【第2回】レタッチで鼻と口元〜その周辺を整える基本ワザ

解説:濱中英華(ヴォンズ・ピクチャーズ レタッチャー)

今回の第2弾は、人物レタッチをする上でチェックすべきポイント・濱中メソッドの4〜7。鼻と口元〜その周辺を整えていきます。

16箇所のチェックポイント・ ・ ・ここで、無駄なく進めるコツをひと言!

1つ1つを完璧に仕上げてから次に行く。というよりは、ざっくり駆け足で16項目やってみて、さらにやった方が良いものはもっと詰めていく。

…というのが程良い仕上がりとなります。常にバランスを見ながら進めましょう。

VONS pictures Original Photo Story II

ではさっそく…鼻から見て行きましょう。

4/a…
鼻筋はすっきりがきれいです!
(鼻筋をすっきりさせたことでその人の個性が失われるのなら…そのままキープがbetterです)

4/b…
鼻のアタマの毛穴や産毛など、なじませます。ハイライトのツヤ、残しましょう。
(ハイライトのツヤ、テカリに見えたら抑えてもOKです)

4/c…
鼻下~口元に掛けてのシャドウは整理します。また微妙なクスミがあったら取りましょう!(あまり複雑な印象にならないようにします)

サンプルで見ていきましょう。

4/a.
鼻筋はすっきりがきれいです!

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4/b.
鼻のアタマの毛穴やぽつぽつ、なじませましょう。ハイライトのツヤはキープです!

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4/c.
微妙なクスミ、なじませましょう!

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⿐下のシャドウはトーンカーブで調整します。1枚のトーンカーブで仕上げようとせずに、何枚かのトーンカーブを組み合わせて、複合ワザで消していきます。

▼1:新規調整レイヤー等でトーンカーブを作成したら、トーンカーブウインドウの「⼿のアイコン」をONにします。

▼2:画像の明るくしたい部分にスポイトマークを合わせると、そこがカーブのどのポイントなのかが確認できます。
そのポイントを明るい⽅向にスライドします。

▼3:1個⽬のカーブと使⽤したマスクはこちら。 ※マスクはエアブラシで描きます。

▼4:1個のトーンカーブでなじませられなかったら2個⽬のカーブを作成。エアブラシで同じくマスクを描きます。

▼5:徐々になじんできましたね。今度はシャドウに囲まれて明るい部分が⽬⽴ってきたので、逆に暗くしてなじませます。

【ちょっとブレイク リップの話

リップの色や質感、実は重要なんですよ。トレンドがあるので知っておくと良いでしょう。2019年現在は、ティント系のリップが流行っていますので、今回もリップティントを使用しています。

マットもしくはセミマット、そして透明感がある仕上がりというのが主流です。そして今年は赤系が流行ですね。などなど…レタッチャーはその時のメイクのトレンドもしっかり把握しておく必要があるのです!
逆に言うと、流行を知らなかったとしても、注意深く見ていると、その時のトレンドが不思議と分かってきますよ!!

5/a…
ほうれい線は1本でよい! この人ならではの…というのでない限り、2本目は整理しましょう。長いほうれい線、短くしてOK。
(ほうれい線は消しすぎると別人になります。存在はするがシワの深さを弱める、線でなくハイライトと影のみで表現する、などいろいろなやり方で調整しましょう)

5/b…
もしも“重力で落ちた頬やそれを支えるほうれい線”を見つけたら…元の位置に戻してあげましょう。

5/c…
リップの縦ジワはなじませます。目指すは縦ジワ抑えてふっくら仕上がり!

サンプルで見ていきましょう。

5/a.
ほうれい線、なじませつつ 短くします。

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5/a.
ほうれい線、シワの深さを和らげましょう。線というより陰影で表現すると上級者!

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★5/a・5/b.
ほうれい線を短くするだけでなく、ゆがみツールで、ほうれい線や頬、ついでに口角上げもしちゃいます!

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5/c.
リップの縦じわ抑えます。ふっくらを目指しましょう!

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「ゆがみフィルター」を使って引き上げます。重力に逆らって持ち上げるイメージです。この手の調整に万能なのが、ゆがみフィルターです。
「前方ワープツール」を使用します。

「ブラシツールオプション」
ブラシサイズなどは、画像サイズによりますが、実際にスライダを動かして体感してみてください。

1発で仕上げるやり方と、細かく徐々に理想形にもっていくやり方と2種類あります。前者はブラシサイズ大きめ、後者はブラシサイズ小さめで行ないます。場所によって向き不向きがあります。ちなみに今回は後者で修正しました。

ゆがみフィルター「顔⽴ちを調整」は、程よく⾃然に⼝⾓を上げたり⽬の⼤きさを調整したりできるので、とても使い勝⼿が良いです。細かな調整を数値で管理できるのがとても便利です。

下に掲載する「before & after」を見てみてください。短時間でとても自然な仕上がりになります。何度もやり直してみたり、カタチを悩んだりしないようになりました。

★5/a・5/b.
もう少しやりたいところを抑えてほどほどにするのがコツです。やりすぎると別⼈になっちゃいます。。

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6/a…
歯の長さがマチマチ、ガタガタ歯、不自然にならないように長さを多少整えてOK!

