2009年10月09日
エンターテイメント業界向けのイベント「SIGGRAPH 2009 Replay」が2009年9月30日、オートデスク主催により東京・品川のザ・グランドホールにて開催された。このイベントは、「SIGGRAPH 2009」で発表されたオートデスクの新製品を、日本市場に向けて紹介するイベントだ。ゲストスピーカには海外のトップCGクリエーターが招かれ、場内は立ち見が出るほど盛り上がったこのイベントをレポートしよう。
Suite製品ならではのトータルワークフローをデモンストレーション
オートデスクの新製品では、「Autodesk Maya 2010」「Autodesk Softimage 2010」「Autodesk MotionBuilder 2010」「Autodesk Mudbox 2010」「Autodesk 3dx Max 2010」、そしてこれら単体製品を組み合わせたSuiteが発表されている。SIGGRAPH 2009 Replayは、Suite製品である「Autodesk Real-Time Animation Suite」と「Autodesk Entertainment Creation Suite」の概要解説から始まった。
単体製品が連携してワークフローを組む場合に中核となるのは、3Dデータ交換フォーマットであるAutodesk FBXである。このFBXを中心としたワークフローがSuite内で完結する様子を、オートデスク株式会社ソリューションエンジニアである宋明信氏と渡辺揮之氏がデモンストレーションを行った。
まず、キャラクタ制作を、3DデジタルペイントソフトウェアであるMudbox 2010を用いて行った。デモでは、新機能であるドライブラシやクローンブラシを用いてリアルなバイソンを描き出し、FBXデータとしてエクスポート。さらに、そのFBXデータを3ds Max 2010で読み込んでアニメーションを作成、再びFBXデータに書き出し、MotionBuilder 2010に読み込んでアニメーションムービーとして仕上げるという一連のワークフローを披露した。製品内でワークフローが完結するというSuiteの魅力が十分に発揮されたデモンストレーションだった。
Mudbox 2010で作成したバイソンのキャラクタに3ds Max 2010で動きを付け、 MotionBuilder 2010でアニメーションムービーに仕上げている。一連の流れがSuite製品内で完結する。
高度なシミュレーションや2D素材との連携が可能なMaya 2010
Maya 2010とSoftimage 2010については、それぞれ新機能を中心としたセッションが開催された。
Maya Unlimited 2009の機能セットの他にMatchMover、Maya Compositeなどのツールが1つに統合されたMaya 2010では、各機能を利用した高度なシミュレーションや合成の様子が、オートデスク株式会社ソリューションエンジニア加瀬秀雄氏と長谷川真也氏によってデモンストレーションされた。
デモではノイズが激しくトラッキングするのが難しい2Dビデオ素材が用いられたが、Maya 2010のMaechMoverでは正確にトラッキング、さらに算出したデータとMaya 2010の3Dエフェクトを簡単に合成する手順が披露された。そのほか、高性能合成ツールMaya CompositeによるMayaとToxikの連携ワークフローも紹介された。Maya 2010に新たに統合されたこれらのツールにより、3Dと2D間でも作業が滞ることない様子が見て取れた。
Maya 2010で行うシミュレーション機能。風のパラーメータや空気抵抗を調整して木の葉が舞い落ちる様子をシミュレーションできる。
Maya 2010でモデリングしたキャラクタをToxik側で合成。Maya側からはプリコンポジットファイルをエクスポートするが、どのレイヤーを書き出すかのオプションもある。
パフォーマンスが向上し、Face Robotが統合されたSoftimage 2010
Softimage 2010では、今回のバージョンアップの大きな目玉であるパフォーマンスの向上がオートデスク株式会社ソリューションエンジニアマネージャー門口洋一郎氏とソリューションエンジニア渡辺揮之氏によって解説された。Softimage 2010と7.5を比較したテスト結果では、同じデータでシーン保存にかかった時間がSoftimage 2010は10.5625秒、7.5では19.5秒と倍近い数値を叩きだすなど圧倒的なパフォーマンスを見せた。
その他、要素を絞り込んで作業できるシーン検索機能や負荷がかかっている部分をリストアップするScene Debugger機能などが紹介され、全体的に作業効率アップが図られた様子を印象付けた。
また、新しく統合されたFace Robotテクノロジも披露。キャラクタの口を動かすと頬の筋肉も連動して盛り上がるといったFace Robotテクノロジが、Softimage 2010上でデモンストレーションされた。
Softimage 2010と7.5のパフォーマンステストの一例。計測結果以上に実際のオペレーション上で高速化を感じ取れるという。
