『コマーシャル・フォト』『ビデオサロン』は、9月4日東京・浜松町 東京都立産業貿易センター 浜松町館 5階展示室にて、写真・映像クリエイターのためのスキルアップイベントCREATORS EDGE 2024を開催。本イベントでは話題の写真・映像関連機材 出展ブースや写真・映像に関する13のセミナー、3つのワークショップを行ない、多くの来場者で賑わった。
その中で行なわれたライカカメラジャパンセミナー【写真表現における究極の「GRADATION」Leica SL Systemで拡がる光と色の可能性】。
セミナーの全貌は、アーカイブ動画からじっくりとご視聴していただきたいのだが、ここでは一部を抜粋して紹介する。
本セミナー登壇者は広告写真の第一線で30年以上活動を続ける写真家・高橋秀行氏。
セミナー内では高橋氏による豊富なパーソナルワーク、先日撮影現場をレポートした撮り下ろし作品をもとに写真表現のコア「GRADATION」について語られた。
【登壇者プロフィール】
写真家
高橋秀行(たかはし・ひでゆき)
福井県出身 日本大学芸術学部写真学科卒業
東京を拠点に広告ビジュアル撮影を中心に活動。独自の視点でテーマ、企画をユニークかつグラフィカルに昇華し、観る人の印象に残るライティング、カラー、フレーミングに定評がある。近年では、富士山をはじめ、日本固有のモチーフをコンセプチャルな視点から捉える撮影を精力的に行っている。日本広告写真家協会 正会員。
ニューヨークフェスティバル グランプリ、日本経済新聞広告賞 グランプリ、D&AD受賞 など賞歴多数。
2020年 写真展「カラス」LEICA PROFESSIONAL STORE TOKYO 個展
2024年 写真展「3,776.12」LEICA PROFESSIONAL STORE TOKYO 個展
博報堂プロダクツ フォトクリエイティブ所属
foton代表取締役社長
https://hidephoto.tokyo
【セミナーのアジェンダ】
- 自己紹介
- テーマ 「GRADATION」 について -写真表現における最も重要な要素-
- Leica SL-System -3つの魅力-
- Color Gradation -色のグラデーション-
- Light Gradation -光のグラデーション-
- Lenses Gradation -ボケのグラデーション-
- まとめとQ&A
セミナーではまず、数ある写真表現の中でなぜ「GRADATION」をテーマに据えたのか、その背景として、昨今の「写真の状況」について語った。
高橋氏が挙げたのは「カメラの進化」「AIの台頭」「写真の本質を見つめ直す」の3つ。
カメラ性能の進化により、肉眼では捉えきれない微細なディテールの描写まで実現可能となった。
さらに近年話題を集めるAIの存在。AIでのクリエイティブを拒否することも可能ではあるが、この巨大で急激な時代の波は避けられないものだと感じているという。
また、「昨今は撮影や写真表現はスピード化、記号化、手軽さが重視されてきている」とし、「写真本来の深みや表現力が希薄になっているのでは?」 と投げかけた。
今を生きるフォトグラファーとして、高性能カメラを使いこなし視野を広げること、さらにAIをしっかり捉え、使いこなすことが大切なことだと考えている、と語った。それを踏まえて「写真の本質を見つめ直す」ことの重要性を提起。
この時代だからこそ、写真にしかできない瞬間の背後にある物語や感情を大切にしていくべきではないか?
