写真展レビュー キセキミチコ作品展「GAZE」

銀座・Sony Imaging Galleryにて4月11日(木)まで開催中のキセキミチコ作品展「GAZE」。

キセキミチコ氏は、アーティストポートレイトやライブ写真、雑誌撮影を中心に活動するフォトグラファー。2019年、自身が幼少期過ごした香港を訪れ民主化デモに遭遇。その様子を克明に記録した写真展「#まずは知るだけでいい展」、写真集『VOICE 香港 2019』(イースト・プレス社)で多くの反響を呼んだ。

彼女が今回撮影地として選んだのは東欧・ルーマニアだ。

ある時、キセキ氏は中東欧に住むロマ族のことを知る。国を持たない移動民族がゆえの問題を抱えながら生きるロマの人々に会いたいと、2022年夏、東欧・ルーマニア、ハンガリー、ブルガリアへと旅へ出た。

この作品では、その旅の中で出会った街並みや自然・人々を捉えている。

カメラを物珍しそうに見ながら人懐っこく笑いかけてくる人々の表情やその暮らし、その一方でどこか色褪せ寂しげな雰囲気を感じさせる街並み…。

キセキ氏は、ルーマニアを経てハンガリー、ブルガリアと国境を越える中でそれぞれの国が持つ匂いや空気感の違いを感じたという。それをステートメントの中で「その場所のアイデンティ」と呼んでいる。その場所で生きる人々と、キセキ氏のまなざし、そして鑑賞者のまなざしが交錯する。

街全体が灰色に見えたという首都ブカレスト、国を持たないロマの人々とその暮らし、そして隣国ウクライナへと続く空。キセキ氏の視点を通して撮られた作品群は静かに、平和とは何かを訴えてくる。

前作や普段の作品でもモノクロの印象が強いキセキ氏だが、この作品ではカラーがメインなのも見どころのひとつ。このカラーが東欧諸国の空気やアイデンティを表現する上でひと役かっているようだ。キセキミチコにとって新たな挑戦であり、今後の可能性を広げる作品とも言える。

写真展会場の様子

プロフィール

キセキミチコ

父親の仕事によりベルギーに生まれ、香港、フランスに移り住む。14歳で日本に帰国。マグナム写真に影響を受け、日本大学藝術学部写真学科に進み、報道写真のゼミを専攻するも、音楽のパワーに魅了され音楽写真の道に進む。スタジオ、アシスタントを経て独立し、アーティストのポートレイト、ライブ写真、広告写真などを手掛けながら、個展、グループ展等を多数開催。2017年、日本の田舎に憧れを抱いて撮った写真集「DRYNESS」を私家版写真集として発刊。がむしゃらに階段を駆け上っていく中で葛藤と闘い、新たに自分を見つめるため幼少期育った香港を訪れる。人々の生きるパワーに圧倒され、彼らの姿を撮るべく2019年7月、長期滞在ロケのため渡航。香港民主化デモに遭遇し間違ったことに声をあげる人々の戦いに心が震え、泣きながら最前線で写真を撮り続ける。2022年2月「VOICE香港2019」を刊行。写真家として改めてスタートラインに立つ。「自分の気持ちに正直に写真を撮る」を信条に、写真と向き合っている。

Web:https://www.kisekimichiko.com/

Instagram:https://www.instagram.com/kiseki_michiko/

展覧会情報

キセキミチコ 作品展「GAZE」
2024年3月29日(金)~4月11日(木)  11:00~19:00  
会場:Sony Imaging Gallery (東京都中央区銀座5-8-1 銀座プレイス6階)
入場料:無料
https://www.sony.co.jp/united/imaging/gallery/detail/240329/

コマーシャル・フォト 2024年10月号

■特集「令和の時代に、フィルムで写真を撮るということ。」
写真家・石田真澄がフィルムを使い、ハウススタジオやフェリー、海辺で自然体の齋藤飛鳥を11Pにわたって撮り下ろした。また、これまで石田が積み重ねてきた仕事の数々から一部を抜粋して紹介する。

また、中森 真、大野隼男、木村和平、竹中祥平、三部正博という5人のフォトグラファーがフィルムを使って撮影した仕事例、作品を紹介。フィルム撮影に関する考え、使用機材やよく利用する現像所などを伺った。

■連載「撮影を楽しむスペシャリストたち」
写真業界には数多くの撮影ジャンルがあり、それぞれの分野で活躍するスペシャリストたちがいる。この連載では、フォトグラファー中野敬久氏が毎回気になるスペシャリストにインタビューを行ない、その分野ならでは魅力や、撮影への向き合い方を聞くことで、“撮影を楽しむ”ためのヒントを探っていく。今回のゲストは新津保建秀氏。

■連載「GLAY CREATIVE COLLECTION 2024- VOL.03」
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