Softimage 2010に統合されたFace Robotテクノロジ。顔の一部を動かすと顔の骨格と筋肉が連動する様子がよくわかる。
映画業界のトップCGクリエイターによる制作秘話
今回のSIGGRAPH 2009 Replayでは、ゲストスピーカとして海外からCGクリエイターも来日した。

イマジ・スタジオのスーパーバイジング テクニカルディレクタ兼プロダクトマネージャのデズモンド・チャン氏。
1人目のゲストスピーカは、CGアニメ映画の開発及び制作を手がけるアニメーションスタジオ、イマジ・スタジオの香港オフィスから、デズモンド・チャン氏が登場。同社が携わった3D CGアニメ映画「ATOM」(2009年10月公開)の制作過程を披露した。
日本を始め、世界中で親しまれている2Dアニメの「アトム」が、どのように3Dアニメとして生まれ変わったのか。アトムやテンマ博士をはじめとするキャラクタデザインから、映画の中のメインセットである「メトロシティー」のイメージ作成まで、さまざまなコンセプトアートを元に試行錯誤して作られた様子が紹介された。
1998年からMayaを使用しているというチャン氏はATOMでも主力ツールとしてMayaを利用しているが、シーンによってツールを組み合わせている。例えば、アトムが空を駆けめぐって雲と遊ぶシーンでは、さまざまな雲のパラメーターやライトセットの調整はMayaで、雲の位置づけを調整などは独自開発したツールでと、高度な組み合わせによって完成させているのだ。
また、2Dアニメではなかったアトムの「歯」が3Dアニメではないと不自然という、3D化ならではの苦労もあったようだ。元の2Dアニメの良さを継承しつつ、新たなキャラクタをクリエイトしていく過程は非常に興味深いものだった。

ライジング・サン・ピクチャーズのコミュニケーションマネージャ、イアン・コープ氏。
2人目のゲストスピーカは、オーストラリアのビジュアルエフェクトスタジオ、ライジング・サン・ピクチャーズのイアン・コープ氏。同スタジオでは1995年よりSoftimageを、2001年よりMayaを使用しているという。
長年に渡って制作に参加している映画ハリー・ポッターシリーズ(炎のゴブレット、不死鳥の騎士団、謎のプリンス、死の秘宝)や、「ターミネーター4」「スーパーマンリターンズ」「ロード・オブ・ザ・リング」「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」(2009年9月公開)など、同スタジオが参加したヒット映画の数々の映像に、会場内は息をのんだ。
中でも、映画「オーストラリア」(日本では2009年2月に公開)で広大な大地を移動する牛の群れのクラウドシステムを作り上げた映像は圧巻。実際の牛をさまざまな角度から観察した上でMayaで牛を再現し、フレームのレイアウトを調整して数千頭にも及ぶ牛の群れをCGで表現するという工程はすばらしいものだった。
最後にオフショットとして、社内で「お遊び」で作った映像も紹介。ハリー・ポッターに登場するゴブレットがビールビンになったり、スーパーマンが飛ぶ場所が畑ではなくビール畑だったり といった映像が会場内の笑いを誘っていた。優れたCG映像を作り出すには常に遊び心も忘れないという、同スタジオの精神をかいま見たようなセッションであった。
スポンサーセッションやパーティも大盛況
イベントでは、オートデスクや海外ゲストスピーカの他に、スポンサーのクリスティ・デジタル・システムズ日本支社と日本ヒューレット・パッカードからも、それぞれセッションが開催された。
クリスティ・デジタル・システムズ日本支社からは、同社が販売する「VR4 Max」と3ds Maxによるリアルタイムレンダーコンテンツの作成や、「Stereoscopic Player Criste Edition」とMayaによる精密な立体映像作成などが紹介され、オートデスク製品群の拡張性が注目を浴びた。
また、日本ヒューレット・パッカードでは、新しいHP Workstation Zシリーズを紹介。3D CG制作という負荷の高い作業をストレスなく行えるシステムが紹介され、来場者の興味を引いていた。
その他、会場外のホワイエでは各スポンサーのブースも開設され、来場者の情報交換の場としても多いに盛り上がっていた。メーカーとユーザーが交流できるのは、イベントならではの光景といえるだろう。
業務用プロジェクターメーカーのクリスティ・デジタル・システムズ日本支社のセッションでは、立体映像の制作方法が紹介された。
日本ヒューレット・パッカードのセッションでは水冷ユニットを搭載した新しいWorkstationシリーズを紹介。
プログラム終了後は、主催者やスポンサー、そして来場者を交えてのパーティーが行われ、こちらも大盛況だった。海外事例でセッションを行ったチャン氏とコープ氏も加わり、日本のクリエイター達と歓談する姿も。オートデスク新製品が持つ新たなCGへの可能性だけではなく、使う側のクリエイター達の熱気も感じられるようなイベントであった。
プログラム終了後のパーティは、来場者も交えて大盛況だった。クリエイター同士、またクリエイターとメーカーの交流は、何よりのこのイベントの成果ではないだろうか。









