2016年03月29日
CP+2016会期中に行なわれた「プロ向け動画セミナー」。一眼ムービーをテーマに、機材や撮影に関するプロの知識とテクニックが学べることで毎年人気のセミナーだ。今年も4人の登壇者によるセッションをそれぞれレポートする。まずは、各社の一眼レフ、ミラーレス一眼の動画機能を検証したフォトグラファー・鹿野宏氏のセッションをお伝えする。
人気のカメラをじっくりとテストする
みなさんこんにちは。フォトグラファーの鹿野宏です。今日は「一眼ムービーのためのカメラ・レンズ選び」と題しまして、各社の一眼レフ、ミラーレス一眼の動画機能を紹介していきたいと思います。
昨年の秋にこの企画が動き出し、実際にテストを行なったのが昨年末から今年の1月にかけてのことでした。各メーカーさんの協力を得まして、5社の機種を、同じ環境でじっくりとテストすることができました。こういった機会はめったにありませんので大変興味深く、いろいろな発見がありました。今日はその結果をみなさんと共有できたらと考えています。よろしくお願いします。
本題に入る前に、簡単に自己紹介をしておきたいと思います。私はフォトグラファーとして仕事をしておりますが、その傍ら、「電塾」というグループに長く関わって参りました。電塾は正式名称を「デジタルカメラ被害者友の会」と申しまして(笑)、デジタルカメラが大変高価だった時代から、それこそ数百、数千万円といった大金を投じつつ、自腹を切ってその特性を調査し、どうしたら仕事で使えるのか、さまざまな研究を重ねてきたグループです。
デジタルカメラが仕事で問題なく使えるようになった今も、写真や動画をその対象にしながら、研究を重ねております。詳細は電塾のWebサイトをご覧いただけたらと思いますが、毎月第二土曜に定期的に研究会を開催しておりますので、皆様も気軽にご参加いただけたらと思います。事前予約をしていただけましたらどなたでも参加できる会となっています。
さて、ここから本題に入りたいと思います。まずは、今回はテストしたカメラの紹介をしたいと思います。順不同で紹介をいたします。
今回テストに使用した機種
1. SONY α7R II
動画にも強いと言われるソニーのカメラですね。レンズには「FE PZ 28-135mm F4 G OSS」が装着されているほか、純正のモニターマイクもテストしました。
2. NIKON D800、D810
ニコンからはD5やD500といった注目の新機種が発表されていますが、ここでは動画機としても人気の2機種をテストしました。
3. CANON EOS 5Ds、5D Mark III
キヤノンからも4K撮影ができるEOS 1D X Mark IIや80Dといった機種が登場していますが、今回テストに使ったのは、高画素機のEOS 5Dsと定番の5D Mark IIIです。
4. OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II
オリンパスからは5軸手振れ補正などに特徴のある、マイクロフォーサーズ規格のカメラをテストしました。
5. Panasonic LUMIX DMC-GH4
現在、私がメインで使用しているカメラでもあるマイクロフォーサーズのGH4もテストに加えています。こちら4K撮影にも対応した機種ですね。
これ以外に、タムロンとコシナの明るく個性的なレンズや、外部レコーダー「ATOMOS NINJA ASSASSIN」、リニアPCMレコーダーの「Tascam DR-701D」なども用意していただきましたので、これらについても触れてみたいと思います。
ダイナミックレンジ特性をチェックする
さて、まずは各機種のダイナミックレンジ特性を見ていきたいと思います。私は動画の撮影で一番大事なのはダイナミックレンジだと思っています。映像の仕上がりを左右するのはもちろん、後々の調整を考えたときに影響が大きいと考えられる項目だからです。カメラプロファイルの特性なども合わせ見ながら確認していきたいと思います。
※なお、本文では便宜上「カメラプロファイル」と記述するが、各メーカーの機能名は以下のようになる。
キヤノン:ピクチャースタイル
ニコン:ピクチャーコントロール
