イベント・スクール・公募展

対談「自分の言葉で作品を語り、伝える力を重視するGRAPHGATE」選考委員 梶川由紀 × 新保朋也(キヤノンマーケティングジャパン)

SHINESに引き続き、GRAPHGATE選考委員である 何必館・京都現代美術館キュレーター 梶川由紀氏と新保氏にSHINESでの経験を踏まえて、GRAPHGATEで目指すもの、応募者に期待することを改めて語ってもらった。

GRAPHGATEtaidan01-2.jpgGRAPHGATE選考委員 梶川由紀氏(何必館・京都現代美術館キュレーター)と新保朋也氏(キヤノンマーケティングジャパン)。

新保氏がGRAPHGATEの企画経緯と意図を語る 前篇インタビュー記事はこちらから↓
https://shuffle.genkosha.com/event/other/10776.html



──梶川さんはGRAPHGATEの前身であるSHINES第1回目から選考委員として参加されていますね。

新保 梶川さんとは友人の写真家のご紹介でお会いしたんですよね。まだSHINESの構想段階の頃、選考委員としてご協力いただける方を探していて、お話を伺っていたんですよ。


梶川 新保さんから「写真家を応援するコンテストを始めたい。写真家として生きていくためには、どんなことが必要だと思いますか?」と尋ねられたのをよく憶えています。

私がパリの写真美術館立ち上げにキュレーターとして参加していたこともあって、海外事情についても質問を受けましたよね。

その時、世界の舞台で活躍するには、自分の言葉でプレゼンできる能力が必要不可欠だと思います」と答えました。新しいコンテストを立ち上げるなら、作品だけの選考でなく、プレゼンで伝えるという要素を含めたコンテストがいいんじゃないかとお話したら、新保さんも既にそういった考えをお持ちで盛り上がってディスカッションしましたよね。


新保 いろんな方に話を伺っていると、自分の写真を語れる人が少ないという声が多かったんです。写真の持ち込みの場でも、自分では何も話さず「写真が語ってくれます」と黙ってしまうとか。

やっぱり、写真家が確固たる決意や言葉を持たずに活動するのは、厳しい。もし脚光を浴びるチャンスに恵まれたとしても、その後の作家活動や仕事は続いていかないのではないかと。

そんな考えを巡らせていた時、梶川さんからお話を伺って、改めてプレゼン能力は重要だと確信し、写真家の創作意欲を発表できるオーディションにしようと決断しました。

その後、梶川さん含め8人の選考委員にご協力いただき「写真家発掘オーディションSHINES」が生まれました。2017年のことです。そしてこの度、2023年それを発展させた形でGRAPHGATEがスタートするわけです。



選考委員は作家を世に放つ「仲介者」


新保 私はGRAPHGATEの強みは、選考委員の皆さんだと思っていて。選考委員は良作を選ぶ先生ではなく、仲介者のようなイメージなんです。

アートならキュレーターが、広告写真ならアートディレクターが写真を選定して、世の中に広げるように、様々な業界で活躍されている選考委員が、写真家を発掘してご自分のフィールドで新しい才能を紹介していく。そうすることで社会とつながり活躍の場も広げられると思っています。

GRAPHGATEueda.jpgSHINES第1回入選者 上田 優紀氏写真集「空と大地の間、夢と現の境界線 ―EVEREST―」(玄光社)。エベレスト登頂成功に至るまでの写真をまとめた作品集。


GRAPHGATEmumuko.jpgSHINES第2回入選者 夢無子氏写真集「DREAMLESS 夢無子写真集」(玄光社)。キャッチコピーは「コロナ禍の世界を写真の力で変える、大型新人の写真集」。


新保 実際、SHINESでは入選者が受賞後に世に出るスピードがとても早かったんですよ。選考委員の紹介で、雑誌に作品掲載していただいたり、入選者の上田優紀さん、夢無子さんは写真集を出版されました。

夢無子さんはそれをきっかけに、昨年GUCCIのビジュアルを担当されています。選考委員の方々のご尽力も大きいと考えています。

最終的にはキヤノンMJがグランプリを決定しますが、その手前の優秀賞決定のタイミングで選考委員それぞれに「私の推し!」として選ばれることが一番大切だと考えています。



巧いプレゼンテーションでなくていい

梶川 SHINES選考委員の経験で面白いなあと感じたのは、受賞後の入選者やファイナリストや選考委員とのつながりなんです。これは他のフォトコンテストでは見られないことかもしれません。

