徹底検証・高画素デジタル時代のレンズ

アオリができる超広角レンズ「ニコン PC NIKKOR 19mm f/4E ED」を徹底検証する

茂手木秀行

はじめに 〜 高画素デジタル時代のレンズとは?

レンズが光の像を結ぶさまは、子供の頃の記憶として誰の心にも強い印象として残っているのではないだろうか。それとも自分が写真を生業とするからだろうか。現実の光景を複製し、空想の世界への入り口とも見えるそのさまは、幾つになっても、輝かしく大切なものに思える。そんな夢を運ぶ道具がレンズなのだといつも思うのだ。

レンズは写真家の心のさまを映し出す。時にそれは精神性の象徴である。しかし、製品としてのレンズは、あくまで現実を光の像として複製する道具であり、その正当な進化はひたすらに正しく現実を複製することだ。収差という光学的瑕疵を消失させることに全てが集約されている。つまり、無収差を目指すということだ。

一見それは、精神性の象徴であるレンズとは違うものであるように見える。すなわち全てのレンズが無収差であるならば、レンズというプロダクトに精神性を求めようもなくなるのではないかという論議だ。写真のあり方において、そこに映ったものが写真家が過ごした時間と態様の記録であると考えるならば、無収差を目指すレンズは正しい。

写真とカメラを語る時に、ひとによって、「このレンズでなければ撮ることができなかった写真」と考えるのか、「写真家が過ごした時間そのものを写真と捉えて、レンズはそれを正しく受け止めるための道具」と考えるかという違いがある。それは「味のある描写のレンズ」と「無収差を目指すレンズ」という対比で語られてきた。そしてそれは、写真としてはどちらであっても魅力的だ。

今後のことはわからないが、収差のまったくないレンズは存在していないはずだ。評価の高いレンズは残された収差のバランスが人の視覚にとって心地よい描写となっていることだ。かつて味のある描写と言われたレンズたちは、いくつかの収差がバランスよく強めに残ることで個性を獲得していた。

一方、21世紀 高画素デジタル時代のレンズは、デジタルの特性に合わせるとともに、高度な設計が可能となったソフトウェアやその知見のおかげで、残存収差は激減し高い解像力となる反面、味というべきものは薄れたようにも思える。しかし、その認識は本当なのだろうか。 

デジタルカメラのセンサーも単位面積当たりの感材解像度がフイルム並みになってきた昨今、レンズの評価はより微細な点を楽しむように変わったと思う。フイルムのように感材に厚みを持たないデジタルにはイラジェーション(強い光がフィルムに当たると本来の像の周囲まで感光して像がにじむ現象)がなく、その再現はクリアだ。それゆえに収差の微小な差異や解像力の違いをわかりやすく示してくれる。多くの場合特別な計測をしなくてもモニターで見るという行為によって再現性を得ることもできる。

筆者はそのように仔細にデータを見ることによって、「デジタル時代のレンズは味を失ったのではなく、より少ない収差の中の高度なバランスによって特性を作り、そのレンズが持つスペックに対して整合性を持つような描写を意図的に作っている」という印象を感じてきた。もっともわかりやすくいうならば、「味を失ったのではなく、特性がよくコントロールされた」のだ。

今回から始まるこの連載では、数多あるデジタル時代のレンズの特性を知る一助とするべく、筆者が注目するいくつかのレンズを紹介していきたいと思う。


アオリが可能な超広角レンズ「ニコン PC NIKKOR 19mm f/4E ED」

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第1回目は「ニコン PC NIKKOR 19mm f/4E ED」を取り上げる。ニコンのFXフォーマット機のイメージサークルカバーする単焦点レンズであり、FX機に装着時には対角線で97度の画角を持つ。EDレンズ採用によって色収差を抑え、超広角レンズでありながら写野周辺まで高い解像力を持つ。

名称のPCは「Perspective Control」の略である。光軸をセンサーに対して傾けることによって物体の歪みを補正したり、光軸を平行に移動させてセンサーに映る範囲を変えることができる。この機構のため、イメージサークルはFX機に必要とされるより広く、およそ60mmのイメージサークルを持っている。一般にアオリとも呼ばれ、建築物やインテリアの撮影で正対した写真を撮るのに多く用いられる。

img_product_lens_1_2.jpg img_product_lens_1_3.jpg

シフトした状態

スイングした状態

この連載では毎回、取り上げるレンズの特徴を活かしながら筆者が写真作品を撮影し、実際の画像サイズでも見られる形で掲載する。記事の前半では、その作品をどのように撮影したのか、作品の意図と技術的な側面の両方から解説を行い、後半では実写画像を用いた詳細な検証によって、そのレンズの特性を明らかにしていきたいと思う。


