ボンドカーと消防車をスタジオで撮影
Photo&Words:Tetsuro Takai Photo:Kousei Kawai

高井哲朗が
スタジオスチルライフ撮影の
アイデアと 愉しみを 伝授
創造主ゼウスのように
光を操って 宇宙を創造しよう
スチルライフ それは あなたが
神になれる世界
明治大学理工学部3年の河合航世くん。クルマ好きで写真好き。
以前は中古カーディーラーの撮影のバイトもしていたとか。
今回はそんな河合くんの知り合いから、すごいクルマをお借りして撮影することになった。
場所はアガイ商事が運営する「i-studio川越(アイスタジオ)」。

航世が
「消防車 借りられるので撮りませんか?」
なんて 面白いこと 言ってきた
もう 思わず
いいね 撮ろう と決めた
川越にある アガイ商事のスタジオ
問い合わせしてみたら 消防車も サイズ的に 入りそうだったから
そこで 撮ることになった
あれ?
スタジオには また別の素敵な車
なんだ? 一緒に 消防車 撮るんじゃなかったの?
どういうこと?
この車 007シリーズの
「ワールド・イズ・ノット・イナフ」に登場した
ボンドカーでも おなじみの BMW Z8
5LのV型8気筒DOHCエンジンを搭載
パワフルで スタートから100km/hまで
わずか4.7秒の 超スポーツカー
オーナーからは
“じゃじゃ馬”感がある という声も…
オールアルミニウムのボディ
綺麗なカーブ 美しい車
どこから 手配したんだか? 恐るべし 航世の交友関係
学生なのに 高級車を撮影して
なかなかの撮影料 もらっていたと言う噂
自分もいいクルマ 乗っている
そんな彼が この機会に どうしても 撮ってみたいと
内緒で オーナーさんに 交渉してたみたいだな
さあ お手並み 拝見
ライティングの組み立て

ライト:❶〜❸broncolor Pulso G Head+Standard Reflector P70
カメラ:Nikon Z6 II
レンズ:AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED 1/100秒 f8 ISO100

ライトを点灯した状態。

面光源をつくり、ボンネットにハイライトを入れる。
ユポ下は黒布で覆い、床面の反射を消している。


シャドーを起こして、ライティングの完成。
ウィンカーライトは点滅しているため、点灯のタイミングで撮影。
ライティングの仕掛けをシャドーで潰して、最終仕上げ。

オーナーさんが川越のスタジオまで運転してきてくれた。
そんなすごいクルマを前に「どんなライティングで攻めるか」、
撮影の手伝いに来てくれた友人たちと検討中の河合くん(写真中央)。

ユポを貼り、その後ろからストロボ3灯で大きな面光源を作って、
ボンネットにハイライトを映し込む。
モデリングの光を見ながらユポの角度、ライトの出力を調整していく。

逆光気味に入れてグリルをシャープに描写する。
手前には黒ボードを置き、リフレクターから床面に広がる光をカットしている。

ライトの芯は画角から外して、周囲に広がる光でボンネット手前側のシャドー部を少しだけ起こす。
ZEUS’S STILL LIFE MAGIC

川越のスタジオまで
真っ赤な消防車で ドライブすることになった
運転は航世くん
本物の消防車だけど
赤色灯 サイレン スピーカー
表示灯 回転灯 徽章 無線機等の 緊急装備品は
取り外されています
車体などの名称表示も 消去した状態となります
ということだから サイレン 鳴らせないんだけど
真っ赤な消防車に乗ってる
それだけで 気分はあがる
もっと大きな車両も 中古で 買えるみたいだけど
相当な金額らしい
それにしても 消防車 買うなんて 素晴らしい
これで 幼稚園 お出迎えしたら
こどもたちの 注目の的だね
アガイ商事のi-studio川越は
天井が高く キャットウォークもあって
そこから消防車を見ると とっても 可愛い おもちゃみたい
楽しいね
さて どう撮るかな?
通常 クルマの撮影のときには
美しいカーブを表現するために 大きなボックスライト
アートレ 紗幕 などで 綺麗なグラデーション 作って
それを 車体に映し込ませていくんだけど
今回は 角張った車体だし 全て 赤だから
色が 鮮明に出るように ナマのストロボ光源を使い
グリッドをかませて 消防車の車体に ダイレクトに投影
グラデーション 作ることにした
燃え盛っていた 炎を 鎮静させた 状況
熱い地面から 煙がのぼる
その現場の熱気を 表現する
逆光の光を 部分的に使った
消防車の後ろから LEDライト 3灯
フルカラー 操作して 赤色 緑色
臨場感 高揚感 演出
ちっちゃい車体 小回りがきいて
狭い路地でも 素早く現場到着
見事に炎 消し飛ばす 我らが ヒーロー
可愛い 消防車
乗り心地は 最高だぜ
ライティングの組み立て

