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イベントレポート 「Lightstorm and ILM Blockbuster Tour 2010 + After NAB 2010」 ②

オートデスク主催のイベント「Lightstorm and ILM Blockbuster Tour 2010 + After NAB 2010」のレポート第2回目は、映画「アバター」のバーチャルシネマトグラフィを担当したNoran Murta氏の講演と、映画「アイアンマン2」のVFXを担当したBrennan Doyle氏の講演を紹介する。

「傑作に至るまでの道程」 講師:Nolan Murtha 氏

「ターミネーター 2」などの作品で有名なアメリカの映像制作会社「Lightstorm Entertainment」は、「バーチャルシネマトグラフィ」 と称されてきたデジタル映像制作技術や、モーションキャプチャの開発で大きな業績を上げている。同社のNolan Murtha 氏は、09年に公開されたジェームズ・キャメロン監督の「アバター」の制作に参加。誰も見たことがなかった3D空間を映像化するに至ったその過程を、実際の映像を示しながら語った。

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Nolan Murtha 氏

05年、キャメロン監督が試験的に行なった「880」というプロジェクトに参加しました。これは、それまでゲームの技術だったバーチャル空間の中で映画を撮る、という試みでした。この時に使用したソフトが、Autodesk MotionBuilderです。MotionBuilderを選んだことで、映像制作についての考え方は、プリプロダクションからポストプロダクションまでをすべて一つのパイプラインに入れてしまう、というものに変わりました。解像度は完成した映像と同じではありませんが、撮影前の早い段階でイメージを具体的に視覚化し(プリビジュアライゼーション)、意思決定できるようになりました。また、撮影セットやCGの背景に対する決定を、その場で行なうことができます。

それでは、キャメロン氏が「アバター」をどう作っていったか、そのプロセスを説明しようと思います。バーチャル制作の原則は、複数の解像度の映像を平行させていくことになります。キャラクターも10くらい、異なる解像度で作っています。カメラから離れていれば低解像度で、綿密な場面では高い解像度で、といった具合です。

アセットについては、低解像度でも高解像度でも相互に使えるようにします。これはスケルトン、ポジション、乗り物も含めたすべてのアセットについて言えます。低解像度のスケルトンをニュージーランドのチームに渡し、それを高解像度に置き換えて再生するということが可能になりました。具体的な数字を挙げますと、乗り物は26、植物3、キャラクターは35になりました。キャラクターについては、異なるテクスチャーの生物を120種類くらいでこの方法を取りました。スケルトンを使うことで、どこでも情報を取り出して使えるようにしたのです。おかげで、シーンの撮影に優れた柔軟性をもたせることができましたし、MotionBuilderを使って植物や木も動かすことができました。空もカスタム化されたオブジェクトであり、キャラクターやその他のアセットも同様です。

視覚効果も個々のアセットという扱いで、MotionBuilderのシーンファイルを使って実現しました。MotionBuilderでレンダリングしたファイルを編集し、それを渡して作っていくという方法です。カメラで撮影したデータはキャメロン監督のものなので絶対に触れてはいけないのですが、シーンを分解してキャラクターのスケルトンとポジションの情報を取り出し、それをAutodesk Mayaの中で再生していきます。システムがパワフルになり、MotionBuilderの中では、仕上がりと同じ解像度で見ることができました。

(アバターのシーンを紹介しながら)爆発のシーンでは、 あたりに飛び散る破片をVFXで作っていますが、カメラと乗り物の位置関係は変わっていません。つまりキャメロン監督がすべてを取り仕切って、ライブアクションの映画を撮るように監督中心で臨みました。あらかじめ俳優にやってもらった動きを使うのではなく、実際に監督と俳優がインタラクティブにやり取りすることができたのです。これが「アバター」の成功の鍵であり、バーチャル映像制作もこれで成功したと言えます。

以前ならキャメロン監督がVFXのスーパーバイザーを並べて欲しいシーンを説明し、それを何ヵ月もかけて作ってもらい、それをやり直して…という手順でしたが、パワフルなシステムのおかげでそれがなくなりました。撮影の現場で監督がカメラワークをしながら、「VFXでこういうシーンがほしい」というリクエストを出すことができるのです。

キャメロン監督が先鞭を着けて成功を納めたことで、現在スピルバーグ監督が撮影している「タンタンの冒険旅行」のプロデューサー、ピーター・ジャクソンもこのテクノロジーを取り入れて進めています。シネマティックシークエンスは、映画製作だけでなくゲーム製作においても取り入れられ、今では建築の分野でも利用されているのです。


「ASIAの秘めた力」 講師:Brennan Doyle 氏

Lucasfilm Ltd. の子会社であるIndustrial Light & Magic Singapore (ILM Singapore)は、2010年6月に公開された映画「アイアンマン 2」のVFXを担当、スターク・エキスポやバトルシーンなど重要なVFXを提供している。同社のデジタル・アーティスト・スーパーバイザーであるBrennan Doyle 氏は、本社のVFXスーパーバイザーと協力しながら、クライアントが求めるクオリティの実現に取り組んだという。実写を取り入れながらリアルな空間とキャラクターを作り出したそのプロセスを明かしてくれた。

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Brennan Doyle 氏

「アイアンマン 2」は、シンガポールでVFXに約70名が携わり、4ヵ月前に終わったところです。VFXシーンは全部で530、シンガポールはこのうち190を手掛け、130は仕上げまでのすべてを担当、サンフランシスコのチームとシームレスな共同作業を行いました。

