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液晶ペンタブレット「Cintiq 24HD touch」をレタッチの現場で使用する

「Cintiq 24HD touch」は、高精細なペン性能を備えながら、マルチタッチ機能で直観的な操作も可能な液晶ペンタブレット。絵を描くように操作できるのはもちろん、液晶画面は24.1型ワイド液晶フルカラーにAdobe RGBカバー率97%など、モニターとしてもハイスペックな性能を兼ね備えている。プロの現場ではどのように活用することが可能なのか、レタッチカンパニーのフォートンが日々の業務の中で使用した。

img_products_wacom_cintiq02_01.jpg ワコム Cintiq 24HD touch
高精細なペン入力とともにマルチタッチ入力も可能な液晶ペンタブレット。プロユースに堪える24.1型 IPS液晶は、フルカラー、広視野角、Adobe RGBカバー率は97%。ハードウェアキャリブレーション機能を搭載し、ディスプレイとしての性能も十分だ。

色域が広く、絵を描いている感覚で作業に集中

img_products_wacom_cintiq02_02a.jpg 鈴木崇志(すずき・たかし)
武蔵野美術大学造形学部卒業。カンプからフィニッシュまで、豊富な経験がもたらすトータルなビジュアル制作感覚と、ディテールへの配慮を併せ持つ実力派。

img_products_wacom_cintiq02_03b.jpg 亀井麻衣(かめい・まい)
京都嵯峨芸術大学短期大学部卒。静止画から動画、3DCGまで、全てのジャンルに秀でた才能を見せ、フォートンのトップガンとして期待されている。

──お二人とも液晶ペンタブレットのCintiqシリーズを使うのは初めてとのことですが、Cintiq 24HD touchの印象はいかがですか?

鈴木 ペンタブレットはずっとIntuos Proシリーズを使ってきましたが、Cintiq 24HD touchは液晶画面に直接ペンで描けるし、画面のサイズも24.1型とかなり大きいので、これまでのペンタブレットとはまったく別物だという感じ。「目新しくて面白い」というのは最初に思ったことです。

亀井 私はペンタブレットそのものを使い始めて実はまだ1年ぐらいなんですけど、それでもこれはやっぱり別物だという感覚です。ペンタブレットを使い始めた当初は、ここにペンを置いた時、画面上ではどこに行くんだろうっていうのがわかりにくかったんですけど、それが液晶画面だとペン先の位置にポインタが来るので、操作したいところを確実にペンで押すことができます。

鈴木 それは意義が大きいと思います。また、手で直接触れられるマルチタッチ機能もいいですね。Intuos 5にもありましたが、液晶画面のCintiqはスマートフォンやタブレットPCと感覚が近くなったので、指で操作する頻度が増えました。

──液晶パネルの品質はいかがですか?

鈴木 いつもはEIZOのColorEdgeを使っていますが、それに比べてもあまり違和感はありませんでした。

──Cintiq 24HD touchは、液晶モニターとしてもAdobe RGBカバー率97%、表示色は10億色以上とハイスペックです。

鈴木 それはすごいですね。色域の広さはレタッチに必須なので、作業に最適です。

亀井 他のCintiqシリーズもやはり色域は広いですか。

──いえ、Cintiq 24HD touchは、Cintiqシリーズの中でも特に色域が広いモデルです。

亀井 それはポイントが高いですね。

──カラーマネジメントはどうしましたか。

鈴木 エックスライト社のi1を使って、ソフトウェアキャリブレーションを行ないました。

亀井 動画と静止画はそれぞれsRGBとAdobe RGBで色空間が違いますから、その2つをi1で自分用に設定しています。

──Cintiq 24HD touchはハードウェアキャリブレーションに対応しており、「Color Calibration Software」という専用のソフトウェアが付属されています。

亀井 今回は自分のPCに入っているエックスライト社のソフトを使っていましたが、ディスプレイをハードウェアで管理できると、常に良い状態でディスプレイを保つことができるので便利ですね。早速使ってみたいと思います。

──鈴木さんは静止画のレタッチ、亀井さんは動画を主に担当しているとのことですが、Cintiq 24HD touchを使ってみていかがでしたか。

鈴木 1ランク上のレタッチができるという気がしました。具体的な話になるんですけど、スタンプツールでこのポイントを触ってレタッチをするという時に、画面に直接触ることができるので、自分の中の「ここをつかみたい」という感覚の場所のズレがなくなり、それだけでもより精度の高いレタッチができるようになるなというのは感じました。

24.1型とサイズもかなり大きく、もうモニターに直接描いている感じ。僕はもともと美術をやっていたので、「描きたい」という思いに近づくのがすごくいい。自分で作っているんだとより強く感じられるようになりました。

──モニター上で操作していると、より直観的になる。

鈴木 そうですね。今までと考え方が違うので、作業の仕方も変わるなっていうのは使ってみて思ったことです。僕は、鉛筆や筆を使って絵を描くというところからスタートしているので、その当時の気持ちに近くなりました。絵に親しみやすいというか、物理的な距離はもちろん、感覚的な距離も近づいた気がします。

亀井 動画の操作で言うと、トラッキングを取る時にポイントを追いやすかったです。直観的にここ、ここ…と映像に点を打てるので、これも絵を描いている感覚でした。

動画立ち会いの現場で見えた新しいスタイル

──亀井さんは動画の立ち会いに使われたんですよね。

亀井 そうです。私はAfter Effectsを使用することが多いのですが、Cintiq 24HD touchであればプレビューからタイムラインまで全てのメニューが表示できるので、これ1台で作業ができます。マルチタッチはスクロールが便利で、動画のタイムラインを指でダーッと送るのはかなり直観的でした。Cintiq 1台に全てのメニューを表示するので、プレビューは小さめですが、テレビモニターに映すことができるので特に問題ありませんでした。

