
毎年春、京都市内各地で開催される国際的な写真フェスティバル「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」。
13回目を迎えるKYOTOGRAPHIE、今年は2025年4月12日(土)から5月11日(日)までの期間で開催された。
期間中は、メインプログラムと、サテライトイベントKG+(ケージープラス)を合わせて160を超える写真展の他、ワークショップ、ポートフォリオレビュー、アーティストによるトークイベントなど、写真にまつわるさまざまな企画が行なわれていた。
プロ・アマ問わず、写真に関心のあるすべての人にとって刺激に満ちた時間が過ごせる。
プロフォトグラファー、作家、学生など様々な「写真家」が参加するKG+
KG+(ケージープラス)とは
KYOTOGRAPHIEのサテライトイベントとして開催される公募型フォトフェスティバル。
写真展を中心に、フォトブックフェア、トーク、レクチャー、ワークショップなど写真表現を核としたプラットフォーム。キャリア、年齢、国籍をとわず誰にでも拓かれていて、写真展は大きく3つの種類に分けて紹介されている。
1)KG+は、100以上の展覧会が京都市内各所で開催。ギャラリーに限らず、カフェや寺社仏閣、屋外など様々な会場を舞台に展開。複数ある展覧会を、FOR COLLECTORS、PICK UPなどカテゴリに分けて、紹介している。
2)KG+SELECTは、国際的に活躍する審査員によって公募の中から選出された、10人のファイナリストによるコンペティション型展覧会。展覧会審査を経て決定した、1人のアワード受賞者は翌年のKYOTOGRAPHIEに参加、展覧会を開催できる。会場は堀川御池ギャラリー(この記事では掲載していない)。
3)KG+SPECIALは、協賛企業やパートナー企業が主催・共催で行う展覧会。プログラムナンバー前に S と表記があるもの。
KG+は一部有料会場もあるが、基本的には多くのものが無料、何度も訪れることができる。
この記事で紹介するのはKG+(ケージープラス)の中で訪問できた展覧会をレポート形式で紹介する。
お目当ての展示を目指すのも良し、京都の街をフラリと歩きながら展覧会を渡り歩くのも良し。
いろんな鑑賞ができる、それもKG+の楽しみ方はそれぞれだ。

KYOTOGRAPHIE、KG+の全会場がマッピングされている。クリックすると展示詳細が見られる。会場によって開催期間・時間が異なるので事前チェック必須だ。
作家名、作品タイトル上の数字はKG+内のプログラムナンバー。
レポート記事では、実際に訪問した順番に掲載する。
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内藤忠行 「美的DNAを追い求めて」
アンダーカレント

Asphodel(レティシア・キイ「LOVE & JUSTICE」展会場)から徒歩5分の場所にあるギャラリーアンダーカレント。
フォトグラファー内藤忠行の展示だ。
一見、着物を俯瞰撮影した作品かと思いきや、T字型の中に桜の写真がアシメントリーに配置されていた。じっと注視していると、万華鏡の世界の中に入り込んだような感覚になる。
内藤が担当した「そうだ京都に行こう」の初回ビジュアルに使用された写真も展示されており、貴重な機会だった。
S04
パメラ・トゥリゾ 「Mababu ー 先祖の霊(こだま)」
The Art of Color – Dior Photography and Visual Arts Award for Young Talents
Sfera


Asphodel(レティシア・キイ「LOVE & JUSTICE」展会場)から徒歩2〜3分にあるのがSfera。素敵なインテリアアイテムが並ぶ店舗内の階段を上がると、次の展覧会に辿り着く。
1993年、コンゴ民主共和国のブカブに生まれ、現在はゴマを拠点に活動する写真家パメラ・トゥリゾ。彼女は2020年「ディオール ヤング フォトグラフィー&ビジュアル アーツ アワード」を受賞した。
今回の「Mababu」シリーズは、アフリカ大陸の奴隷制と植民地主義にまつわる歴史的な労働の現場──綿花農園やタバコ畑、家事労働など──を舞台にしている。
しかし、彼女が描くのはその悲惨さではなく、過酷な環境の中でも力強く生き抜いてきたアフリカの女性たちの美しさと尊厳なのではないかと思う。
メディアに取り上げられることの少ない存在に、モデルや衣装、スタイリング、照明など制作スタッフとともに作るセッティングフォトで光をあてる。
会場では、ディオール ヤング フォトグラフィー&ビジュアル アーツ アワードで審査委員長をつとめたヴィヴィアン・サッセンを聞き手にしたインタビュー映像も上映。
トゥリゾはその中で「組み写真で読み取らせるのではなく、1枚の写真で物語を語りたい」と語っている。実際、展示作品の1枚1枚は力強く、訴えかけてくる。
S05-1(しんらん交流館)
S05-4(URBAN RESEARCH KYOTO)
小原一真「わかちもつ言葉と風景」