ソニー:クリエイティブスタイル
オリンパス:ピクチャーモード
パナソニック:フォトスタイル
ダイナミックレンジの評価方法としては、濃度評価用チャートを撮影し、そのカーブの違いを見てみることにしました。ではさっそく、見ていくことにしましょう。
SONY α7R II カメラプロファイル「スタンダード」
画面のカーブの階段の様子を見ていただくとハイライトはガタガタ、シャドウは細かくつまっていますね。これはハイライトが飛びやすく、シャドウがつぶれやすいことを示しています。静止画(写真)ならいい仕上がりを期待できるのですが、動画ではちょっと困る感じですね。
SONY α7R II カメラプロファイル「ニュートラル」
同じソニーのα7R IIですが、今度はカメラプロファイルを「ニュートラル」に変更してみました。するとハイライトのガタガタがだいぶ落ち着いているのがわかります。先ほどよりもだいぶ使いやすそうなカーブです。
SONY α7R II カメラプロファイル「S-Log2」
今度は拡張設定の「S-Log2」を選んでみました。いわゆる「log」形式で保存した映像です。階調カーブがつまっていることがよくわかりますね。S-Log2は、広いダイナミックレンジを確保するためのカメラプロファイルで、ポスプロを前提にしたものと考えるといいでしょう。普段から映像を撮っているプロの方であれば非常に使いやすいカメラプロファイルだと言えると思います。ただし、使い慣れていない方にはちょっとハードルが高い結果になるかもしれません。これについては、後ほどあらためてお話をしたいと思います。
Panasonic LUMIX DMC-GH4 カメラプロファイル「スタンダード」
次にGH4です。私は普段から動画撮影用にこのカメラを使っているのですが、それはこの階調に理由があります。シャドウからハイライトにつながるこの階段が比較的均等なんですね。これは、後から映像のチューニングがしやすいということを示しています。
Panasonic LUMIX DMC-GH4 カメラプロファイル「ナチュラル」
同じGH4でも、カメラプロファイルを「ナチュラル」にして撮影してみると、ハイライトとシャドウともにそれほどつまっていないんですね。スタンダードとはちょっと傾向が違います。
Panasonic LUMIX DMC-GH4「Vlog」
オプションで追加して設定できる「VLog」です。階調は滑らかなのですが、かなりアンダーに見えますね。通常の露光で撮影するとかなりアンダーめに記録することで突然の強い照明にも対応可能だというLogの特性がよく見えます。
CANON EOS 5Ds カメラプロファイル「スタンダード」
次が5Dsの「スタンダード」。中間トーンの階段が非常に長いのが特徴ですね。静止画であればとてもいいカーブなのですが、動画では調整しにくいカーブなのでちょっと使いにくいかもしれません。
CANON EOS 5Ds カメラプロファイル「ニュートラル」
同じ5Dsでも「ニュートラル」はバランスが良く、とても使いやすい映像が撮れます。なお、5Dsには「ディテール重視」というプロファイルがあります。写真では素晴らしいポテンシャルを発揮しますが、動画にはあまり向いていないようです。ちなみに、私の感覚では、5D Mark II、5D Mark III、5Dsのカメラプロファイルの適用の具合は、それぞれにやや異なるように思います。併用する際には注意したほうがいいかもしれません。
NIKON D800 カメラプロファイル「スタンダード」
同じ「スタンダード」で撮った画でもD800で撮った場合と比べてみると、D810の方が階段の幅が広くなっているんですね。これは調整を前提とする「素材性」よりも、「作品としての仕上がり」を重視するようになった、ということを表しているように私は感じました。
NIKON D800 カメラプロファイル「ニュートラル」
D810の「ニュートラル」は、とても使いやすいカーブです。これまでニコンユーザーにはこのカーブを推奨してきた理由でもあります。それでもシャドウ部はやや圧縮されているのです。
NIKON D810 カメラプロファイル「フラット」