そんな想いから、写真においての「GRADATION」をテーマに選んだ、と高橋氏。
そこで写真表現のコアとして「3つのGRADATION」をあげた。
- カラーグラデーション
- ライトグラデーション
- レンズグラデーション
これらを表現する上で、なくてはならないのが「カメラ」の存在。
セミナー内では自身のパーソナルワークを例にライカ SLシステムの魅力を語った。
【ライカ SLシステム3つの魅力】
- 「解像度」 圧倒的な解像度で捉えるディテール
- 「ダイナミックレンジ」 豊かなダイナミックレンジで拡がる表現力
- 「操作性」 直観的でシンプルな操作性
1つは解像度。SL3でいえば有効画素数 6030万画素という圧倒的な解像度でディテールを捉えるのが魅力のひとつです。
それに加えて素晴らしいのがライカレンズ。ライカレンズとの相乗効果で、画面の隅々までシャープな描写が可能です。
高解像によって撮影後のポスプロの可能性が広がり、色々な表現を突き詰めることができます。
2つ目はダイナミックレンジ。豊かなダイナミックレンジによって、広がる表現力。
暗部からハイライトまで驚くほど細部まで捉える描写力。明暗差が激しいシーンでも豊かな階調によってメッセージをしっかりと伝え、とてもナチュラルで美しい表現になっているのも魅力です。
3つ目は操作性。SL3含めSLシリーズはボタンが少なく、シンプルで直感的なメニュー操作が可能です。
カスタマイズ可能なボタンも使い勝手がいいところに配置されており、SL3は右手側にボタン類が集中しているので、ファインダーを覗いたまま操作できるのも助かっています。
僕はSL2から使っていますが、特にジョイスティックの存在はありがたく、撮影中はジョイスティックだけを触るというインターフェイスなので、とにかく撮ることに集中できます。
また、魅力を語る上で高い耐久性と防塵防滴性能も外せません。突然の雨や霧など悪条件に出くわした場合でも不具合はありませんね。
【解像度】【ダイナミックレンジ】【操作性】の3つに加えて、やはりライカブランドへの信頼性ですね。
ライカⅠ(A型)が生まれたのが1925年、今年で99年目です。
99年目にして、SL3のようなカメラが生まれたことはユーザーとして感慨深いものがあります。
また、ここで改めて、セミナー本題である「写真表現におけるGRADATION」として、3つのキーワードを掲げた。
- カラーグラデーション 色彩の階調が生み出す表現の「深み」
- ライトグラデーション 光の階調が生み出す「リアリティ」と「奥行き」
- レンズグラデーション レンズが生み出す「立体感」と「物語」
この記事では、撮り下ろし作品とともに語った「レンズグラデーション」項目の一部を公開する。
まずは高橋氏からライカレンズの特長と作品解説が語られた。
【輪郭】をテーマに撮り下ろした作品です。赤と黒を基調にレンズが生み出す立体感と物語を意識した作品構成と撮り方をしました。
ライカレンズを語る上でよく【ボケが溶ける】と言いますよね。
SLレンズの特長である独特の美しい描写力で、【幻想的にボケを溶かす】。その特長を出せた作品だと思っています。
では【幻想的にボケを溶かす】とは一体どういうことか。感覚的なことなので、人によって感じ方の違いも当然あるとは思いますが、
寄りで撮影した作品を見ていただくと、目がフォーカスのピークでそこから背景にかけて強烈かつやわらかいボケを実現しています。
色の変化やスキントーンのボケ方、境目のボケ方も非常に自然でナチュラルですよね。
これによって絵画のように、感情や物語を伝えることができているように思います。
今回はウエストアップや全身もあえて全てF2で撮影しました。
よくレンズを語る時に【開放で使える】とか【使えない】なんて言い方をしますが、使わせていただいたライカ アポ・ズミクロンSL f2/90mm ASPH. は完璧に開放で使えますね。
開放時でも解像度は極めて高いです。今回は瞳の中もあえて直さず撮影者の僕がしっかりと映ったままにしています。
こちらは黒背景。
赤とは異なる輪郭表現や物語…ストーリーが見えてくるんじゃないかなと思います。
少しアンニュイな感じ…あえて言葉にするならば「強さと孤独」「情熱と葛藤」。ミステリアスな魅力と、内面の強さが出せたんじゃないかと思っています。
レンズが生み出す「立体感」と「感情」。作品全体が滑らかで自然なものに仕上がり、質感の深みを際立たせられる。
レンズから生まれるボケやシャープさは「感情」を刺激する作品のストーリーテラーになりうるんじゃないかと思います。
「カメラの性能が向上し、写真はかつてないほどの深みと美しさを手に入れた」と語る高橋氏。さらに押し寄せるAIクリエイティブという技術革新の波。
その上で、フォトグラファー・クリエイターが求められることとは……、本セミナーで語られた内容は、アーカイブ映像にて期間限定で配信中。
写真家の言葉で語られる生の声を、映像にてご視聴ください。
※予告なく配信を終了することがあります。ご了承ください。