デジタルフォト&デザインセミナー2008

Adobe Session : こんな使い方もできる!Adobe Photoshop CS3/CS3 Extendedの超活用術とその先のアドビテクノロジー

講師:日下部徳彦 スペシャルゲスト:相原正明

日下部 みなさんこんにちは、アドビシステムズの日下部と申します。このセッションは「Photoshop CS3/CS3 Extendedの超活用術とその先のアドビ テクノロジー」というタイトルになっていますが、前半に「その先のテクノロジー」のLightroom 2.0について、後半にPhotoshop CS3活用術についてお話ししていきます。まずはLightroom 2.0の話ですが、このセッションのためにゲストをお迎えしました。フォトグラファーの相原正明さんです。

相原 よろしくお願いします。

日下部 相原さんは、今年4月に行なわれた「Adobe Photoshop Lightroom Adventure 2008」というイベントに参加されています。これは米国のアドビが中心となって開催したイベントで、世界から十数人のフォトグラファーがオーストラリアのタスマニア島に集まって、10日間の写真バトルを繰り広げるというもので、相原さんは日本代表として参加されました。こちらのスクリーンではそのときの相原さんの写真を上映していますが、この「Adobe Photoshop Lightroom Adventure 2008」はどんなイベントだったのでしょうか。

相原 いま日下部さんは写真バトルとおっしゃいましたが、BATTLEを通り越してWAR、戦争でしたね。毎朝5時に起きて夜7時くらいまで撮影し、その後写真をセレクトして現像、編集するという毎日。参加者は1日5カットを選んで提出することになっていて、深夜にその講評会が行なわれて、ようやく1日が終わるんです。

日下部 相原さんをはじめフォトグラファーの皆さんにはLightroomをお使いいただきましたが、使ってみての感想はいかがでしたか。

相原 私は1年のうち半分くらいオーストラリアで写真を撮っているので、タスマニアはいわばホームなのですが、「NATIONAL GEOGRAPHIC」や「VOGUE」で活躍しているフォトグラファーなどいろんなジャンルのトップが参加していましたので、イベント中はまったく気を抜けませんでした。とにかく撮影カットの量が半端ではなくて、10日間終わってみると、データの量が250GBになりました。Lightroomはそんな中でも手早く写真をセレクトできて、簡単に編集できて、スピーディに書き出せるので、本当に助かりました。おかげで撮影に集中することができたと思います。

日下部 相原さん、本当におつかれさまでした。このイベントの様子は、英文ですがこちらのサイト http://blogs.oreilly.com/adventure/ でも見ることができますので、みなさんもぜひご覧いただきたいと思います。さて、このイベントではLightroom 1.4を使っていただいたんですが、米国のサイトでは早くもLightroom 2.0 ベータ版が公開されています。今日はこの2.0 ベータ版の新機能をご覧いただきたいと思います。

まず一つめの新機能ですが、現像モジュールの中に筆の形をしたアイコンが加わりました。これが新しく追加されたブラシツールです。アイコンをクリックするとマウスカーソルが十字カーソル に変わるので、これで写真をなぞるとその部分の明るさが変わります。ブラシで塗った部分はマスクになっていて、その部分には目玉のような形をしたマーク が現れます。この目玉にカーソルを合わせるとマスクの範囲が表示されますし、目玉をクリックするとパネルが開いて、露光量や明るさ、彩度、色相を後から変更することができます。

二つめの新機能としては、Lightroomがついにデュアルモニターに対応しました。この機能をオンにしますと、新しいウインドウが現れますので、これを2つめのモニターに移動します。いままで写真を一つ選んで作業しているときは他の写真を選ぶことができなかったのですが、2.0 ベータ版では1つめのモニターで現像しながら、2つめのモニターで別の写真を選ぶことができるようになりました。2つめのウインドウのLIVEと書かれたボタンをクリックすると、フィルムストリップをマウスでなぞるだけで写真が高速に切り替わっていきます。

Lightroom 2.0 ベータ版のブラシツール

それから三つめの新機能としてはスマートコレクション。これは条件をあらかじめ指定しておくと、その条件に一致した写真が常に表示されるという機能です。たとえば「ラベルカラーは赤」「レーティングは星3つ以上」「撮影日は1ヵ月以内」という条件を指定しておくと、その条件で絞り込まれた写真が常に表示されるので、いちいち検索する手間が省けるというわけです。

日下部 Lightroom 2.0 ベータ版には他にもいろいろと新機能があるのですが、今日はとりあえず3つに絞ってご紹介しました。相原さん、これらの新機能をご覧になっていかがでしょうか?