それに、テレビの前に置いて作業できるという点が動画の立ち会いにぴったりだなと思いました。というのも今までは、目の前のPCモニターに向かって作業し、振り向いてお客さんが見ているテレビモニターを確認しながら「どうでしょうか?」って話をしていたんです。お客さんと一緒にテレビモニターを見ながら作業したいという要望は、動画レタッチャーの中には強くありました。例えば化粧品のCMで「リップの色を微妙にオレンジにしてほしい」と言われたら、PCモニターの前でトーンカーブを調整しつつ、同時にテレビでの色合いも見られないととても効率が悪いんです。

動画ではマスターモニターと民生(一般家庭用)テレビで最終チェックを行ないます。静止画のようにプルーフを出力して確認することはありません。特に民生テレビはPC用のモニターとは違うので、キャリブレーションをとって色を合わせることができないですし、いつもの感覚でトーンカーブを操作しても色の出方が全く異なります。色を調整したつもりなのに、ほとんど反映されて見えない、ということも多々あるので、作業と同時に民生テレビをチェックできるのは本当に便利だと思いました。

──Cintiq 24HD touchは、画面を斜めに寝かせて設置できるので、その向こうにテレビを置けば視線の移動がない。

亀井 そうです。真横に持って行くこともできるので、随時要望を聞きながら1つずつ調整することもできます。実際に立ち会いに使用したらとても好評でした。まず「かっこいい!」と(笑)。「これが次世代の姿かも」と言われました。

img_products_wacom_cintiq02_04a.jpg Cintiq 24HD touchを使用した動画立ち会いの様子。家庭用テレビとマスターモニターを前に、クライアントとレタッチャーが並んで座り、ムービーをチェック。レタッチャーはクライアントとコミュニケーションを取りながら手元で作業、同時にテレビ画面を見ることもできる。

──テレビモニターは普通のハイビジョンテレビですか。

亀井 そうです。出荷時の設定で、家庭で一般的に見られる状態を確認します。手元でトラッキングを取ったりマスクを作っている時はテレビの画面は黒くなっているので、チェックしていただく時に声をかけます。

使用する人に合わせたカスタマイズが可能

img_products_wacom_cintiq02_06a.jpg モニター横のファンクションキーはカスタマイズが可能。よく使う機能やショートカットキーを設定すれば、手の動きを減らすことができる。

──Cintiq 24HD touchを使う上での工夫はされてましたか。

鈴木 左手側のファンクションキーには右クリックを必ず設定して、ブラシのサイズ変更はこの右クリックでやっています。ペンを強く握ってしまうせいか、ペンのサイドボタンを間違えて押すクセがあってオフにしているので、これは便利です。それから、レタッチにだけ集中できるようCintiq 24 HD touchに画像だけをおいて、サブモニターにツール類をまとめているため、指3本タップするだけで、操作する画面を変更できる「マッピング画面切り替え」が機能するよう設定しています。

亀井 私はブラシのサイズ変更にはペンのサイドボタンを使いますが、ファンクションキーは使いやすいので、こちらにも右クリックを設定しています。3DCGを手がけることも多々あるのですが、モデリングをする時に直観的に作業するためには右クリックは必須です。それから、できれば手の位置はあまり動かさずに作業をしたいと思っていたので、右クリック、中ボタンクリックなどマウスの動きをするものは全部ファンクションキーに入れました。

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作業スタイルに合わせて角度・ポジションを調節。頑丈なスタンドが本体を支えるので、デスクより前に張り出すことも可能だ。垂直に立てればディスプレイとしても使用できる。

──スタンドの角度の調整はどうですか?

亀井 スタンドは思ったよりなめらかに動きました。重くて動かなかったらどうしようと思いましたが、角度調節は私1人でもまったく問題なく動かせます。

──使いやすい角度はありますか?

亀井 私はわりと寝かせ気味で使うので、操作板みたいな感じになっています。動画の場合、手元のCintiq 24HD touchには操作するメニューをたくさん並べているので。プレビューは前のテレビに映りますから、この角度が扱いやすいです。マルチタッチでタイムラインを動かす時も、直角に近くなるほど手に負担がかかるんですが、下に画面があると軽く左右に振るだけで操作できます。ですから使うツールの違い、例えばPhotoshopとAfter Effectsで角度も変わってくるんじゃないかと思います。

鈴木 僕はもっと立てますね。あまり倒さずに作業をするので、常に手が若干浮くような感じです。だからこれ以上画面が大きいと手が疲れそうですし、動かす距離も広がってしまうので、24インチは適切な大きさだと思います。それと僕はサブモニターを使うので、目線のズレが起きないようにギリギリの角度まで立てたいというのがあります。

──Cintiq 24HD touchの大きさを活かしたデュアルモニターですね。

鈴木 はい。これだけの大きさがあればディスプレイとしても十分ですし、基本的な操作はこの中で終えられたらいいなというイメージです。

亀井 1台で完結もできるし、もう1台のモニターを見ながら使うことも両方できるんですね。

鈴木 色の再現性が信頼できますから、安心して手元の作業に集中できると思いますよ。

img_products_wacom_cintiq02_05b.jpg Cintiq 24HD touchをメインにしたデュアルモニターで作業する鈴木氏。

撮影:坂上俊彦


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