新しい風景としての"聖地"

img_product_lens_1_5.jpg ※画像をクリックすると別ウィンドウで元データを表示

第1回目の被写体は霊岸島水位観測所である。筆者の仕事場近くであるが、なかなかのオブジェクトであり、いつも目につき折あるごとにカメラを向けてしまう被写体だ。最近では、アニメ「3月のライオン」の"聖地"としても人気のスポットである。やはり、東京はいわゆる"聖地"の多さはダントツであるそうだが、ドラマやアニメを通して映し出される風景は、多くの人に何らかの記憶や情動をもたらすものであるだろう。

さて、撮影は十分に解像力と被写界深度を稼ぐため、絞りF11とした。そしてこのレンズの特徴であるアオリ機能を使用した。カメラを被写体に正対し、仰角を5度程度に納め背景のビル群の歪みを抑えた。すると、画面に占める地面の割合が多くなりすぎてしまうため、それを補正するため、レンズを上方に平行移動するとセンサー面における結像位置は下方に移動するが、投影されているのは逆像であるため、結果としての映像も上方に移動し地面の割合を減らし、ちょうど良いバランスの構図とすることができた。

img_product_lens_1_4.jpg ※クリックすると別ウィンドウで元データを表示

左にアオリ機能を使用していない写真を掲げるが、この際には地面と空のバランスを整えるためにはカメラの仰角を上げなければならない。20度程度の仰角でちょうどバランスの良い構図となるが、背景のビル群は広角歪みのため上窄まりの画像となる。

この方が広角レンズらしい遠近感で動きのある構図となるが、筆者が狙っているのは「傾いた光の柔らかい静けさ」であるので、このカットの表現よりも、上掲カットの静かにまとまった表現が好ましいのだ。イラストのように意識してまとめた感じが光と合っている。

さて、アオリ機構のレンズ移動量からして、仰角を0度にして背景のビル群の歪みをなくすことも可能だ。しかし、その場合は上方に広角歪みが発生するので、被写体は上に強く引き伸ばされて落ち着きがない。よって、このバランスに落ち着いたのだ。


「ニコン PC NIKKOR 19mm f/4E ED」のレンズ特性

この連載における画像の評価方法について最初に明らかにしておこう。

レンズの評価をするにあたって、カメラやソフトウェアにおける要因を減らすため、撮影はRAWデータで行い、Photoshop Camera Raw Pluginで現像を行うものとする。その際、露出、ハイライトやシャドウのトーン、WBなど絵作り、カラーコレクションに関わる項目は調整するものの、レンズの解像感に関わる項目、シャープ、ノイズ、明瞭度、色収差補正、周辺光量、歪曲補正などの項目はデフォルトとし、それらを増減する調整はしないこととする。特に必要があってそれらの補正を行う場合は、その項目と調整内容を明記することとする。

また、レンズの収差やボケの変化をより詳細に捉えるため、極力解像度の高いカメラを使用することとし、解像力、ボケ、周辺光量について実写画像にて評価をする。

もう一つ、ピンホール光源に対する焦点内外像も撮影し、実写画像評価の際の参考にしたいと思う。焦点内外像という用語はあまり知られていないと思うが、その意味するところも含めて記事の後半でまとめて解説する。

img_product_lens_1_6.jpg
解像力の実写評価はアオリを使用していない画像で行った。赤丸印の2箇所、中心付近と周辺だ。緑はボケの変化を評価した箇所。


レンズ中心部の解像感 ※画像クリックすると別ウィンドウで元データを表示

img_product_lens_1_7.jpg
f4

img_product_lens_1_8.jpg
f5.6

img_product_lens_1_9.jpg
f8

img_product_lens_1_10.jpg
f11

画像はRAWデータをCamera Raw Pluginで表示し1600%に拡大して画面キャプチャーしたもの。イメージ的にはA2くらいにプリントしてそれをさらにルーペで覗いたようなものだ。