D810には「フラット」というカーブが登場しました。この カメラプロファイルは大変使いやすいと思いました。logほどの幅はありませんが、画像処理に耐える、扱いやすい動画が撮れます。とてもいいカーブなのでちょっとびっくりしました。
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II カメラプロファイル「フラット」
オリンパスOM-D E-M5 Mark IIの場合は、動画を選択すると自動的に「フラット」というカメラプロファイルを選択してくれるようです。ニコンのそれとはやや異なりますが、カーブを見るとおおむね同様の考え方で成り立っていることが解ります。ISO3200以上ではシャドウにノイズが残るのがやや残念ですが、これはセンサーサイズが圧倒的に小さいマクロフォーサーズの宿命といえるでしょう。ISO800〜ISO1600程度で撮影可能な通常の明るさであれば、非常に使いやすい優秀なカーブだといえます。
実際に撮影したときの印象をチェック
さて今度は、実際に撮影してみたときの印象を見ていきたいと思います。今回は、モデルの松本真央さんに登場していただいて、自然光の入るスタジオに5台のカメラを持ち込んで撮影をしてみました。特別な光のセッティングはしていませんが、ハイライトがややきつい光が入ってくる環境です。そんな中、それぞれのカメラはどんな映像を撮ってくれたのでしょうか。
CANON EOS 5Ds
まずは5Ds。パッと見てわかるようにメリハリの効いた画です。後で調整をすることなく、そのまま使うこともできるほど完成された画だと思います。
NIKON D810
ではD810はどうでしょうか。プロファイルには「フラット」を使っています。シャドウがほとんどつぶれずに残っていますね。後工程でも非常に使いやすいデータだと感じました。
SONY α7R II
次がα7R IIです。中間調は仕上がり感たっぷりで、このままでも使える印象ですね。ただし、シャドウなどはつぶれきっておらず後工程にも対応する。両方の特性を併せ持つ、よくできた画だなと感じます。
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II
オリンパスのカメラはムービー撮影の際にプロファイルが選べません。画の方はかなり軟らかく、バランスが良いですね。ただ、ハイライトがやや切れてしまっている印象があります。
Panasonic LUMIX DMC-GH4
プロファイルには「シネライクD」を選んでいます。私が自分で使っているカメラです。中間のトーンを伸ばさずにいてくれたらもっといいのにな、と感じますが、logを使わずとも、後工程で扱いやすい画を撮影できるという意味でよくできているなと思います。
ここまで見てきての全体の感想ですが、後工程を考えた「素材性」を重視するならばニコン系、撮影した画像をそのまま編集環境に渡したい、というならキヤノン系がいいのではないか、と感じました。
動体の撮影はどうか?
次に、動体撮影の様子を見てみましょう。妙なブレを起こしたりしないか、奇妙な挙動を示したりしないか、といった点を調査しようというわけです。ただし、結果から申しますと、どの機種もまったく問題なく動く被写体を捉えるということがわかりました。
昔は速い動きに問題が出てくるカメラもありましたが、今のカメラは問題のないところまで来ているというのが結論です。
テストしたカメラでは動きのある被写体を撮影する際に問題が出るようなことはなかった。
4K撮影のメリットとは
今年のCP+ 2016では4K撮影に対応したカメラがいくつも登場しましたが、今回取り上げたカメラの中で4K撮影ができるカメラはというと、α7R IIとGH4ということになります。実は、私はすでに4K撮影機能をかなりの頻度で使用しています。とはいえ、私の仕事では納品サイズはFHDや720Pであることが多く、4Kでの納品という例はほとんどありません。
それでも4Kで撮影するのはなぜかというと、4Kで撮影してFHDや720Pに「ダウンコンバート」すると、最初からFHDで撮影するよりも良い質感の映像になる、というのが一つ。