6/b…
鋭く先の尖った歯、少しコワイです。目立たないように。

6/c…
歯によって暗かったり明るかったり(ライティングや角度にもよりますが)、特に前歯の2本は同じくらいの明るさ&色に!

6/d…
適度に白く! あくまでも適度に。歯を真っ白にしてそこだけ目立ってしまわないように気を付けます。歯茎は健康的な色を目指します。

6/a・6/b.
できるだけ⻭がガタガタしないように調整します。⼋重⻭が鋭かったら少し柔らかく!

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今回の最後のチェックポイント…残り1つです。頑張りましょう。あごです。

7/a…
あごの正面は意外と大切なポイント! ここをやりすぎると一気に嘘っぽくなるので大切な場所です。あごの立体感、大事にしましょう!

7/b…
ニキビ、吹き出物ができやすい場所なので、それは取りましょう!

7/c…
横向きのカットなど、二重アゴには要注意!!! あごと首の境界線、欲しいですね。

サンプルで見ていきましょう。

7/b.
ニキビ跡&吹き出物系は、消しましょう。

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★7/c.あごと⾸の境界を出してスッキリ!

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「前方ワープツール」を使用します。

今回もゆがみフィルターを使⽤します。なるべく⼤きいブラシを使⽤します。

【ちょっとブレイク 寄ったり引いたり】

ずーっと目一杯アップの状態にして目などをレタッチしていて、いざ引いて見たらつるんつるんになっていて…

「わー、やりすぎた!」って時、ありますよね。そういうことがないように、寄ったり引いたりして仕上げていきます。寄って1分作業したら引いてみて、また寄って、を繰り返します。

引いて何を見ているかというと、全体のバランスなんですね。最終の仕上がりのサイズが小さいものでしたら、引きの状態での作業のみで完結しても良いかもしれません。

それでは、イメージカットの鼻、口元、歯、あごのチェックポイントを修正してみましょう。

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before & afterで確認すると、整った印象になっているのが分かりますね。この後は、どこまで整った印象にしていくのか、というディレクションに関わってきます。

それでは今回はここまで。次回は髪の⽑、もみあげ、⽿、おでこ&頬、のチェックポイントを解説していきます。


スタッフリスト
Art Director:石川翼(VONS Pictures)
Photographer:片岡竜一(VONS Pictures)
Stylist:廣田美保子
Hair & Make-Up:宮澤結弦
Retoucher:濱中英華(VONS Pictures)
Producer:高橋永利香(VONS Pictures)
出演:喜野ベリ・初音ナチ


ヴォンズ・ピクチャーズ VONS pictures

撮影、画像処理、3DCG、動画など、異なる技術を融合して広告ビジュアルを提供する制作会社。

コマーシャル・フォト 2025年7月号

【特集】レタッチ表現の探求

写真を美しく仕上げるために欠かせない「レタッチ」。それはビジュアルを整えるだけでなく、一発撮りでは表現しきれないクリエイティブな可能性を引き出す工程でもある。本特集では、博報堂プロダクツ REMBRANDT、フォートンのレタッチャーがビジュアルの企画から参加し、フォトグラファーと共に「ビューティ」「ポートレイト」「スチルライフ」「シズル」の4テーマで作品を制作。撮影から仕上げまでの過程を詳しく紹介する。さらに後半では、フォトグラファーがレタッチを行なうために必要な基本的な考え方とテクニックを、VONS Picturesが実例を通して全18Pで丁寧に解説。レタッチの魅力と可能性を多角的に掘り下げる。

PART1
Beauty  石川清以子 × 亀井麻衣
Portrait  佐藤 翔 × 栗下直樹
Still Life  島村朋子 × 岡田美由紀
Sizzle  辻 徹也 × 羅 浚偉

PART2
フォトグラファーのための人物&プロダクトレタッチ完全実践
講師・解説:VONS Pictures (ヴォンズ・ピクチャーズ)

基礎1 フォトグラファーが知っておくべきレタッチの基本思想
基礎2 レタッチを始める前に必ず押さえておきたいポイント
人物レタッチ実践/プロダクトレタッチ実践

ほか