ペンタブレット 入門講座

北岡弘至「ペンタブレット入門講座」第1回

グラフィック広告の分野でレタッチャーとして活躍する北岡弘至さんは、まったくの独学でPhotoshopとペンタブレットを習得したという。マウスからペンタブレットに乗り換えようと思っている人のために、北岡さんがペンタブレットの基本について解説する。

まず最初にタブレットドライバの設定をしよう


Photo:坂上俊彦

画像処理からメールまで、ペンタブレットはあらゆる場面で役立つ

今回からこの連載を担当するデジタルレタッチャーの北岡弘至です。これから3回にわたって、ペンタブレットの基本についてお話ししたいと思います。

ワコムのIntuosシリーズは10年くらい前から愛用していて、今はA4サイズのIntuos3を使っています。A4サイズを使っているのは、私がメインで使用しているモニターが22インチで、しかもデュアルモニター環境ではないからです(上の写真にはモニターが2台写っていますが、それぞれ単独で使用しています)。30インチモニターやデュアルモニターではA3ワイドの方がよいのでしょうが、私の作業環境だとPhotoshopのウインドウとA4の入力エリアがちょうど同じくらいの大きさになります。ペンタブレット上の手の動きがほぼ1:1で画面に反映されるので、感覚的にしっくりくるのです。

タブレット表面の平滑性やぺンの重さなどは、以前は表面がツルツルしすぎたり、ペンが軽すぎたりしていましたが、Intuos3では両方とも自然な感じになり、「描き感」「筆感」が増したと思います。また従来はペンに対してポインタが微妙に遅れて動く感じがありましたが、Intuos3は追随性も良くなりました。コンピュータに積んでいるグラフィックカードの性能向上も関係あるかもしれませんが、ペンの動きに対して瞬時に、リアルタイムに反応するようになりました。Intuos3の完成度はかなり高いので、これからペンタブレットを始める人はあまり違和感を感じることはないでしょう。

マウスに比べたときのペンタブレットの良さは、最小限の動きですばやく作業できるところです。マウスの場合は、まずポインタが画面のどこにあるかを探さないといけませんが、ペンタブレットの場合は、タブレット上でペンを動かせばダイレクトに目的の場所に移動できます。目線の移動もポインタの移動も、最小限の動きで済みます。

私の場合はPhotoshop以外でも、Webブラウザやメールソフトなどで常にペンタブレットを使っています。テキストを入力している時に修正したい箇所をペンで一瞬のうちに選択してカット&ペーストできますし、Illustratorで入力したテキストを直感的に移動することもできます。ペンタブレットでテキストを扱うのに慣れると、画像処理以外の日常的な仕事もストレスがなくなります。

北岡さんの最近の仕事から

ぴあ 「Invitation」2008年3月号 表紙
Art Direction:fairground Design:Yusuke Takamura Photo:Noriaki Fukushima(CORAZON LTD.) Styling:Daisuke Nakamoto Hair Make:Katsuhiko Yuhmi Model:Tadanobu Asano Digital retouch:Hiroshi Kitaoka

ぴあ 「Invitation」2008年8月号 表紙
Art Direction:fairground Design:Yusuke Takamura Photo:Noriaki Fukushima(CORAZON LTD.) Styling:Isao Tsuge Hair Make:Koichiro Yamamoto Model:Masahiro Motoki Digital retouch:Hiroshi Kitaoka

Intuos3ではペンの筆圧や傾きなどを自分好みにカスタマイズできる

さて本題のペンタブレットの基本ですが、今回はタブレットドライバについて説明します。あらかじめお断りしておきますが、Intuos3にはファンクションキーやトラックパッドなどの便利な機能がたくさんありますが、私の場合はごく基本的な機能しか使っていませんし、モニターも1つだけなので設定も非常にシンプルです。

図1:タブレットドライバのペンの設定画面

図2:感触の詳細設定のダイアログ

図1は「入力デバイス」で「グリップペン」を選び、ペンの設定画面を呼び出したところです。ここでは「ペン先の感触」(筆圧感知)、「ペンの傾き感度」、「サイドスイッチ」などを設定できます。筆圧感知とはペンに加える力の加減で線の太さや色の濃淡を表現できる機能で、傾き感度とはペンの傾きの角度と方向を検出し細かなタッチを表現する機能。Photoshopは筆圧機能、傾き機能ともに対応しているので、自分の好みに合うように調整しておきます。