もう一つが「切り出し」に活用できるからです。4Kで全体の様子を広く押さえておいて、後からその一部を切り出してFHD映像として使うといった使い方です。たとえば、モデルさんの顔をアップでずっとフォローするようなケース。これは撮影の腕が良くないと、なかなか難しいんですが、4Kで広めの映像を押さえておき、編集時に顔を追いながら切り出すようにすれば、確実に、狙った映像を作ることができます。この方法は、特に、少人数で撮影するケースに適していると思います。
「log」撮影はどうか
さて今度は、「log」形式のデータについて見ていきましょう。ダイナミックレンジが広く、ハイライトが飛びにくく、シャドウがつぶれにくいと言われるlogデータ。ここでは、α7R IIでlog形式で録画をしてみました。まずはカメラ内で生成したlogデータを見てみます。
カメラ内で生成したlog形式の映像。
一言で表現すると、かなり鈍い感じの仕上がりですね。とはいえlogとはそもそもそんなもので、後からルックアップテーブルを当てることではじめて、キチンとした画に仕上がるというわけです。ただし現在のFinal Cut Pro Xではルックアップデーブルを当てることができないので、ルミナンスを見ながらチューニングをするということになります。このとき、肌のシャドウ部などはちょっと崩れてしまうことがあります。
そこで4K対応の外部レコーダー「ATOMOS NINJA ASSASSIN」を使い、ASSASSIN側でlog生成をしつつ、収録をしてみると、こちらの方が圧倒的に画質が良く、特に肌のシャドウのトーンの伸びが違いました。logを使う場合にはこうした外部接続のレコーダーを検討するのも良いかと思います。
logは確かに便利な機能です。「複数のカメラマンが撮影した映像を一人で編集する」ようなケースや、「屋外で天気が刻々と変わる中で撮影したデータを編集する」といった、後工程で色合わせが必須になるケースには欠かせない機能と言っていいと思います。ただし、その一方で、画を壊しやすいところもある。
人によりけりなのですが、私の経験ではlogではなく、リニアな階調を持ったプロファイルで撮影をしておく方が、後々うまくいくことが多いんです。慣れなどの問題もありますので、自分の良い方法を模索するのがいいのではないかと思います。
「スロー」撮影は?
次に「スロー」撮影について見てみましょう。今回扱ったカメラでは、α7R IIが720pながら120fps、LUMIX GH4が96fpsでのスロー撮影をすることができます。ただしα7R IIの方は、バッテリーや熱の問題などがあって、長時間の撮影はちょっと難しいようです。GH4はバッテリーと容量がある限り延々と撮れる。スローをそんなに長く撮ることがあるのか、という疑問はさておき、これはこれで便利に使えると思いました。
SONY α7R IIが120fps、LUMIX GH4が96fpsでスロー撮影をすることができる。
ISO感度と画質の関係は?
今度はISO感度について見ていきたいと思います。私自身は経験上、ISO6400までは使えるカメラが望ましいと感じています。高感度に強い機種というとSONY α7Sシリーズを思い浮かべるかもしれませんが、あれは特別な存在。普通のカメラでもある程度の高感度は使いたいところです。
あらかじめ触れておきたいのは、今回テストしたすべてのカメラで、ISO1600までは問題なく使えたということです。そこで今回は、そこから上を見ていきたいと思います。
SONY α7R II
ISO3200は問題ないですが、ISO6400はちょっときついと感じました。とはいえ、他のカメラに比べてかなりいいという印象です。ちなみに、静止画ですとISO6400はまったく問題ありません。静止画と動画ではちょっと結果が違うと考えておく方がいいでしょう。
NIKON D810
ISO1600はまったく問題ないですね。とても質のいい画像が撮れます。ISO3200は許容範囲かなと思います。6400もこれらの中ではできがいいですね。
CANON EOS 5Ds
ISO1600はとてもいいですね。暗部にムラムラもない。ISO3200もOK。ただし5Dsは5D Mark II、5D Mark IIIと比べて動画で高感度はちょっと落ちるかなという感じがしました。やはり画素数を非常に高めている機種なので、仕方ないのかもしれません。とはいえ、ISO6400でもそれなりに撮れているのはすごいですね。