単体で見ればf4開放で十分シャープである。しかし比較すればf5.6で明らかにシャープ感が増す。f8に絞るとさらにシャープ感が増すが若干である。f11では小絞りボケの影響を受け始めているが実質的にはf8と変わらないとしてよいだろう。f4からf5.6に絞る時に球面収差と軸上色収差が減るはずであるが、この1段絞る分での変化がf5.6からf8の変化よりも大きかった。

f4ではf5.6に比べコントラストが低く甘く見えているが、十分解像はしているので、コントラスト、明瞭度、シャープの調整によって、f5.6のシャープ感に近づけることも十分可能だ。実用上で判断するなら、後処理を伴わない場合、f5.6、f11で最良の結果を得ることができる。後処理を前提とするならf4で問題なく、f11あるいはそれ以上に絞っても、極めてシャープな画像を得ることが可能である。


レンズ周辺部の解像感 ※画像クリックすると別ウィンドウで元データを表示


f4


f5.6


f8


f11

周辺部は600%に拡大した。中心部ではf4からf5.6に絞る時に急にシャープ感が増した印象であるが、周辺では、f4からf8までは一段絞るごとに比例してシャープになってゆく。f8とf11はほぼ変わらない描写となっており、f11でも高周波の解像力がきちんと維持されている。


ボケの連続性 ※画像クリックすると別ウィンドウで元データを表示


f4


f5.6


f8


f11

ボケの検証もCamera Raw Pluginで表示した。ただし拡大率は100%で評価した。また、超広角レンズであるので、後ろボケを生かした作画をすることは実最適でないと考え、前ボケのみを評価した。ピントは後方のビル群に合わせている。

どの絞りでもボケ自体がざわつくことなく、落ち着きのあるボケ方をしている。f4の時には、距離に応じたボケ量の変化も比例的で自然な距離感の描写となっている。f5.6になると被写界深度が少し深くなる分、奥の方がシャープに見えてくるので少しではあるがボケが急に始まる印象になる。f8、f11では最も手前のボケ量も減るので、ボケ量変化はまた比例的になる。


周辺光量 ※画像クリックすると別ウィンドウで拡大

img_product_lens_1_19.jpg
f4

img_product_lens_1_20.jpg
f5.6

img_product_lens_1_21.jpg
f8

周辺光量の検証は空を大きく取り入れた別カットで行った。f8でビネットがなくなり均質な光量が得られた。f4、f5.6とも、周辺光量の落ち方は穏やかで比例的であるので、作画に活かしやすい。f4とf8で比べると明らかであるが、f4では周辺が落ち込むことで自然と画面中心部を目立たせる効果となっている。筆者は、周辺光量落ちは歓迎すべき作画の手段であると考えている。


全般の評価

中心部の解像力、周辺部の解像力、ボケの連続性、周辺光量の4点から評価するとf8及びf11で全視野にわたって瑕疵のない画像を得られる。

f5.6では少しの周辺光量落ちがあるが、全視野において不足のない解像力を示すので、シャッタースピードを優先したい場合に有効な選択だ。同じことはf4でも言えるが、中心部のほんの少しの甘さはシャープや明瞭度の調整が必要である。以上は瑕疵のない画像、例えていうなら細密な描写を求める場合の評価である。

一方、ボケや周辺光量落ちを積極的に活かした感情表現、あるいは叙情的表現においてはf4時のボケの推移の仕方、滑らかな周辺光量落ちは、大口径単焦点レンズにはない、シャープな解像感と滑らかな描写の共存を見せている。


焦点内外像の観察で、後ろボケと前ボケの傾向の違いを知る

焦点内外像という言葉はあまり耳慣れない言葉だと思う。これを観察することは天体望遠鏡の性能を簡易に、視覚的に把握するために用いられる方法であり、望遠鏡好きにはよく知られているものだ。星を視野中心に導入し、ピントを合わせれば無限遠から来た光の点として結像する。そこから少しピントをずらすと同心円状の像を観察できる。さらにピントをずらすと円盤状のボケとなる。下の画像はその模式図である。


焦点内外像の模式図 

← ピントをずらした状態

ピントのあった状態

反対側にずらした状態 →

img_product_lens_1_22.jpg

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img_product_lens_1_24.jpg

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img_product_lens_1_22.jpg


img_product_lens_1_22.jpg

img_product_lens_1_23.jpg

img_product_lens_1_24.jpg

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上の列は無収差に近い場合、下の列は何らかの収差が残存する場合