ライト:❶〜❹ broncolor Pulso G Head+Standard Reflector P70
(❸❹はHoneycomb Gridをつけている) ❺Aputure LS600c Pro ❻❼ amaran 300c
カメラ:Canon EOS R6 レンズ:EF24-105mm F4L IS USM 0.5秒 f10 ISO100

車両後部側面の広い範囲にあてている。


車両前部側面にあてた。


ラインティング完成。
本番はこの状態でスモークを焚いて、シャッターを切る。

フロントからストロボ4灯(写真赤丸)で、車体を描写する。

リフレクターを外した状態で床に直置きして、車体下に光を入れる。
ピンクの光は床面に反射して広がるので、スモークを焚いた時に効いてくる。

奥側のドアを開けてグリーンのライトを運転席にあてた。
このライトはカメラ側のサイドミラーにも映り込むように角度を調整している。

回転灯などの緊急車両機能は取り外されているため、LEDで透過光を入れて擬似的に点灯状態を演出。
自由に色を変えられるフルカラーLEDはこういう時、とても便利だ。

3人がかりでスモークを床に這わせて、本番撮影をする。
スモークの揺らぎと滲みが出るように、シャッター速度は0.5秒に設定した。

郊外型の広いスタジオで、天井高6.2m、車両搬入口もありクルマ撮影も可能。
河合くんとゼウス高井はこの消防車に乗って、東京からここまでやってきた。
高井哲朗
たかい・てつろう/1978年 フリーとして活動開始。1986年(株)高井写真研究所設立。広告写真を中心に活動するかたわら、ゼウスクラブを開催し、写真の可能性を伝導する。
www.kenkyujo.co.jp/
x.com/tetsurotakai
コマーシャル・フォト2024年10月号記事より
ゼウスのスチルライフマジック
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コマーシャル・フォトで好評連載中の「高井哲朗/ゼウスのスチルライフマジック」がMOOKとしてまとまりました。
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Vol.1
「ゼウスのスチルライフマジック
プロフェッショナルスタジオライティングのアイデアと実践」
Vol.2
「光を操るスタジオ・スチルライフ ライティングのアイデアと実践」


コマーシャル・フォト 2025年5月号
【特集①】
「ソニーα1 II×映画『SUNA』スチル&ムービーシューティング」
2025年5月公開を控える加藤シゲアキ監督映画「SUNA」。スチル・ムービーの撮影に使用されたソニーα1 IIの高画素、高感度耐性、AF性能を遺憾なく発揮した現場からレポート。(撮影:末長 真)
W主演を務める加藤シゲアキ・正門良規(A ぇ! group)がカバー&巻頭を飾る。
【特集②】
「フォトグラファーを目指す人のためのQ&A特集」
プロフォトグラファーがフォトグラファーを目指す人の素朴な疑問に答えます。撮影機材、仕事方法、ライフスタイルなどプロへの道を解説!
回答者:小暮和音/瀧本幹也/長山一樹/南雲暁彦/吉田明広/李 有珍
【連載】
長山一樹流 違いを生むコマーシャル・ポートレイト
「 ポートレイトisブラックアンドホワイト」
Create My Book -自分らしいポートフォリオブックを作る-
Vol.9 「風景写真」 金村美玖
ほか