
プロフェッショナルを支える機材 & 装備たち
2026年2月、ミラノ・コルティナで開幕した冬季オリンピック。
IOC公式フォトエージェンシーGetty Imagesは、開会式が⾏われる2026年2⽉6⽇から閉会式の2⽉22⽇までの期間中、フォトグラファー、エディター、オペレーションスタッフを含む120名体制で臨み、600万点以上の画像を撮影・編集する。
ミラノ・コルティナ地域にある16の冬季オリンピック競技会場すべてをカバーするため、39名のエディトリアルフォトグラファーを配置、さらにロンドンのゲッティイメージズオフィスおよびリモート拠点から20名以上のエディターがリアルタイムで編集を⾏う。
さらに、独自ネットワークにより、撮影画像は最短30秒で世界へ配信される。
そこに写るのは単なる“速報写真”ではない。
光、構図、判断…そのすべてが研ぎ澄まされた一枚だ。
極寒、スピード、混雑、厳しい制限下という条件のもと、最前線でシャッターを切るフォトグラファーは、どのように瞬間と向き合い、どんな装備で臨んでいるのか。
この連載では、現地で撮影を担う3名のフォトグラファーに直接コメントを得ながら、作品・機材構成を通して、オリンピック競技撮影のリアルに迫る。
前回はゲッティイメージズのチーフスポーツフォトグラファー、Adam Pretty 氏(アダム・プリティ)が捉えた3つの競技での写真を紹介した。
第2回は、それらの一枚を支えた機材や装備を紐解いていく。
現場では、競技間の移動、気温差、長時間の待機、そして最短30秒での画像配信という条件が重なる。
機材・装備の選択には単なる好みではなく、明確な戦略があった。
「細かい作業を減らす」ための機材構成

カメラ機材は競技やポジションによって変わりますが、
基本はCANON EOS R1を2台、400mmまたは 100–300mm、1.4倍テレコン。
70–200mmは必ず持ち、28–70または28–105mm、さらに 15–35mmの広角。リモートを設置できる場合はPocketWizardも。
寒さはバッテリーを急速 に消耗させるので予備は多めに持ちます。
カード交換のたびに手袋を外すと一気に体温を奪 われるので、512GBや1TBの大容量カードを使って一日中撮影できるようにしています。
とにかく“細かい作業を減らす”ことが重要です。大きなレンズを使う時は背中を守るために一脚も使います。
Adam Pretty コメント

足元がすべてを決める

装備は、まずソックスから。これは本当に一番大事なアイテムです。
足元が暖かく快適だと、それだけで一日、そして夜の長いセッションも乗り切ることができます。極厚で保温性の高いメリ ノウールのソックスを使っています。
数日履いても問題ないですし、ダーンタフ( DarnTough)などが定番です。
同僚にも勧めたら「人生が変わった」と言っていました。ニーパッドも絶対に忘れません。雪や氷の上ではほとんどの時間を膝をついた姿勢で過ごし ます。
最高のアングルを探して不自然な体勢になることも多い。
これがあるかないかで、2 週間戦えるかどうかが変わります。Adam Pretty コメント

ブーツはハンワグ(Hanwag)のモンブラン(Mont Blanc)。
とても硬くて暖かく、どこか クラシックな存在感があります。ドイツ製で三重縫製、何年も履き続けられるので環境にも 優しい。
おそらく一生買い替える必要はないと思います。 アイゼンも常に持ち歩きます。
多くの現場で必須ですし、氷や雪の上でも確実にグリップし て安全に動くことができます。
グローブは薄手のものと、極寒・強風用の大きなミトンの両方を用意しています。
リヴィー ニョではまだ出番はありませんが、北京では本当に命を救ってくれました。
レザーパームの ものがカメラ操作には最適で、完全ではないけれど操作性と暖かさのバランスを取る必要が あります。
ハンドウォーマーも状況によっては救世主になります。指先の感覚がなくなるようなコンディションでは特に重要です。Adam Pretty コメント
“オーバースペック”が必要な理由


