2012年05月15日
プロフェッショナルフォトプリンタのキヤノン PIXUS PRO-1は、プロの様々なニーズに応えるポテンシャルを備えている。そこで、フォトグラファー白鳥真太郎氏、プリンティングディレクター小島勉氏の2人にじっくりと使い込んでもらい、その実力について語ってもらった。
黒い部分が濃く引き締まって表面の光沢が均一になった
僕が長年愛用していたプリンタは、銀塩ペーパーに出力できるピクトログラフィーです。フィルムで撮ってもデジタルで撮っても、最終的にピクトロでプリントすれば、自分にとっては写真と同じ。それくらい惚れ込んで使っていました。
でも、そのピクトロもついにドナーとペーパーが供給されなくなった。いよいよインクジェットに乗り換えなければと思っていたところに、ちょうどこのPIXUS PRO-1が出てきました。
プリントでは黒の中のディテールをすごく重視していますが、その点PRO-1はこれまでのインクジェットにはない表現力を持っています。クロマオプティマイザーのおかげで黒が濃く見えて、写真品質に相当近くなった気がします。
インクジェットはどんなにいい紙を選んだとしても、写真の質感ではなく印刷物にしか見えないという印象がありました。プリントを少し斜めから見ると、インクの濃淡によって光沢がばらついて見えてしまう。写真家として印画紙に対する偏愛があるので、どうしてもそこに違和感を拭えませんでした。でもPRO-1のプリントは光沢のムラがほとんどない。これは見事だと思います。
上の作品は、白鳥氏のライフワークである「DNA」シリーズ中の1枚。今回のために撮りおろしていただいた。カラーで撮影した画像をAdobe Photoshopでモノトーンに変換し、PIXUS PRO-1でプリント。用紙は、キヤノン写真用紙・光沢 プロ[プラチナグレード]を使用している。
プライベートの作品でいま取り組んでいるのは、「DNA」シリーズといって、才能を引き継いで表現やアートの分野で活躍している家族のポートレイト。今回撮りおろした作品では、平幹二朗さんと平岳大さんを撮らせてもらいました。
モノクロプリントを作ってみましたが、肌のトーンや暗部のディテールが非常にきれい。「DNA」はこれから長く撮り続けていくシリーズなので、作品づくりという点で素晴らしいツールを手に入れることができたと思います。
広告制作者の一員だからこそプリントの品質にこだわりたい
仕事の写真も何枚かプリントしてみました。キヤノン写真用紙・光沢 プロ[プラチナグレード]で出力しましたが、モニタの色ともぴったり合いますね。ピクトロのペーパーは少し青みがかっていて印刷物と印象がズレることもありましたが、これからはそういう悩みもなくなりそうです。
写真はやはり光沢紙が基本ですね。仕事の場合は特にそう思います。印刷の紙によって写真の見え方は変わってしまいますが、少なくともデータ的には黒の100%から白の100%まであることを証明する必要があるわけで、光沢紙の色見本プリントは欠かせないものです。
最近はデータだけを納品してプリントをつけない人もいると聞きますが、僕は写真家であると同時に広告会社にいたから、広告では制作者のチームの一員という意識がある。最終の印刷物が出来上がるまでは、きちんと自分で責任を取りたいので、プリントの品質にはこれからもこだわり続けていきたいと思っています。
商品に関する詳しい情報
キヤノン PIXUS PRO-1 ホームページhttp://cweb.canon.jp/pixus/lineup/a3pro/pro1/
白鳥真太郎 Shintaro Shiratori
資生堂宣伝部写真部、博報堂写真部(現博報堂プロダクツ)を経て、白鳥写真事務所設立。写真集「白鳥写真館」「貌 KAO 白鳥写真館」発刊。ADC制作者賞、APA賞他、受賞歴多数。