上の列も下の列も、真ん中がピントのあった位置である。左右がピントをずらした状態だ。上の列ではピントが合ったところを挟んで左右が対象であるが、下の列では対象になっていない。ピントをどちらの方向にずらしても、ボケ方が対称である時はその光学系は無収差に近い。また、少しボケた時の像が同心円の軸にズレがなければ、それはレンズや鏡筒の組み立てなど工学的にも瑕疵がないことを示している。

それに対して、ボケ方が対称とならず、少しぼかした時の同心円像が、等間隔ではなく、縁だけが明るくなってしまったり、同心円が形成されないことがある。この場合は、何らかの収差が残存している場合であり、概ね球面収差の残存が支配的だ。ピントが合った時よりも外側の像の同心円が等間隔でない場合は、球面収差の補正が足りない。逆に内側の同心円が等間隔にならない場合は、球面収差の補正が過剰である場合だ。いずれの場合もさらに大きくぼかすと、ボケは円盤状ではなく、縁の明るさが強いリング状になる。 

これらの現象は、当然写真用レンズでも観察できるものだ。しかし、写真用レンズでは天体望遠鏡よりも、圧倒的に焦点距離が短く拡大率が低くなることと、星のような無限遠からの光束ではなく、有限距離からの光束を扱う場合がほとんどなので、少しピントをずらした時の同心円が確認できないことも多い。しかし、より大きくぼかした場合は、写真で見慣れたボケであり、円盤状であるか、リング状でであるかによって、レンズの描写の傾向が変わってくる。

焦点内外像において合焦位置より内側の像、すなわち「焦点内像」は写真の場合の前ボケに相当し、外側の像である「焦点外像」は後ろボケに相当する。内外像が非対称となった場合、前ボケと後ろボケは違うボケ方をするということだ。ボケ方の形状は、円盤状かリング状かの2種類だが、単一のボケと捉えるのではなく、ボケが重なり合って画像を作ると考えると実際の画像をイメージしやすい。


ボケが集合した場合の模式図 

img_product_lens_1_27.jpg

上図左は、リング状ボケが集合した場合、右は円盤状ボケが集合した場合だ。現実の被写体では夜景における光源だけでなく、例えば人物の背景でボケる草原などを想像してもらいたい。

リング状のボケが重なると、リングの部分がより強く重合するため、多くの場合ボケががさついて見える。電線など細い線がボケた場合などは、2本の線に別れて見える2線ボケなどを引き起こす。対して円盤状のボケであれば落ち着いたボケに見えるのだ。つまり、焦点内外像が非対称である場合、後ろボケと前ボケの傾向が変わるということだ。

上掲の話を繰り返すが、焦点外像が、つまり前ボケがリング状である時は球面収差の補正が不足である傾向にあり、合焦面のシャープ感はやや甘く、しかし、後ろボケは自然な円盤状である傾向になる。逆に、焦点内像が、つまり後ろボケがリング状である時は、球面収差の補正が過剰であるが、合焦面のシャープ感は良好となる。しかし、後ろボケはリング状がガサつく傾向、前ボケが自然な円盤状となる。 

以上のような傾向を焦点内外像から見て取れる。数値化できてはいないが、実写画像の傾向を予測したり、追認するには十分に役立つ情報となる。

ここでは球面収差の過不足をボケの変化の要因としているが、ボケの変化の結果は他の収差とのバランスの上に成り立つものである。また、撮影距離が変わることによって収差の量も変わっていくので、やはり最終的には実写画像が最も的確に結果を表すものである。


写野中心部と周辺部の焦点内外像を観察する

白色LEDにピンホールを取り付けたものを、およそ1.5m先に設置し、ピントリングを遠近に送ることで、焦点内外像を得た。本レンズの特徴は「アオリ」機構であるが、そのため通常のレンズよりも大きなイメージサークルを持っている。数値で考えると、通常レンズなら44mm程度、本レンズでは60mm程度となる。このテストでは「アオリ」機構のうち、シフトを最大に使い直径60mm程度のイメージサークルの中の55mm強の位置での焦点内外像を評価した。これは通常のレンズに対するものよりも厳しい評価条件であることを断っておく。評価はCamera Raw Pluginで600%に拡大表示して行った。