相原 写真のデジタル化が加速していますので、フォトグラファーの現場はよりスピードが求められています。Lightroom Adventureでは朝から夜まで撮影して、その後セレクト、現像の作業をしていましたが、デュアルモニターやスマートコレクションがあったら、より簡単に写真を選ぶことができたでしょうね。それからオーストラリアは日差しが強いので、写真のコントラストが強くなってしまいます。それをカバーするため撮影時はハーフトーンNDフィルターなどを使っているのですが、ブラシツールで後から部分的に明るさを変更できるのであれば、そのあたりはソフトに任せてしまって撮影に集中することができると思います。コントラストの強い被写体とか、彩度の高い被写体が多い風景写真ではすごく重宝する機能だと思います。

日下部 現在公開中の2.0ベータ版は英語版ですので、メニューは英語ですが、日本語のファイル名にも対応しております。日本語版の時期に関しては今の段階ではお話しできないのですが、それほどお待たせしないうちにリリースしたいと思っています。既存のLightroomユーザーの方は製品版が出るまでの間、バージョン1.xのシリアル番号で使用できますし、新規ユーザーの方も30日間試用できますので、Adobe Labsのサイト http://labs.adobe.com/ からぜひダウンロードしていただきたいと思います。

相原 さっそく私も使ってみたいと思います。

日下部 さて、ここからの後半では、Photoshop CS3のまだあまり知られてない機能についてご紹介したいと思います。まず、クイック選択ツール。これは切り抜きたい部分をブラシでなぞるだけで範囲を選択できる機能で、皆さんもすでにご存知だと思いますが、ちょっとしたTIPSをご紹介します。クイック選択ツールではよく、余計なところまで膨らんで選択されるケースがありますが、それを防ぐためのTIPSです。


まずクイック選択ツールで人形の真ん中あたりをなぞる

次にOptionキー/Altキーを押しながら、人形の周りをぐるっと囲っていく

クイック選択のブラシで人形をなぞると、先ほどの部分を避けて選択される

たとえば、この人形を切り抜きたいとします。まず、クイック選択ツールで人形の真ん中あたりを軽くなぞります。この段階ではまだ人形全体は選択されていません。次に、ここからがポイントですが、MacでしたらOptionキー、WindowsでしたらAltキーを押します。するとブラシのカーソルが から に変わります。この状態で選択したくない部分、人形の周りをグルッと囲っていきます。人形に当たらないようにブラシを動かしていって…はい、できました。このとき、見た目には特に変わりはありません。ですが、Photoshopの内部では、選択したくない部分がどこなのかを認識しています。次に、OptionキーやAltキーから指をはずすと、カーソルはまた に戻ります。この状態で人形をなぞっていきます。すると、さきほど囲った部分を避けて選択されるようになります。クイック選択ツールで余計なところを選択したくない場合のTIPSでした。

次にご紹介するのはZoomifyという機能です。最近のデジタルカメラは画素数が非常に大きくなっていますので、そのままだとメール添付で送れないことがあります。そのときに使っていただきたいのがこの機能です。ファイル>書き出し>Zoomify を選びますと、HTMLファイル、Flashのswfファイル、それからJPEGが入ったフォルダが書き出されます。このHTMLをWebブラウザで開いてみると、さきほどの画像が表示されます。このZoomifyの面白いところは、画像の下のコントローラーを動かすと、細部まで拡大表示できるところです。ファイルサイズもかなり小さくなりましたね。高解像度の画像をメールで送りたいとき、あるいはeコマースやメーカーのWebサイトで商品のディテールを見せたい時などに有効な機能だと思います。


CS3 ExtendedのVanishing Pointでは、立体面を3Dファイルとして書き出すことができる

書き出した3DファイルをCS3 Extendedの3Dレイヤーに読み込んだところ

それからVanishing Point。画像の中に建物の壁面が写っている場合など、その折れ曲がった面に沿って3次元的にパースをつけながら、別の画像をペーストできるという機能です。この機能はCS2から搭載されていますが、CS3 Extendedでは、Vanishing Pointの立体面をテクスチャ付きで3Dファイルに書き出すこともできます。この3Dファイルを、Photoshop CS3 Extendedの3Dレイヤーに読み込むと、まるで3次元CGのように上下左右に角度を変えることもできるのです。

このほかにも、CS3 Extendedの3Dレイヤーやアニメーションパレットなど、もっと詳しくご紹介したい機能はたくさんあるのですが、残念ながら時間が来てしまいました。アドビのWebサイトには、CS3の機能を詳しく解説したコンテンツがありますので、ぜひそちらをご覧になってください( http://www.adobe.com/jp/products/photoshop/pscs3/ )。それでは最後にもう一度、ゲストの相原さんに拍手をお願いいたします。

写真:日下部徳彦

日下部徳彦 Norihiko Kusakabe

アドビ システムズ  マーケティング本部 デザイングループ フィールド マーケティング マネージャー

写真:相原正明

相原正明 Masaaki Aihara

1958年東京都出身。日大法学部新聞学科卒。7年半のサラリーマン生活の後、パリダカールラリーを目指し、そのステップとしてオーストラリアへバイクでの砂漠縦断に行くが、そのままオーストラリアの虜になる。現在はフリーカメラマンであり、フレンド・オブ・タスマニア (親善大使) としても活動中。 http://aiharap.exblog.jp

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