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イベントレポート 「Lightstorm and ILM Blockbuster Tour 2010 + After NAB 2010」 ①

オートデスクが開催した映像業界向けのイベント「Lightstorm and ILM Blockbuster Tour 2010 + After NAB 2010」の詳細をレポート。その1回目は、最新のオートデスク製品にスポットを当てる。

クリエイティブフィニッシング製品の2011バージョン

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クリエイティブフィニッシング製品から3DCGソフトまで幅広く展開されるオートデスク製品

オートデスクは、今年4月のNAB 2010(米国ラスベガス開催)において、映像業界向けのクリエイティブフィニッシング製品の2011バージョンを発表した。

クリエイティブフィニッシング(CF)製品とは、ただの映像編集ソフトではなく、色調補正や、キーイング(合成)、不要な映り込みを消したりするペイント作業、ビジュアルエフェクトなど、映像を作品として完成させるために必要な機能を備えた製品のことを指す。

分かりやすく言うと、アップルのFinal Cut Proや、アドビのPremiere Proは主にタイムラインベースの編集を行なうためのソフトであり、色調補正や合成などの機能はあくまでも副次的なレベルにとどまるるのに対して、オートデスクのCF製品は、機能、性能、価格のすべてにおいてそれらを上回るハイエンドな製品ということになる。

たとえば「Autodesk Flame」は、テレビCMや映画のポストプロダクション作業には欠かせないツールとして映像業界で有名だし、「Autodesk Smoke For Mac OS X」は、Macのプラットフォームでもハイエンドなフィニッシング作業ができるオールインワンツールセットとして注目を集めている。

2011バージョンの最大の特長は、製品相互の連携強化と、映画・テレビ業界のトレンドであるステレオスコピック(立体視)への対応。これにより、ステレオスコピックの次世代フィニッシングワークフローを確立できるという。

米国での製品発表の2ヵ月後、オートデスクは日本国内において「Lightstorm and ILM Blockbuster Tour 2010 + After NAB 2010」というイベントを6月29日に開催した。このイベントは「映像制作における最新動向と今後の方向性の紹介」をテーマに開催され、オートデスクのCF製品の紹介や、映画業界で活躍する制作者を招いて講演が行なわれた。

ここではそのイベントの様子をレポートするが、1回目はオートデスク製品にスポットを当てて紹介したい。

「バーチャルシネマトグラフィ」と「ステレオスコピック」

イベントの前半は、最近ハリウッドで注目を集めている「バーチャルシネマトグラフィ」と「ステレオスコピック」をテーマとした、オートデスクによるプレゼンテーションが行なわれた。

バーチャルシネマトグラフィとは、映画「アバター」などでも導入された方法論。撮影に入る前から、コンピュータ上にバーチャルな空間を構築しておき、カメラ位置、レンズのミリ数、キャラクターの動きなどをシミュレーションしたり、ストーリーボード(日本の絵コンテのようなもの)を作るなどして、撮影を効率的に進めることができる。ポストプロダクションの作業に入ってからも、撮影データをバーチャル空間に配置したり、3DCGの背景やキャラクターをレンダリングして統合するなど、最後の工程まですべてバーチャル空間で作業する。

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オートデスクが提案するバーチャル映像制作環境

オートデスクが提案するバーチャル映像制作環境は、リアルタイム3Dキャラクターアニメーションツール「Autodesk MotionBuilder 2011」をベースとしている。今回のプレゼンテーションでは、MotionBuilderによって3DCGのストーリーボードを作成し、プリビジュアライゼーション(事前の簡単な映像化)を行なうところからスタートした。この段階からステレオスコピックで見ることができるのは大きなメリットである。

次に、RED ONEで撮影されたデータを、カラーグレーディングツール「Autodesk Luster 2011」で色調補正する様子が披露された。Luster 2011もステレオスコピックに対応しているので、左右のカメラの色調の違いを簡単に統一することができる。