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II
マイクロフォーサーズのE-M5 Mark II。センサーサイズが小さいこともあって、ISO1600が限度かなあという気がしました。3200はちょっと厳しい。6400だとコントラストが落ちてしまう。1600がバランスのいいところですね。
Panasonic LUMIX DMC-GH4
GH4もE-M5 Mark IIと同じような印象です。6400はちょっと辛い。やはりイメージセンサーが大きいカメラの方がダイナミックレンジが広いのだなと感じます。
というわけで、マイクロフォーサーズには厳しい結果となりましたが、自分一人で撮影に行くようなケースでは、軽くて小さいマイクロフォーサーズはメリットが大きいんですよね。こう言った事情も踏まえて、カメラ選びをするのが正しい選択だと思います。
個性派レンズを使ってみる
ここでレンズに注目してみたいと思います。一つはコシナのマイクロフォーサーズ向けの「NOKTON」シリーズです。F値が0.95という非常に明るいレンズです。扱いはちょっと難しいのですが、マイクロフォーサーズでもここまで綺麗にボケるのかと驚かされます。絞り値を無段階でコントロールでき、フォーカスも含めて非常に滑らかに動かすことができるのもいいですね。電気接点がないのでEXIF情報を得ることができなかったりするんですが、ほかにない、価値のあるレンズだと感じました。
コシナからリリースされている「NOKTON 25mm F0.95」をつけている(写真上右)。マイクロフォーサーズ用のレンズだ。
タムロンからは「SP45mm F/1.8 Di VC USD」をお借りしました。こちら35mmも出ていますね。シビアなピントが要求されるレンズですが、この単焦点レンズも独特の味わいがあり、雰囲気がとてもいいです。こういったレンズを使うことで、映像にアクセントを加えることもできるかと思います。ぜひ試してみてください。
タムロンからリリースされている「SP45mm F/1.8 Di VC USD」で撮影したもの(右画面のOM-D E-M5 Mark IIの表記は誤り。正しくはEOS 5Ds)。軟らかな描写が特徴だ。
手振れ補正は?
カメラを持って歩きながら撮影するような場合、また、狭い場所にカメラを入れて動かして撮りたいケースにはカメラの手振れ補正機能が役に立ちます。ここでは5軸手振れ補正を搭載しているα7R IIとE-M5 Mark IIをテストしました。2台を一つのプレートの上に乗せて、一体に固定してから撮影をしています。まずは本体の機械式手振れ補正に、電子式補正を加えて撮影した動画を見ていただきましょう。どうでしょう、なかなかのものではないでしょうか。これなら気持ちよく映像を見ることができますよね。
ただし、このまま歩き出すとちょっと気持ち悪い映像になります。電子式の補正が少しズレてから効くためでしょうか。後から追いかけられるような妙な感じがします。歩いて撮る場合は、電子式を切って機械式のみで撮る方がいいようです。
本格的なスタビライジングには一定の訓練が必要と言われていますが、これなら訓練なしでも、十分に使える画が撮れるのではないでしょうか。
5軸手振れ補正は効果的。ただし、電子補正は状況によってオン・オフを切り替えるべき。
両者を比較してみると、α7R IIの方が効果は強いように思えますが、E-M5 Mark IIは気持ち悪いブレをうまく抑えてくれる、といった印象です。両者はイメージセンサーの大きさなども違いますので、その辺りが反映した結果なのかもしれません。
なお、この撮影ではフォトグラファーの岩本朗さんにご協力をいただきました。岩本さんは自作でスタビライザーを作られている方です。彼のスタビライザーを使用して、機械式の手振れ補正と比較してみようというわけです。その結果は‥‥正直申しまして、スタビライザーの方が、カメラの5軸手振れ補正よりも、圧倒的に優れていました。岩本さんのスタビライザーの作り方はYouTubeにアップされていますので興味のある方はぜひ参考にしていただければと思います。
