東京と“ふるさと”をつなぐ写真展「だれかのふるさとと出会う旅」開催。第一弾は石川県がテーマ。

撮影:仁科勝介(石川県穴水町)

「東京スクエアガーデンアートギャラリー」にて、写真展「だれかのふるさとと出会う旅」が開催される。期間は2024年8月5日(月)から2024年9月30日(月)まで。第一弾のテーマは石川県。今回、作品展示を行うのは全国全市町村を巡り、その土地と出会ってきた写真家・仁科勝介。仁科氏の展示を通して、京橋にいながら石川県を旅するような鑑賞体験を提供する。

会期中には、本年1月の能登半島地震以前に、仁科氏が現地で撮影した写真の数々を公開。そのほか関連企画として、震災後に現地でのボランティアを行ったアーティスト・瀬尾夏美氏が撮影した被災後の風景も一部展示。合わせて、能登半島地震復興支援を目的に発行された冊子『ノトアリテ』も閲覧することができる。

仁科 勝介 KATSUSUKE NISHINA

写真家。1996年岡山県生まれ。広島大学経済学部卒。在学中に、日本の全1741の市町村を巡り、『ふるさとの手帖』(KADOKAWA)を出版。2023年春より、平成の大合併時の旧市町村一周をすべて巡る旅に出る。

仁科氏メッセージ

かつて、日本の全市町村を巡った際に、石川県の19市町も巡りました。6年前に遡ります。すなわち、展示していただいている写真は、2018年に撮影した風景です。当時は大学生でした。スーパーカブで梅雨明けの夏を走り、とにかく能登半島までは遠かったこと、能登半島の海と山と黒い瓦の町並みが綺麗だったことは、今もよく覚えています。当時の日記にはこう残していました。

“北陸で出会った人たちが口を揃えて言ってた「能登半島はいいぞ」という言葉。そうなんだという感じだったけれど、ぼくも今聞かれたら絶対に「能登半島はいいぞ」と答えてしまう。濃い緑に、青い海。落ち着いたまちなみ。走っていて気持ちがいい。行ったことない人は一度、足を運んでみてほしい。「能登半島はいいぞ」が分かるから”

どんな土地にも誰かのふるさとがあります。これは旅を通して感じた終わりなき学びでした。誰かのふるさとがあるということは、そこにはひとりひとりの人生がある。そのひとりひとりの命の連続が、土地を支えている。あたりまえのことだけれど、とても複雑で、奇跡で溢れていて、簡単に分かったフリはできないような尊さを感じます。

東京にいると、東京が日本の中心だと感じやすいです。しかし、石川県で暮らしている方々にとって、日本の中心は石川県です。能登半島で暮らしている方々なら能登半島です。それに、ふるさとという感覚は当然ながら、ひとりひとり異なります。日本中の土地が、自分にとっては知らない誰かの唯一無二の物語を経て、今に至っている。だからこそ、少しでも誰かのふるさとを想像し、尊重できる自分でありたいとあらためて思います。

震災に対してどんなことができるだろう。ボランティアや募金、旅行で訪れる、具体的なアクションもあれば、まずは「想う」や「祈る」、「応援する」ということを偽りなく大切にすることはできる。表に見えなくとも、SNSで表明しなくても、ほんとうのやさしさやあたたかさを心の中で持ち、震災を忘れずにいることはできる。むしろ、その気持ちを忘れてしまうことの方が、いやな人間になってしまうような気がします。誰かのふるさとにひとりひとりの人生が詰まっていることを、ぼくも忘れずに生きたいと思います。

写真展概要
だれかのふるさとと出会う旅 01石川県写真展

会期:2024年8月5日(月)~9月30日(月)10:00~19:00/土日祝閉館
会場:東京スクエアガーデンアートギャラリー
https://tokyo-sg.com/

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