写野中心部 (f4) ※画像クリックすると別ウィンドウで元データを表示

img_product_lens_1_28.jpg
外像:後ろボケ

img_product_lens_1_29.jpg
合焦点

img_product_lens_1_30.jpg
内像:前ボケ

写野中心部は、f4時の画像だけを評価した。合焦位置では大変にシャープな像を結ぶ。外像は明らかなリング状、内像は円盤状なので、「解像感が高く、後ろボケが2線ボケ傾向になる」と予測できる。外像の同心円が階段状であるのは、切削非球面の研磨跡を示していると思われる。


写野周辺部 (f4) ※画像クリックすると別ウィンドウで元データを表示

img_product_lens_1_31.jpg
外像:後ろボケ

img_product_lens_1_32.jpg
合焦点

img_product_lens_1_33.jpg
内像:前ボケ

写野周辺部は絞り値を変えて評価した。f4時において、合焦点が膨らんでいるのはコマ収差、非点収差のためであるが、残存収差は少ない。内像、外像とも欠けたようになっているのは口径食によるものであり、周辺光量落ちの原因である。ボケそのものは双方とも弱いリング状であり、「前後ボケともに比較的素直なボケ像を得られる」と予測できる。

写野周辺部 (f5.6) ※画像クリックすると別ウィンドウで元データを表示

img_product_lens_1_34.jpg
外像:後ろボケ

img_product_lens_1_35.jpg
合焦点

img_product_lens_1_36.jpg
内像:前ボケ

f5.6では、f4と同様の傾向を示す。口径食が随分と減っていることがわかる。ボケ像の周りには倍率の色収差が見えているが、これらはCamera Raw Pluginで除去できる。量としては極めて少ないと言える。


写野周辺部 (f8) ※画像クリックすると別ウィンドウで元データを表示

img_product_lens_1_37.jpg
外像:後ろボケ

img_product_lens_1_38.jpg
合焦点

img_product_lens_1_39.jpg
内像:前ボケ

f8になるとほぼ口径食の影響がなくなる。合焦点はコマ収差によって伸びているが極めてシャープである。また内外像がより均質になっており、「ボケ量は少なくなるものの、前後ボケとも素直なボケ」が期待できる。


写野周辺部 (f11) ※画像クリックすると別ウィンドウで元データを表示

img_product_lens_1_40.jpg
外像:後ろボケ

img_product_lens_1_41.jpg
合焦点

img_product_lens_1_42.jpg
内像:前ボケ

f11では、f8とほぼ同じ結果である。


焦点内外像まとめ

焦点内外像の観察から、「中心部は前ボケと解像感を優先、周辺部では前後ボケとも素直な描写である」ことが予測できる。後ろのボケ量が小さくなる超広角レンズでは、前ボケの素直さを優先するのは大変リーズナブルであると言える。これらの結果は十分に、風景を実写した結果を追認することができた。


(2017年7月26日追記)
焦点内外像の記述において、「焦点内像:後ろボケ」 「焦点外像:前ボケ」としていた部分がありましたが、正しくは「焦点外像:後ろボケ」「焦点内像:前ボケ」 です。本文はすでに訂正ずみですが、お詫びして訂正します。


写真:茂手木秀行

茂手木秀行 Hideyuki Motegi

1962年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、出版社マガジンハウス入社。雑誌「クロワッサン」「ターザン」「ポパイ」「ブルータス」の撮影を担当。2010年フリーランスとなる。1990年頃よりデジタル加工を始め、1997年頃からは撮影もデジタル化。デジタルフォトの黎明期を過ごす。2004年/2008年雑誌写真記者会優秀賞。レタッチ、プリントに造詣が深く、著書に「Photoshop Camera Raw レタッチワークフロー」、「美しいプリントを作るための教科書」がある。

個展
05年「トーキョー湾岸」
07年「Scenic Miles 道の行方」
08年「RM California」
09年「海に名前をつけるとき」
10年「海に名前をつけるとき D」「沈まぬ空に眠るとき」
12年「空のかけら」
14年「美しいプリントを作るための教科書〜オリジナルプリント展」
17年「星天航路」

デジカメWatch インタビュー記事
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/culture/photographer/

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