東本願寺の道路隔ててすぐにあるのが、しんらん交流館。
小原一真は1985年 岩手県生まれ。「わかちもつ言葉と風景」は、ハンセン病回復者とその家族の歩みをテーマに、社会から見えづらくなった個人の記録を丁寧にたどる写真プロジェクトだ。
小原はこれまでにも福島第一原発の作業員や戦争、パンデミック下の人々に焦点を当て、報道や日常の中で埋もれがちな人々を捉えてきた。
この「わかちもつ言葉と風景」では、「悼む」「編む」「道程」「間柄」という異なる切り口で4つの展示を行い、それぞれの会場で対応したテーマの新聞(+1種)を無料配布。持ち帰り、別の場所でも読み返し、また展示することができるようなデザインになっている。
今回はそのうち2会場を訪問。しんらん交流館での展示「悼む」では、亡くなったハンセン病回復者のかつての住まいの写真と、コロナパンデミックの隔離化で患者たちを看取った看護師の文章記録を発表している。
一方、URBAN RESEARCH KYOTOは寺町通のアーケード商店街の中にある。
ここでのテーマは「間柄」。ある回復者家族の男性が中学時代に制作した家族アルバムのスキャン画像を展示。
新聞印刷時に出る損紙を吊るしたインスタレーションが空間を構成していた。
人物写真を直接見せるのではなく、写真を通じて声にならなかった記憶や存在を浮かび上がらせた。
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ダニー・モリオカ「境界のない余白」
鴨葱書店

京都駅から徒歩10分程度の場所にある鴨葱書店。2024年5月にオープンした書店だ。
店舗内で開催されていたのはダニー・モリオカによる展示。2017年から京都大学吉田寮に通い続け、寮生やそこに集まってくる人々、寮内の様子を撮影している。そこでの会話を文章化したテキストとともに展示している。若者たちが自由に過ごす様子が捉えられていた。
建物に差し込む光、そこで流れるゆったりとした時間を感じた。
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公益社団法人日本広告写真家協会(APA)、朝日新聞社、 共同通信社、産経新聞社、日本経済新聞社、毎日新聞社
「報道写真記者と広告写真家の比較作品展」
京都市営地下鉄 烏丸御池駅 御池ギャラリー(メインギャラリー)

烏丸御池駅3、4出入り口を降りた場所に展示されている報道写真記者15名と広告写真家15名の写真による比較作品展。
今年で4回目を迎える。
関西を代表するコピーライター・田中有史をコンセプター・キュレーターに迎え、アートディレクター・佐古田英一、グラフィックデザイナー・川上利男の3名の監修のもとを行なった。
キャッチフレーズは「写真は言葉だ。」
上段には広告写真家の作品、下段には報道写真記者の写真を対になるように配置。
2つの写真を比較することで見えてくる共通点や違い。
今回は比較するだけでなく、協働という形でアイデアを出し合い「新聞」を作り上げた。展示作品を新聞サイズに印刷した「新聞」を同駅改札付近で数量限定で配布した。
今回は5つのプログラムを紹介した。約20のプログラムを巡ったものの、会期外だった展示や、足を運べなかった書店やギャラリーも少なくない。2泊3日の旅は駆け足になった感も否めない。
それでも、多くの写真ファンが集う KG+の魅力を、多くの作品の魅力に触れられた。
来年、また新たな表情を見せてくれることを期待している。
メインプログラム篇-その1はこちら
KG+篇-その1はこちら KG+篇-その2はこちら KG+篇-その3はこちら
<イベント概要>
KG+2025(KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 サテライトイベント 公募型フォトフェスティバル)
会期:2025年4月12日(土)〜5月11日(日)※展示によって会期は異なる
主催:一般社団法人KYOTOGRAPHIE
KG+は基本的には無料 ※一部有料会場あり
https://kgplus.kyotographie.jp/

コマーシャル・フォト 2025年7月号
【特集】レタッチ表現の探求
写真を美しく仕上げるために欠かせない「レタッチ」。それはビジュアルを整えるだけでなく、一発撮りでは表現しきれないクリエイティブな可能性を引き出す工程でもある。本特集では、博報堂プロダクツ REMBRANDT、フォートンのレタッチャーがビジュアルの企画から参加し、フォトグラファーと共に「ビューティ」「ポートレイト」「スチルライフ」「シズル」の4テーマで作品を制作。撮影から仕上げまでの過程を詳しく紹介する。さらに後半では、フォトグラファーがレタッチを行なうために必要な基本的な考え方とテクニックを、VONS Picturesが実例を通して全18Pで丁寧に解説。レタッチの魅力と可能性を多角的に掘り下げる。
PART1
Beauty 石川清以子 × 亀井麻衣
Portrait 佐藤 翔 × 栗下直樹
Still Life 島村朋子 × 岡田美由紀
Sizzle 辻 徹也 × 羅 浚偉
PART2
フォトグラファーのための人物&プロダクトレタッチ完全実践
講師・解説:VONS Pictures (ヴォンズ・ピクチャーズ)
基礎1 フォトグラファーが知っておくべきレタッチの基本思想
基礎2 レタッチを始める前に必ず押さえておきたいポイント
人物レタッチ実践/プロダクトレタッチ実践
ほか