自作カメラスタビライザー-(自作ステディカム)Camera Stabilizer DIY Steadicam
NIKON D810の「フラット」と「ニュートラル」
さて、前半でも触れましたが、NIKON D810のプロファイルの違いについてもう少し詳しく見ていきましょう。D810に新しく搭載された「フラット」とD800の「ニュートラル」とを比較して、その特徴を見てみたいと思います。まずは実際に撮影した映像を見てください。こんな感じの差が出ます。
左がNIKON D810「フラット」、左がD800「ニュートラル」。
「フラットの階調特性([スタンダード][ニュートラル]との比較)」より。緑が「フラット」で黒が「ニュートラル」。
http://imaging.nikon.com/lineup/microsite/picturecontrol/jp/picture/flat.htm
合わせて、ニコンのホームページに掲載されている「フラット」(緑)と「ニュートラル」(黒)の比較カーブも掲載しました。これを見ると、ハイライト側は同じような曲線ですが中間調からシャドウ部にかけてのカーブが異なっていますね。フラットは引き締めが少なく、軟らかい感じであることがわかるかと思います。この状態ですと、シャドウをやや引き締めて、必要に応じて中間調のコントラストを調整するだけで仕上がりまで持っていくこともできるでしょう。
「フラット」は、自分で調整をしたいという方に適したプロファイルだと言えると思います。
EOS 5D Mark IIIと5Dsの違いは?
続いて、CANON EOS 5D Mark IIIと5Dsのどこに一番差があるのかについても見ておきたいと思います。まずは「動画サーボAF」。フォーカスを追いかけてくれる機能ですね。この映像はカメラまかせで撮っていますが、しっかりとAFが追従してくれています。これが、5Dsに搭載された動画サーボAFの力ですね。顔が画面に入るとさっとフォーカスを移動してくれる。実に素晴らしい機能だと思います。撮影時のいい助け舟になると思います。
EOS 5Dsと5D Mark IIIの大きな違いの一つが、動画サーボAFの有無。動く被写体への追従に差が出る。
音声について
さて、今回はカメラだけでなく、音声の収録に使う録音機もテストしました。ここではTascamのDR-701DというDSLR用のリニアPCMレコーダーを利用しています。なんといっても音がいい。カメラにマイクを接続して録音したものとは比べものになりません。録音の際に「自分の声が変だな」と感じた経験は誰にでもあると思いますが、それは機材がチープだからなんですね。DR-701Dのような機種で録音すれば、とげのない、ノイズもない、いい声を撮ることができます。同録などをする方には大変おすすめです。
カメラの下にあるのが、Tascam DR-701D。ちなみにアームで支えられているのはATOMOS NINJA ASSASSIN。
http://tascam.jp/product/dr-701d/
写真は録画時の様子です。音声と映像はATOMOS NINJA ASSASSINに保存されています。ASSASSINは6系統の入力ができるようになっており、もちろんタイムコードの共有も可能です。また、カメラの録画ボタンをトリガーにして、すべての記録をスタート・ストップするよう設定しておくこともできるため、ワンマンオペレーションが可能になります。録画チームが少人数の場合でもミスを減らすことができます。
ただし、一つ問題があります。それはTascam DR-701Dがバッテリーを食うということです。録音時間はせいぜい2時間くらいでしょうか。そこでモバイルバッテリーを活用することをおすすめします。ただし、どんなものでもいいというわけではありません。私は出力電流のコントロールがよくできていると言われるソニー製モバイルバッテリーを使用しています。
最近のカメラや周辺機器には、モバイルバッテリーが使えるものも少なくない。安定した電流が流れるもの、という条件付きだが、非常に強い味方になってくれる。