「詳細設定」をクリックすると、図2のダイアログが表示されます。「筆圧感度」では筆圧の大きさを変更し、「クリック圧」ではペン先でのクリックに必要な圧を設定します。それぞれの設定は「筆圧カーブ」にグラフで表示され、「試し描き」で設定内容の確認ができます。

「サイドスイッチ」の設定は、スイッチの上の方を押すと「ダブルクリック」、下のほうを押すと「右ボタンクリック」になるよう設定しています。サイドスイッチはOFFにしている人もいるでしょうが、このように設定しておくと、Photoshop以外でペンタブレットを使う時に便利だと思います。


図3:マッピングの設定画面

次に「マッピング」のタブをクリックします(図3)。ここではタブレットをどのように画面にマッピングするかを設定します。私の場合は「表示エリア」(モニター画面)、「タブレット操作エリア」とも「最大」に設定してあるので、画面とタブレットが1:1でマッピングされています。そのほか、タブレットの大部分を描画エリアとして指定して、残りの小さな領域をメニュー選択などに割り当てることもできますし、マルチモニター環境用の設定などもここで行ないます。

私のタブレットドライバの設定は以上で終了です。先ほども言いましたが、すごくシンプルな使い方だと思います。しかし逆に言えば、シンプルな使い方であっても基本性能が優れているので、仕事でレタッチを行なうのに不足はないということだと思います。

液晶ペンタブレットCintiqは画面に直接描きこむことができる

マウスからペンタブレットに乗り換えようと思っている人に、覚えてほしいことが1つあります。それは、ペンタブレットにはペンタブレットならではの手の動かし方があるということです。マウスに慣れているとついつい手首から先だけを動かしてしまうのですが、これだとペンタブレットの良さを活かすことができません。せっかくペンで描くのであれば、肩や肘、腕全体を使って描きましょう。手首から先だけで描いた線と、腕全体で描いた線は自ずと違うものになります。

それから最後に、もうひとつのペンタブレットについてお話したいと思います。ワコムのプロ向けペンタブレットには、Intuos3のほかに、液晶ペンタブレットのCintiqシリーズがあるのをご存知でしょうか。このシリーズは21.3型液晶モニターのCintiq 21UXと、12.1型のCintiq 12WXの2機種からなります。


Cintiq 21UX

Cintiqは髪の毛等の細かいマスクを描くのに適している

私はちょうど今、Cintiq 21UXを使い始めたところです。モニター画面がそのままペンタブレットの入力エリアになっているので、本来の「描く」行為とまったく同じ感覚で操作できるのが画期的だと思います。髪の毛などの細かい部分を正確にトレースしたり、筆の勢いを活かした描画などにはもってこいだと思います。

ただし画面に直接描けるということは、手元の画像が手で隠れてしまうということにもなります。Photoshopでパス切りするときは画像が全て見えた方が良いので、Intuos3の方が向いていると思います。細かいマスクを手で描くときはCintiq、パス切りはIntuos3と使い分けてもいいですし、Cintiqはボタン一つで通常のタブレットにもなるので1台2役で使うこともできます。

色に関してはメインモニターで確認しながら作業すればよいので特にストレスは感じませんでしたが、本体の薄型化と熱対策は今後の課題だと思います。現在のCintiqユーザーは絵を描く人が多いと思いますが、薄型化と熱対策が進めば、われわれレタッチャーにとっても使いやすいペンタブレットになると思います。

さて次回からは、このCintiq 21UXとIntuos3を使いながら、具体的な画像合成のテクニックについて説明していきたいと思います。1ヵ月後にまたお会いしましょう。

北岡さんの最近の仕事から
SONY CHINA HDR-TG1
アートディレクター:伊藤謙二/藤吉匡(Fallon) デザイナー:藤吉匡(Fallon) フォトグラファー:福島典昭(CORAZON LTD.) プロップ スタイリスト:マフミ モデル:伊藤謙二/根岸麻子 アカウントエグゼクティブ:北嶋ゆきえ(Fallon) デジタルレタッチ:北岡弘至

北岡弘至 Hiroshi Kiataoka

デザイン事務所で印刷、製版を学んだ後、デジタルワークの個人事務所ガラバートを立ち上げ、有限会社GARABATOを設立。http://www.garabato.jp/

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