ペンタブレット 入門講座

北岡弘至「ペンタブレット入門講座」第3回

デジタルレタッチャー北岡弘至さんが語る「ペンタブレット入門講座」第3回は、前回に引き続いて北岡さん自身の作品づくりを例に、ペンタブレットを使うメリットについて具体的に紹介していく。

ペンタブレットを使ってレイヤー合成の完成度を向上


Photo:坂上俊彦

レイヤーマスクでペンタブレットを使うと、合成の微調整が簡単にできる

こんにちは、北岡弘至です。前回に引き続いて作品づくりの過程をお見せしながら、実践的なペンタブレットの使い方についてお話をしたいと思います。まず前回のおさらいとして、これまでの途中経過の画像をご覧下さい。

左の画像は神社の廊下を撮影したものですが、柱の赤い色を青に変えて、ちょっと不思議な感じを演出しています。さらに、手前から奥までが均一の明るさになるように、ペンタブレットでマスクを作って何枚もの画像を重ねています。この背景に合成するのが右のキジの画像です。切り抜きマスクの作成では、最初にペンツールで輪郭に沿ってパスを作り、続いてブラシツール等で境界線部分を滑らかに仕上げています。

今回はここを出発点として、ゴールまで一気に説明していきます。


① 背景の上にキジを配置します。このとき、作成した切り抜きマスクをレイヤーマスクとして適用します。キジだけでは少し寂しい感じがしたので、鷹にも特別参加してもらいました。


② 配置した鳥たちに動きをつけたかったので、Photoshopのぼかしフィルタを使用しました。「ぼかし(移動)」はスピード感を、「ぼかし(シェイプ)」はブレた感じを出すのに最適です。

ぼかしたレイヤーを、元画像のレイヤーの上に配置して、羽ばたきや動きのブレを部分的に重ねていきます。必要な部分だけを重ねるには、上になっているレイヤー(ぼかしたレイヤー)にレイヤーマスクを追加し、出したい部分は白のブラシで塗り、消したい部分は黒のブラシで塗ります。グレーの部分は半透明になります。このように部分的に消したり、出したりするときにペンタブレットを使用します。筆圧を調整しながら、まるで絵の具で塗るような感じで作業ができます。

上は、このようにして作成した、動きを表現するためのレイヤーです。


③ 動きをつけたら、次は調整レイヤーで色調を調整します。今回はトーンカーブやチャンネルミキサーの調整レイヤーを使っています。

レイヤーパレットを見ると分かりますが、トーンカーブのレイヤーが複数あります。私のようなレタッチャーは微妙な色調をコントロールするため、そしていつでも後戻りができるように、複数のトーンカーブの調整レイヤーを重ねる手法をとっています。Photoshopにはこれ以外にも豊富な調整方法があるので、色々な方法を試してみるのも面白いと思います。

鳥のまわりに、雲の写真をレイヤーで配置する

④ ここでひとまず、パスやブラシを使ってマスクを作って合成する工程は終了です。ここからは、出来上がった画像に、遊び心のある表現を加えて行きたいと思います。

今回の作品制作にあたっては「写真で絵を描く」ことを個人的なテーマとしていますので、写真的なリアルさを追求するよりも、グラフィカルな面白さを重視して作業を進めていきたいと思います。


⑤ ちょうど手元に、雲の切れ目から黄金色の光が射している空の写真があったので、これを使用して鳥の周りに光り輝く雲を入れてみます。


⑥ 空の写真を何枚か複製してレイヤーで重ねます。鳥の位置や向きに合わせて、雲の模様がちょうどうまくはまる場所を探して、それぞれのレイヤーを配置し、必要なところをレイヤーマスクで出したり消したりします。

上の画像は、あたかも雲が柱の手前に見えたり、奥に見えるようにしたレイヤーマスクです。白いところは雲の写真が表示される部分、黒いところは表示されない部分です。このようなグラデーションのあるマスクをブラシで書く場合、ペンタブレットの筆圧感知機能が役立ちます。


⑦ 空をひとつのグループにまとめます。上の画像の「レイヤーの描画モード」は「通常」ですが、そのままではどんよりした雰囲気なので、描画モードを色々と試してみました。


⑧ その結果、「ハードライト」でレイヤーを重ねるのが、頭の中のイメージにいちばん近いと感じました。上は「ハードライト」を適用した画像です。このように「レイヤーの描画モード」によって、レイヤーの重なり具合が微妙に異なっているので、画像合成にチャレンジする際にはぜひいろいろと試してみて下さい。

和紙の画像をレイヤーで重ねて、画像全体にテクスチャーをつける

⑨ 最後の味付けとして、スキャニングした和紙の画像を重ねて、紙の質感を出してみました。神社にキジ、鷹という全体的に和風の絵柄なので、和紙のかすれた質感を加えることで、さらに和のテイストを強調するという趣向です。使用したスキャナーはエプソン製ですが、最近のコンシューマー用スキャナーは非常にクォリティが高いので、私もときどき仕事で使用しています。


⑩ 和紙の質感を出す方法です。スキャンした和紙をグレースケールにして、さらに反転し、マスクとして利用しています。描画モードを「ソフトライト」にして、トーンカーブの調整レイヤーで透かし具合を調整します。

和紙以外にもテクスチャのある紙や布をスキャンしたり、あるいは他の写真をマスクとして利用することもできます。このような手法は写真の生っぽさを消して、ちょっと変わった質感を出したい時に使えます。雰囲気のある壁や雲の写真をマスクとして使用すると、普通のスナップ写真がアーティスティックに生まれ変わるので、ぜひ試してみて下さい。


⑪ 画像の中央から周辺に向かって紙の質感にグラデーションをつけたかったので、楕円形のグラデーションマスクを別に作ってトーンカーブで周りを焼き込みました。最後に全体を強い調子に色調調整して出来上がりです。

          ◆          ◆          ◆

これで私の「ペンタブレット入門講座」はおしまいです。ペンタブレットの機能について、あまり詳しく説明することはできませんでしたが、実際の作品制作を例にしながらの説明だったので、どういう場面でペンタブレットが有効に使えるのかについては理解してもらえたのではないでしょうか。

Photoshop等のグラフィック系のソフトはペンタブレットと組み合わせることで、より直感的な操作が出来るようになり、パソコンが本当の意味での道具になったと思います。ペンタブレットを使った作業は、もはや「操作」という堅苦しい言葉も似合わないほど、アナログ的な感覚に訴えかけてきます。

切り抜き用のパスを作成する時のペンの動き、筆圧感知機能を使って描くブラシワーク等は、一度使用すると、もう手放せないはずです。マウスしか触ったことのない人は、最初ペンタブレットの操作に違和感があるかもしれませんが、三日も経つと慣れてしまいます。以前にも書きましたが、私自身はペンタブレットもPhotoshopも、ほぼデフォルトの環境設定で使用しています。つまり、それだけ使いやすいということです。皆さんもまずは、お絵描きからペンタブレットを始めてみませんか?

北岡弘至 Hiroshi Kiataoka

デザイン事務所で印刷、製版を学んだ後、デジタルワークの個人事務所ガラバートを立ち上げ、有限会社GARABATOを設立。http://www.garabato.jp/

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