写真と動画は何を捉えるのか 池嶋徹郎 作品展「Etude / st.2」開催!

スチルライフフォトグラファー 池嶋徹郎による作品展「Etude / st.2」が、2026年5月13日(水)から18日(月)まで恵比寿・アメリカ橋ギャラリーで開催される。

今回の展示は、昨年の展示「Etude」の延長線上にあるシリーズだ。前回はプロダクトの輪郭や線を抽出しながら像を立ち上げていくアプローチだった。

そこからさらに表現を掘り下げる過程で、水や泡、水滴、植物といったより有機的な要素も含めてシリーズ全体を再考するようになり、写真と動画を並行して制作するという試みに発展した。

今回は、存在の瞬間を捉える写真表現に加え、その前後に揺らぐ「時間」や「気配」を描くための動画制作にも取り組む。

会場では、同じ被写体を写真と動画で撮影し、それらを対にして展示する。2つを並べることで、それぞれのメディアが何を捉え、どのように見せるのかを探ろうとする試みだ。

この記事では、池嶋氏に作品の意図やその制作について語ってもらった。

今回の作品の一部はこちらから↓  

同じ被写体を写真と動画で撮る 

事務所内に組まれた2つの撮影セット。左が俯瞰撮影用、右がターンテーブル撮影用。取材時には、このセットを使って動画撮影を実演してくれた。

ターンテーブルに載せた香水瓶を撮影。左が長時間露光による写真、右が動画。

ターンテーブルで香水瓶を半回転させ、同じ時間の中で撮影する。動画と、長時間露光で撮影した写真を並べて展示することで、同じ被写体・同じ時間を撮影していても、まったく異なる像として現れることがわかる。

理屈として語ることは簡単だが、実際に同じ条件で撮影して並べてみると、その違いはよりはっきりと見えてくる。

写真と動画で見えてくるもの

植物から水滴が落ちる瞬間を狙った写真と動画。同じ画角で撮影したカット。

「瞬間を捉える」という言葉は、写真の特性を説明する際によく使われる。

しかし制作を進める中で見えてきたのは、動画の中にもまた別のかたちの「瞬間」が存在するということだった。

例えば、水滴が落ちる瞬間や水泡が潰れる瞬間。そうした現象は、動画の中で一瞬の変化として印象的に現れることもある。

どちらのメディアがよりその瞬間を強く伝えるのかは、被写体の何を見せるかによって変わってくる。

240fps〜300fpsのハイスピード撮影も取り入れ、泡や水滴などの動きを捉える試みも行っている。スロー映像の中で現れる微細な変化を通して、光や質感、空気感といった要素をスチルライフとしてどのように表現できるのかを探っている。

写真が捉える瞬間と、動画の中に現れる瞬間。どちらがより強く立ち上がるのかは被写体によって異なる。その違いを見極めることが、写真と動画の使い分けのヒントとなり、本展の見どころの一つにもなっている。

理屈としては理解できても、実際に撮影してみると、どちらが「瞬間」をより強く感じさせるのかは、被写体の性質や動きによって異なる。その違いそのものが、今回の展示の一つのテーマになっている。

ターンテーブルの動きを外部PCから制御して撮影。回転速度や動きを細かく調整しながらカットを作っていく。ターンテーブルキットはKessler CineShooter+とTurntable Kitをを使用。

動きの精度を作品の条件にする

これらの作品を制作する上で欠かせないのが、技術力と精密さだ。

動画撮影では、電動スライダーやターンテーブルを組み合わせ、外部PCから動きを制御する。スタート位置と終点、速度を細かく調整することで、半回転の動きを正確に再現するのだ。

この精度が揃っていないと、画としての気持ちよさが成立しない。静止画で培ってきた構図やライティングの精度を、そのまま動画制作にも応用している点が特徴だ。

俯瞰撮影のセッティング。カメラはRED V-RAPTOR 8K VVにEFレンズを装着。

動画を“物語”にしない

今回の取材の中で印象的だったのは、動画を一本のストーリーとして構成していないという点だった。

「動画を作る時に、どうしても“動画=起承転結のあるしっかりとした映像作品を作らなければならない”という思い込みがありました。それが動画撮影のハードルを上げているんじゃないかと思うんです。

特に僕のようなスチルライフメインのフォトグラファーは、起承転結のつけ方で立ち止まってしまうという悩みを持っているんじゃないかと。

でも、僕らは映像ディレクターではなく、あくまでフォトグラファーです。フォトグラファーとしての動画を作っていけばいいのかなと考えるようになりました」と池嶋氏は話す。

スチルライフの現場では、被写体を観察し、微細な調整を重ねながら光を組み立て、色やコントラストを整え、工程を積み重ねることで一枚の写真を完成させてきた。

動画も同様に、ライティングを軸に「美しい画」を作り、調整を施した“クリップ”として成立させられるのではないかという。

写真の延長として動画に向き合うことで、静止画とは異なる時間の表情が浮かび上がってくる。

写真展概要
池嶋徹郎「 Etude / st.2 」


開催日時:2026年5月13日〜5月18日 12:00 – 19:00(初日は13:00から、最終日は17:00まで)会期中無休

会場:アメリカ橋ギャラリー 

Reception Party:5月15日(金)17:00 – 20:00

池嶋徹郎(いけじま・てつろう)
1977年 東京生まれ。2001年 東京学芸大学卒業、マッシュ入社。最近の主な仕事にEDWIN,PAUL &JOEなどがある。
Web:www.mash-photo.net
Instagram:@tetsuroikejima


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