ダイヤモンドの輝きを撮る
Photo&Words: Tetsuro Takai Photo: Ichiro Shoda

高井哲朗が
スタジオスチルライフ撮影の
アイデアと 愉しみを 伝授
創造主ゼウスのように
光を操って 宇宙を創造しよう
スチルライフ それは あなたが
神になれる世界
アメリカ宝石学会ダイヤモンド鑑定士の資格を持ち、
ダイヤモンドの輸入、オリジナルジュエリーのデザインをしている
プレオ・クリエイションズの代表 庄田市郎さんが
「取り扱っているジュエリーを自分で撮影してみたい」と相談に来た。
リングストロボだけではなかなかニュアンスを出すのが難しい。
ならば「他のライトも足してみましょう」と撮影が始まった。

庄田さんは 宝石を扱って47年
ダイヤモンドの 仕入れで 海外に 行くことも多く
美しい景色 楽しんでシャッターを 切ってたみたい
撮るたびに 発見する映像美
面白さに 夢中になり カメラに ハマるけれど
スナップ写真は 美しく 切り取れるのに
ジュエリーを撮るのは 難問だった
新作のジュエリー できるたびに
撮影していたみたいだけど 思うようにならなくて
ゼウスクラブを 訪れたのです
ニコンのカメラ
ティザー撮影のやり方も 勉強して
マクロレンズも 揃えて リングストロボも 購入
何度も テスト
あとは ライティング なんですが…
そこで ゼウスのアドバイス
定常光のLEDライト 足してみましょう
さあ どうでしょうか
リングストロボで カットを シャープに見せて
LEDで 輪郭を出していく
そして 銀レフで 部分的調節を 行なう
スチルライフ
美しく見せるのは 光の バランス
品格は ここで決まる
ライティングの組み立て

ライト:❶ Godox MF-R76 マクロリングフラッシュ ストロボ ❷ Aputure LS 60X
❸ Fotodiox Edge ライト C-518 ASV
カメラ:NIKON Z7/ NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S 1/4秒 f20 ISO100

レンズ光軸周辺に均等な明るさを作るとともに、ダイヤモンドのエッジを出す。

画面斜め上からの光でジュエリーとバラの花に立体感を出し、
タキシードの布目を立たせる。

ライト❷でできた右側のシャドーを起こし、銀レフで左側のシャドーを微調整した。

小さなバラの花を刺し、タキシードにつけて、俯瞰から撮影。


右のパネルタイプLEDは、近い位置から画面全体にムラなくあてている。

全体のバランスを見ながら、手持ちで角度を調整しつつ撮影。
ZEUS’S STILL LIFE MAGIC

石のバランス 対称性 研磨
石を形づくるための細工
正確な 芸術的手腕
ダイヤモンドのカットは
石の 極限的な美しさ 反射光の 精緻な計算
ダイヤモンドに反射して 虹のすべての色を見せる
白色光の分散 「ファイアー」
ダイヤモンド内の 光と暗い領域のパターンが
織りなす煌めき 「シンチレーション」
輝きを表す言葉
ダイヤモンドの価値は
光の美しい反射 なのです
「ラウンド ブリリアント ダイヤモンド」
ファセット数は 57〜58
ダイヤモンドの 魅力を最大限に 引き出すため
屈折率や 反射率など 全て 綿密に計算されています
このカットの どの部分にハイライトを入れ
どれぐらいのシャドウをつくるか
それが ダイヤモンドライティングの 基本です
「ラウンド ブリリアント カット」が施されるダイヤモンドは
「クラウン」「ガードル」「パビリオン」の
3つのパーツに大別されます
カットが 少しでもズレると
見え方に 影響を与えてしまうのです
上部の「クラウン」には 直接 ハイライトを入れません
天面の部分が 光を受けて 白く飛んでしまうからです
透明感のある グラデーションを作るのが 理想的です
外周「ガードル」の厚みを 意識して
下部「パビリオン」に 的確な光を打つ
この角度 光の質 重要です
ここに うまく光をあてられれば
美しく 最高の輝きを 表現できます
動画撮影なら
点光源の直射光でも キラキラと輝きます
それは カメラやライトの動きで
煌めきが 加わるからです
でも 2次元の写真再現は
それだけでは 表現できません
58面のカットに どれだけ バランスよく
光の面を組み合わせるのか なのです
硬質な光と 面光源との組み合わせ
入射角 反射角
計算しながら 構築していくんです
スチルライフ それは 神の光 光の建造物
美しさは 光あるからこそ その存在が 認められるのです
光を極めた 美しい 奇跡の石
Diamonds Are Forever
ライティングの組み立て

