでお届けする、
ライティングの基礎と実践。
2009年から約3年間にわたって
コマーシャル・フォトで
連載した記事から抜粋して
お届けします。
編 これまで色々とライティングの基本をお伺いしてきたわけですけれど、特にブツ撮りで、何か私でも簡単に格好良く撮れちゃう裏技みたいなものってないですか?
玉 そんなのないですよ。ライティングはまずしっかりとした基本があって、その上で経験とセンス…です。
編 いや、たとえばですね、ネットオークションの写真とか、中華料理屋のオヤジさんが自分で撮ったメニューの写真って「いまいち」というか、プロが撮ったものと根本的に違いますよね。
玉 当たり前でしょ。
編 でも、最近のデジタルカメラなら、それなりの解像度もあるし、ホワイトバランスもオートだし。でも、決定的に何かが違うというか…。細部のグラデとか細かい技術は別にして…。
玉 ああ、そういうことなら、内蔵ストロボやクリップオンストロボで撮るか、外部ストロボで撮るかの違いじゃないですか?
つまり順光と逆光の違いですよね。カタログなどに見られるプロの写真と比べて見ればわかります。
玉 ブツ撮影でも料理写真でも、商品撮影と言われる多くの写真は、被写体を台に置いて斜め上からのアングルで撮ることが多いですよね。これはプロの写真もアマチュアでも同じだと思います。
でも「いまいち」に見える写真は、内蔵ストロボの順光ライティングで撮ったものが多い。
一方、プロの撮影では外部ストロボを使う。その時、被写体を挟んで反対の位置からライトを入れるのが、特に小物や料理写真の基本となっているんですね。それだとちょうどレンズの光軸に対し、半逆光の光が入る。
カタログや広告などの商品カットでは、その半逆光のライティングをベースにした写真が多いのです。
編 確かに。
だけど、なんで半逆光だとよく見えるんでしょう。
玉 まず、単純にカメラと同じ方向から光をあてると、影は被写体の向こう側に出ますよね。
つまり被写体表面にある細部の凹凸の影もカメラ側から見えないということ。
影がないため、立体感、質感のないノッペリとした写真になるんですね。
編 なるほど。ディフューズしてもダメですか?
玉 被写体によっては、正面からの光でも拡散したものであれば、ある程度自然に見えます。
でも、斜めアングルの撮影では正面からの光だと画面が落ち着かないんですね。
編 落ち着かないというのは?
玉 やはり画面構成として、画面上部分が明るくて、下が暗い方が生理的に落ち着くというのかな。
斜めアングルの撮影で手前から光を入れるということは、できあがった写真の画面下が明るくなる。
一方、半逆光で撮れば当然、奥が明るく、つまり画面としては上が明るくなる。だから自然に見えるわけです。
しかも半逆光は被写体の奥のエッジ、つまり画面上、被写体のトップにハイライトが入り、その被写体が輝いて見える。
だから半逆光はテープルトップ撮影の基本的なライティングなんです。特に料理写真などは、出張撮影で複雑なライティングができないという理由もありますが、1灯でトレペ越しにディフューズした柔らかい逆光をあてるのが、定番のライティングになっていますよ。
編 なるほど。それがわかればあの店のオヤジさんにも、美味しそうな写真が撮れるんですね。炒め物は絶品なんですがね…。
カメラと同方向から
ライトをあてる
被写体に対し真上から
ライトをあてる
被写体の向こう側から
半逆光でライトをあてる
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