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安藤瑠美「TOKYO NUDE」

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8月7日から8月22日まで学芸大学駅 古書店&ギャラリーBOOK AND SONS(bookandsons.com)にて安藤瑠美写真展「TOKYO NUDE」が開催中だ。

東京都心にあるビル街を撮影しているのだが違和感を感じる風景写真。
その制作について話を聞いた。


安藤 「TOKYO NUDE」の前身になる作品は学生時代から撮影していました。当時はレタッチもせず、俯瞰からビル群を撮影していましたが、徐々に今のスタイルに変化しています。

レタッチ作業をすると、1枚の写真に接する時間がとても長いんですよね。作業中、「この写真はどういう空間なんだろう」とか「この建物はどうして、こういう構造なんだろう」とか色んな想像をするうちに、自分自身が写真の中に入り込むような感覚になったんです。そうやって写真を目の前にいろいろ想像しながら作品を作っています。見れば見るほど、面白い場所はたくさんあるし、建物の群れを愛らしく感じるようになりました。

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リアリティを持たせながら、 異空間を作る

──どんなレタッチを入れてますか?

安藤 壁の質感を残しつつ、看板や窓、ドアを消したり、建物の色を変えています。

色や明度を変える時は「その街にありそうな建物の色」を選んだり、差し色を加えるように空の色と相性が良い色を選ぶこともあります。絵を描く感覚に近いですね。建物の配置自体を変えることもありますが、粗密感は街の雰囲気にも影響するので大きく変更はしないですね。あくまでリアリティを持たせながら、風景を異空間化するようにしています。

レタッチするのは絵を綺麗に整理するためではなく、空間自体の異質感を際立たせるためなんです。

──撮影場所はどう選んでいますか?

安藤 昔ながらのオフィス街を撮るのが好きですね。撮影する場所は、実際に現地に行ってから決めています。視点に浮遊感を持たせたいので、目線がビルに対して水平になる高さを探っています。

最近は都心から離れて郊外の風景も撮影するようになりました。都心以外も撮ってみたくなって、試しに撮影したらイメージとハマったんです。長く続けているので、撮り続けているうちに作品も変化しています。

──他にも変化はありますか?

安藤 作品がよりフラットになっていると思います。「東京」や「郊外」に対する印象の変化が絵作りに直結しているのかもしれません。撮影でも平坦な構図や光を狙うようになりました。

もともと、構図の取り方がとても苦手だったんです。「構図を勉強したいなら、コラージュで作品を作りなさい」と予備校の講師からアドバイスをいただいたんです。それからだんだん構図を面白く感じるようになっていきました。以前は色彩メインの西洋抽象絵画が好きでしたが、構図の面白さや線の美しさから大和絵や仏教絵画も観るようになって。今思えばTOKYO NUDEの遠近感のないフラットな絵作りも、そこからインスピレーション受けたのかもしれません。

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目の前に広がるバーチャル世界

安藤 自粛期間中の東京を眺めていたら、不思議と「TOKYO NUDE」の世界とリンクしたんです。いままで写真で表現してきたバーチャルな世界が、「無人の箱物の群れ=ゲーム世界のダンジョン」のように、リアルな東京の街に広がっているように感じました。

コロナ以降、日常生活の中にバーチャルやリモートが取り入れられるようになって、リアルの定義が変化しているように感じています。人々の暮らしが変化するにつれて街も変化していきますが、その新陳代謝のペースもこれからどんどん早くなっています。だからこそ、過渡期の東京の街を撮影し続けていきたいです。

安藤瑠美(あんどう・るみ)
東京藝術大学美術学科先端芸術表現科 鈴木理策研究室卒業。アマナグループ UNに所属。レタッチャーとして広告を中心に活躍。同時に作家としても制作を行なう。
2019 Lürzer’s Archive “200 BEST ad photographers worldwide”掲載。同年、THE REFERENCE ASIA: PHOTO PRIZE 2019 ナタリー・ハーシュドーファー選優秀作受賞。
rumiando.com
www.instagram.com/andytrowa/

写真集「TOKYO NUDE」

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3,000円+税/210 × 300 mm/12点カラー rumiando.com/books/

【写真展情報】

安藤瑠美「TOKYO NUDE」
写真集「TOKYO NUDE」に収録された作品に、会場屋上から撮影したオリジナル作品を加え、約20点を展示。
2021年8月7日〜8月22日 12:00〜19:00 水曜定休/入場無料
BOOK AND SONS
https://bookandsons.com/blog/tokyonude.php

※インタビュー記事はコマーシャル・フォト2020年9月号から転載しています。

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