夜のセッションでは必ず極暖のダウンジャケットを持っていきます。
今年はミレートリロジー(Millet Trilogy)。驚くほど軽くコンパクトなのに、信じられないほど暖かい。
K2登頂 用に作られたモデルらしく完全にオーバースペックですが、長時間動かずに待機するオリン ピックの撮影ではこの“オーバースペック”が必要になります。寒さで集中力を失うわけには いきませんから。
Adam Pretty コメント
小さなエネルギー補給

スナックはあまり食べない方ですが、長時間のセッションに備えてチリチョコレートやナッ ツを少しだけ。
チリの辛さが体を内側から温めてくれて、集中力も保てます。
Adam Pretty コメント
【フォトグラファー プロフィール】

Adam Pretty (アダム・プリティ)
ゲッティイメージズ チーフスポーツフォトグラファー
1997年に『The Sydney Morning Herald』のニュースフォトグラファーとしてキャリアをスタートさせ、スポーツ写真に特化したいという強い思いから1998年にGetty Imagesへ移籍しました。Getty Images入社後は、シドニー、ロサンゼルス、北京、東京を拠点に活動し、現在はミュンヘン在住。
これまでに11回のオリンピックを撮影し、『TIME』『Harper’s Bazaar』『Sports Illustrated』『LIFE』『BILD』『Marie Claire』など世界各国の主要雑誌のために取材を行ってきた。
スポーツアクションおよびスポーツ・ルポルタージュの分野における第一人者として広く認められており、数多くの国際的な賞を受賞。また2010年と2017年には、アムステルダムで開催されたWorld Press Photoコンテストの審査員も務めた。
常に新たな挑戦と経験を求め、2007年には活動の幅を広げてスポーツ撮影と並行して広告撮影にも取り組み始め、近年では映像ディレクションにも進出。2023年には、パラリンピックおよび世界チャンピオンであるボー・クラマー選手のストーリーを描いたLumixのショートフィルムのディレクションで受賞。
広告、スポーツ写真、映像のいずれの分野においても、創造性と新しい発想によって人々の固定観念に挑み、見慣れた被写体を独自の視点で捉え続けている。
Instagram:https://www.instagram.com/adampretty/
ゲッティイメージズとオリンピック
gettyimages.com/collections/olympics
本連載一覧|ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピック 撮影最前線レポート
第1回|Adam Pretty 作品編
第2回|Adam Pretty 機材編
第3回|Dean Mouhtaropoulos 作品編
第4回|Dean Mouhtaropoulos 機材編
第5回|Ryan Pierse 作品編
第6回|Ryan Pierse 機材編

【特集】ブツ撮影の設計術
4人のフォトグラファーが撮り下ろす グラス撮影のアイデア&テクニック。光をどう設計し、どの角度から見せ、どこにフォトグラファーの発想を差し込むか。
その組み立ての違いによって、同じモチーフでもビジュアルは大きく変化する。岩崎幸哉、AKANE、川端健太、南雲暁彦の4名が、共通の被写体としてシンプルなグラスを撮り下ろし。四者四様の“設計術”から、ブツ撮りの現在地を探る。
【広告特集】
YK BROTHERSのグラフィックはどう生まれたのか
Netflix 「MAKE DRAMA」キャンペーン
【EXHIBITION REPORT 】
高木由利子 写真展 「Threads of Beauty 1995-2025 ― 時をまとい、風をまとう。」
【FEATURE 】
竹中祥平「ピンクとオレンジ」
【好評連載】
Create My Book -自分らしいポートフォリオブック- CP+2026 出張編 金村美玖と写真の「今とこれから」
写真を楽しむスペシャリストたち 中野敬久 Vol.13 児玉七美に聞くプロデューサーの役割
ゼウスのスチルライフマジック 高井哲朗 vol.61 蜻蛉の翅をイメージしたアート作品のようなバングル
長山一樹流 違いを生み出すコマーシャル・ポートレイト 第14回 スマホで撮るポートレイト
GLAY CREATIVE COLLECTION 2024- VOL.22 DVD・Blu-ray「The Millennium Eve 2025 LUNA SEA|GLAY」
フォトグラファー生存戦略 vol.37 もろんのん×黒田明臣 「シャッターと発信の両立で魅力を伝える」
ほか