オフライン編集が終ったら、そのXMLデータを「Autodesk Maya」に読み込み、同時にMotionBuilderのカメラデータも読み込む。これでMayaの3D空間およびタイムラインに、実写データと仮想カメラが配置されたことになる。もちろんMayaもステレオスコピックに対応しているので、立体視の効果を細部まで詰めながらレンダリングを行なうことができる。

そして最後に、実写と3DCGの合成を「Autodesk Flame 2011」で、全体の色調整を「Autodesk Luster 2011」で行なって、全ての工程が終了。様々なオートデスク製品を組み合わせることで、バーチャルシネマトグラフィとステレオスコピックの効率的なワークフローが実現できることを実証してみせた。

Autodesk Smoke 2011 For Mac OS X

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Autodesk Smoke 2011 For Mac OS X

イベントの後半では、NAB 2010で発表された「Autodesk Smoke 2011 For Mac OS X」の製品デモンストレーションが行なわれた。

Smokeはもともと、Linux OSのコンピュータにソフトウェアをインストールしたパッケージ製品として販売されていたが、2009年12月より、Mac OS X版のソフトウェアが単体で販売されるようになった。オートデスクのCF製品のラインナップにおいて、Mac OS Xで動作する製品はこれが初めてとなる。

これまで日本のCM業界では、HD CAM(ビデオテープ)やAvidのノンリニア編集システム、あるいはFinal Cut Proでオフライン編集を行ない、Autodesk FlameやAutodesk Infernoでオンライン編集を行なうワークフローが一般的だった。

しかし、Autodesk Smoke 2011 For Mac OS Xは、編集、コンフォーム(他のシステムの編集データの読み込み)、色調補正、キーイング、トラッキング、ペイント、ロトスコーピング、コンポジティング、そして3Dビジュアルエフェクトまで幅広い領域をサポートしており、編集からフィニッシングまでをすべて完結させることができる。

また、Mac OS X対応なのでFinal Cut Proとも簡単に連携できるし、オートデスク製品なのでFlameやInferno、あるいはMayaなどの3DCGソフトと双方向で運用できるところも大きな強みである。2011バージョンからはさらに、ステレオスコピックに対応している。

実際の製品デモンストレーションでは、Mayaで作った都市空間のバーチャルセットに実写の人物を配置したり、スパイダーカム(カメラをワイヤで吊って前後左右上下に移動させるシステム)で撮影した映像にトラッキングさせるなど、かなり複雑な作業を行なってみせた。

Smoke 2011 For Mac OS Xには、もう一つ注目すべき新機能がある。それは、EOS 5D Mark IIやREDなど、ファイルベースのカメラとの相性の良さである。H.264 QuickTimeやRED RAWメディアをアプリケーション内でネイティブサポートしているので、これらのカメラで撮影したデータを読み込んだら、すぐに作業することができるのだ。

今回のイベントではEOS 5D Mark IIやRED ONEを使ったデモンストレーションは行なわれなかったが、映像制作の現場ではファイルベースの仕事が急増していることから、Smoke 2011 For Mac OS Xは今後大きな注目を集めるようになるだろう。


Autodesk Premium Seminar 2010 開催決定


9月10日〜14日に開催された国際放送機器展「IBC2010」(オランダ・アムステルダム)で、オートデスクが発表した製品を、日本国内のユーザ−に紹介するイベント「Autodesk Premium Seminar 2010」が開催される。

Flame、Flare、Smoke、Lustre 各製品 2011バージョン Extension 1、およびクリエイティブ サービスの拡張と多様化を高める新製品Autodesk Flame Premium 2011の説明が行なわれる。

※本会場ホワイエには、Autodesk Smoke 2011 For Mac OS X の展示が行われる。

開催日時:
第一回 10月 7日(木) 13:00 - 15:30 (受付 12:00)
第二回 10月 7日(木) 16:30 - 19:00 (受付 15:30)

開催場所:
秋葉原 UDX THEATER

申込み:
http://www.info-event.jp/autodesk/premium/

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