ライト: ❶❷broncolor Picolite+Picobox ❸Aputure LS 60X
カメラ:Canon EOS 5D MarkII/EF100mm F2.8Lマクロ IS USM 1/15秒 f20 ISO100


左右から面光源をあてているため、全体が均等に明るくなる。
またボックスライトのシャープなハイライトがシルバー部分に入る。

ディフューズしていないライト直光を、バーンドアで絞ってあてることで、ダイヤモンドのきらめきを出した。
バリエーション
庄田さんが様々なジュエリーを持って来てくれたので撮ってみた。
メイン作例と同様にボックスライト2灯とLEDでライティング。

ゼウス高井のセッティングを見守る庄田さん(写真右)。

ジュエリーを置く背景にした。
かなりアップになるので、実際に背景として写るのは抽象的な色模様。

カメラは横位置で撮影して、仕上がりは時計と反対回りに90度回転した。

奥斜め上からの光でタイヤモンドのきらめきを強調する。




庄田市郎(Ichiro Shoda)
プレオ・クリエイションズ代表。
1952年横浜生まれ。
1977年GIA(Gemological Institute Of America)の鑑定士資格取得。商社勤務後、1978年有限会社ダイヤ商会設立。2000年有限会社 プレオ・クリエイションズに社名変更。
ダイヤモンドの輸入販売、及びジュエリーの製造販売、ベルギーにてダイヤモンドの研磨事業等を行なっている。
プレオ・クリエイションズ
www.facebook.com/preocreations/
高井哲朗
たかい・てつろう/1978年 フリーとして活動開始。1986年(株)高井写真研究所設立。広告写真を中心に活動するかたわら、ゼウスクラブを開催し、写真の可能性を伝導する。
www.kenkyujo.co.jp/
x.com/tetsurotakai
コマーシャル・フォト2024年05月号記事より
ゼウスのスチルライフマジック
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コマーシャル・フォトで好評連載中の「高井哲朗/ゼウスのスチルライフマジック」がMOOKとしてまとまりました。
化粧品のボトル、ジュエリーから自転車、バイクまでさまざまな「ブツ撮り」に挑戦。
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「ゼウスのスチルライフマジック
プロフェッショナルスタジオライティングのアイデアと実践」
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コマーシャル・フォト 2025年6月号
【SPECIAL FEATURE:TAKAY】
撮り下ろし:ドリアン・ロロブリジーダ
TAKAYインタビュー/作品紹介
NYと東京を拠点としファッション誌からラグジュアリーブランドの広告、アーティストのジャケットワークまでを手掛けるTAKAY氏。ドラァグクイーン、ドリアン・ロロブリジーダ氏とのフォトセッションを皮切りに作品紹介とインタビュー、写真展紹介で綴る22ページ。
【特集】
この春、編集部が選んだ「今、注目すべき5人のフォトグラファー」。彼らがシャッターを切る理由は? 写真で何を語ろうとしているのか?キャリアの原点から最新作までを深掘りし、それぞれの”視点”に迫る。未来の一枚をつくるヒントが、きっとここに。
大野隼男/クロカワリュート/杉田知洋江/Miss Bean/Leslie Zhang
【連載】
長山一樹流 違いを生むコマーシャル・ポートレイト
「 ハッセルブラッドで撮るポートレイト」
Create My Book -自分らしいポートフォリオブックを作る-
Vol.10 「オールドレンズ」 金村美玖
ほか