プロデューサーからの指示でタイムラインが常に変化するので、レンダリングなどは常にアップデートしなければなりませんでした。スーパーバイザーとしての作画も、個別の課題がありました。「2」ではアイアンマンのスーツが問題でした。コンセプトに関わる作業は、まず、クライアントからコンセプトアートが届きます。それを基に、私どものコンセプトアーティストがキャラクターのエンジニアリングを考えます。現実的な動きを念頭に、メカとしての精度を高めたもの、芸術的な動きをするものなどさまざまなデザインを作りました。そこにアニメーションの参考情報も合わせて提示していきます。その後、照明の状況、撃たれた時の損傷や、戦闘時の汚れの様子などを、回転するアニメーションで表すという作業も行いました。

アクションは、俳優を使ったステージングで行なっています。アニメーションのスーパーバイザーがいて、スーツを着た俳優のインフォメーションに忠実であることを心がけました。このスーツは「フットボールスーツ」と呼んでいました(肩などにだけフットボールのプロテクターのようなスーツの一部を着用)。そしてどの部分を実写にして、どの部分を置き換えるかを判断します。(アイアンマンがドーナツを食べて休んでいるシーンを示し)ここではスーツはすべて置き換え、実写は頭と手とドーナツだけです。

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映画「アイアンマン2」より

次に、背景となる環境イメージをどう作るか。(スターク・エキスポを例に挙げながら)まず、サンディエゴで行われる販促用に、1965年に開催されたニューヨーク万博を再生することになりました。スクリプトの書き直しが最後まで行われるので、それに従ってコンセプトも変わります。万博の環境作りについては、まずコンセプトアートを手がけました。ファンタジックなのか実写的なのか、カラフルな色使いになるのかなどを提示し、そこから作り込んでいきました。するとジョン・ファヴロー監督は、未来的すぎるのでオリジナルの万博に近づけたいとのことでした。というのも、監督はニューヨーク育ちで、万博開催時には会場の近くを自転車で通っていたそうで、ニューヨーク万博のことをよく覚えていたのです。そこで、当時の会場の写真を参照して使うことにしました。ロスに現存するノキアビルを組み込むなど、実写もセットしていかなければなりませんでした。

この万博会場の制作は、すべてシンガポールの担当です。Autodesk 3ds Maxを使用し、ライティングやレンダリングは独自のシステムで行っています。ニューヨークのライブアクション、フォトグラフィックに基づいてやりたいというリクエストがあったので、画面端の歪みなど光学的なクオリティも表さなければなりませんでした。それを3Dのレンダリングでやるのは難しいことです。そこで、リアルなレンズのフレア、ハイライトの広がり、反射などに手を加え表現しました。

今回、アイアンマンにも友達が必要ということで登場したのがウォーマシーンです。ウォーマシーンには技術的なリアルさとアーティスティックさを加えました。スーパーバイザーとしては、エンジニアリングをした上でやれることをやる、ということになります。装備する武器も、動きのスピードや銃が発射されるメカニズムなど1つ1つテストしました。炎の出方、飛び方、爆発などは現実のイメージを参考にしています。

ライティングツールもいろいろな作業を行ないました。長い時間をかけ、実際の3D空間における球体のマッピングでライティングのマスターを作りました。キャラクターは空間を動くので、光が当たるのを表現できません。レイアウトジオメトリーをセットして、キャラクターと相互作用するアニメーテッドライトを後づけで撮影することになりました。これはある環境には向いた方法でした。ハマー・ドローンのシークエンスなどは、ワイドに撮っているシーンから新しいシーンをCGで作ってクローズアップできました。マッピングができているので、プリビジュアライゼーションに最終的な変化は出ていません。

かなり変わった例もあります。(日本庭園でのバトルシーンを例に)ポールを立ててフレームの範囲を表しています。これで、キャラクターの大きさがわかってきます。そして、モデリングです。ロボットが撃たれた時にどれだけのオイルが吹き出すのか、それを浴びたアイアンマンの表面はどれだけ汚れるのかといったテクスチャーのシミュレーションを行いました。ポールはロボットの位置決めにもなります。ライティングパスも入れて、カメラのオペレーションをどこに向けるのかポールで指示するので、ポストペイントでロボットを入れる作業を省くことができました。

このような方法で、サンフランシスコとシンガポールのコラボレーションを行ない、多くのシーンを作ることができました。


Autodesk Premium Seminar 2010 開催決定


9月10日〜14日に開催された国際放送機器展「IBC2010」(オランダ・アムステルダム)で、オートデスクが発表した製品を、日本国内のユーザ−に紹介するイベント「Autodesk Premium Seminar 2010」が開催される。

Flame、Flare、Smoke、Lustre 各製品 2011バージョン Extension 1、およびクリエイティブ サービスの拡張と多様化を高める新製品Autodesk Flame Premium 2011の説明が行なわれる。

※本会場ホワイエには、Autodesk Smoke 2011 For Mac OS X の展示が行われる。

開催日時:
第一回 10月 7日(木) 13:00 - 15:30 (受付 12:00)
第二回 10月 7日(木) 16:30 - 19:00 (受付 15:30)

開催場所:
秋葉原 UDX THEATER

申込み:
http://www.info-event.jp/autodesk/premium/

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