なおバッテリーというとα7R IIに触れないわけにはいきません。ご存じの方もいらっしゃかと思いますが、ことバッテリーの持ちについては少々苦しいものがあります。そこで役に立つのがモバイルバッテリーです。機種を選ぶ必要がありますが、α7R IIやα7S IIでも使えるものがありますので活用するといいでしょう。
ただし、一つ気をつけていただきたいのが、α7R II、α7s IIの場合、内蔵のバッテリーがない状態ではコントロールができないという点です。カメラ内蔵のバッテリーが十分ある状態で使うのが条件となります。
NIKON D500のショートプレビュー
先日、機会がありまして、発売前のニコンの新機種、D500に触ってきました。この画を見てください。この動画はISO51200の画なんですね。
NIKON D500、ISO51200で撮影したもの。
ちょっとざらついていますが、どうでしょう。なかなかいいのではないでしょうか。厳しく見てもISO6400では十分に使える映像が撮れました。ISO3200などほとんどノイズがありません。しかも、私が触ったのは、発売前のチューニング前の状態でした。発売時には、さらに良くなっていることが予想されます。手振れ補正も付いていて、暗いところにも強い。安価なカメラでここまでできるのは本当にすごいですね。
ムービー用レンズについて
先ほどタムロンやコシナのレンズを紹介しましたが、今度はムービー用のレンズのメリットを紹介しておこうと思います。これはSONYの「FE PZ 28-135mm F4 G OSS 」です。大きなレンズですね。電動でズームします。非常に滑らかに手動で動かすこともできます。この大きさゆえに安定した動作ができる、とも言えそうです。
SONYの「FE PZ 28-135mm F4 G OSS 」。ムービー用のレンズ。電動ズームを搭載している。
このレンズは静止画の基準で、周辺がどうだとか、フリンジがどうだとかいうレンズではありませんが、ムービー用に十分なクオリティがあります。これともう1本広角のズームがあればすべての撮影ができてしまいますね。
簡単に結論を
さて、そろそろ時間がきました。テストの結論を簡単に述べておこうかと思います。まず、基本性能を見るとニコンのカメラがとてもよくできているなと感じました。カーブやプロファイルの出来もそうですが、ファイル容量が小さく、にもかかわらずレタッチに強い画を撮ってくれる点にも感心しました。おそらく圧縮アルゴリズムがいいんでしょうね。
一方、キヤノンの5Dシリーズは、撮影してすぐに納品できる、そんなカメラですね。そういう撮影をするならベストではないかと思いました。
α7R IIとGH4は、テスト時点で4K映像が撮れる、数少ないカメラでした。logでの録画もできる。飛び道具を持ったカメラ、といった印象ですね。
E-M5 Mark IIはやはり5軸手振れ補正が魅力です。歩きながらの撮影、移動しながらの撮影ならこのカメラが選択肢に入ってくると思います。
では、どれを買えばいいのでしょうか。結局は、自身の使い方を考えながら、自分の使い方と合ったものを見つけるのがいいと思います。基本性能はどれもしっかりとしていますので、ご自身の表現と照らし合わせながら選ぶのがいいのではないでしょうか。
というわけで、お時間となりました。最後にちょっと宣伝を。こちらは今、私が作っているLED照明のテスト機なんです。3000ルーメンの、非常に明るいライトです。LEDは調色が難しいと言われているのですが、この照明の波長はブルーのみならず、オレンジから赤にかけての情報をもっています。これによって、牛肉と豚肉と、鶏肉の違いがはっきり出るんです。ご存じの方も多いと思いますが、今のLED照明では、この違いをはっきりと出すのは難しいのです。タングステン光に近い光だと言えるかと思います。現在鋭意開発中でして、名前もまだ決まっていませんが、1300ルーメン品は夏頃の発売を目指しています。6月ころには情報解禁となるはずですので、興味のある方はhttp://www.hellolab.com/をご参照ください。
以上となります。長い時間お付き合いいただき、ありがとうございました。
取材:小泉森弥