京都にいる私のところまで新作を持って来てくださったり、展覧会のキュレーションを依頼してくださったり、悩みの相談役になったり。

入選者やファイナリストは最終審査プレゼンの舞台に立ったことで連帯感が生まれるんでしょうね。選考委員側もプレゼンを通してその人を知り、一生懸命伝えようとする姿を見てるからか自ずと、できることがあれば役に立ちたいと思うんですよね。

選んだ側、選ばれた側の隔たりがなく、フレンドシップが培われている感じです。私にとっても幸せなことですが、応募される方にとっても参加する一番のご褒美ではないかと思います。


新保 ありがとうございます。受賞後のバックアップは必ずしも約束されているわけではありませんが、想いを伝える、それを受けるという関係があるからこそ、生まれるつながりなのではないかと思っています。


──そうなると、プレゼンテーションは重要ですね。

梶川 でも、プレゼンが苦手だからといって、応募を躊躇しないでいただきたいんです。

完成されたプレゼンでなくても、自分の想いや広くいえば哲学や情熱を持って語ってくれる人に出会いたいと私は思っています。自分の言葉で語ってもらって、私も皆さんの言葉にちゃんと耳を澄ませたいと、思います。


新保 饒舌でなくとも、応援したい、一緒に何かやっていこうよ、と思わせる魅力を持った人はいらっしゃいますよね。

作品や活動への想いは、一次選考書類で確認はできますが、やっぱり実際に会って話すことで、伝わるものだと思います。



自分のGATEを切り開け


梶川 GRAPHGATEって「GATE」という単語が入っているじゃないですか。応募者それぞれが自分のGATEを切り開いていく感じがとてもいいと思っています。

まず応募を検討するところから、シリーズや作品を選んで見せ方や見られ方を考える。自ずと自分の作品や自分自身と向き合う機会になると思います。

そのひとつひとつのGATEを1つずつ開けながら進んでいくイメージです。その過程に学びや気づきがたくさんあるはず。

そしてもし最後にプレゼンの舞台に辿り着いたらそこには未知のGATEが! そんなふうに捉えてもらえたらいいなと思っています。


新保 応募者の方々が、それぞれに自分のきっかけを作ってくれたら嬉しいです。第1回GRAPHGATE でどんな作品や人に出会えるのかとても楽しみにしています。







新保氏がGRAPHGATEの企画経緯と意図を語るインタビュー記事はこちらから↓
https://shuffle.genkosha.com/event/other/10776.html



梶川由紀(かじかわ・ゆき)
何必館・京都現代美術館キュレーター。パリのヨーロッパ写真館(MEP)設立にキュレーターとして携わる。帰国後、何必館・京都現代美術館にて写真部門を立ち上げ、アンリ・カルティエ-ブレッソン、サラ・ムーン、エリオット・アーウィットなど、国内外の展覧会をまとめる。写真集の編集も手がける。

新保朋也(しんぼ・ともや)
キヤノンマーケティングジャパン フォトカルチャー推進課。国内・海外でのカメラのマーケティング従事後、ギャラリー運営や写真家のサポート業務を経験。写真家オーディションSHINESの企画立案。現在はGRAPHGATE担当。

【GRAPHGATE 応募概要】

【募集期間】

2023年4月3日(月)~2023年6月30日(金)



【応募と選考の流れ】

1 応募

GRAPHGATE Webサイト応募フォームに創作活動歴や今後の計画等を記入し作品と共にデータ提出。写真作品は「ピープル」「ネイチャー」「クリエイティブ」から、映像作品は「ムービー」をそれぞれ選択。


2 一次選考 (データ審査)

データ審査で佳作候補以上を選出。


3 二次選考(プレゼンテーション審査)

ポートフォリオの提出、作家本人によるプレゼンテーション。各選考委員がそれぞれ1名選出し、部門を問わず合計で最大5名を優秀賞として選出。


4 GRAPHGATE展(作品展示)

二次選考で決定した優秀賞の作品、佳作者のポートフォリオをキヤノンMJギャラリーで展示。2023年11月予定。


5 グランプリ選考会(展示&プレゼンテーション審査)

二次選考通過者(優秀賞受賞者)はキヤノンMJ本社(東京・港)にて一般公開プレゼンテーションを実施。グランプリの最終決定権はキヤノンMJ。2023年11月末予定。


【応募費用】
無料


【Webサイト】
https://cweb.canon.jp/event/photo/graphgate/







関連記事

powered by weblio