撮影:蒲生ヒロマサ(UN)/解説:黒川隆広
演色性の向上、フルカラー対応ワイヤレスコントロールなどなど日進月歩のLEDライト。
今回は蒲生ヒロマサ氏(UN)の協力の下3月に発売されたAputure社の新型ライトリフレクタータイプのamaran 60x S、100x S、200x S、チューブタイプのamaran PT 1c、PT 2c、PT 4cを使い、スタジオでのスチル&ムービー撮影の検証を行なった。
Cut04:スチル撮影
それぞれのライトの光を見る
Cut05:ムービー撮影
チューブタイプのamaran PTシリーズ 解説:黒川隆広
PTシリーズは長さ30cm、60cm、120 cmのチューブ型マルチカラーLEDライト。
RGBWWのLED素子を搭載し、フルカラー光の再現が可能。
色温度も2,700Kから10,000Kまで対応する。
最大の特徴は、LEDの特性を活かした多彩な発光設定。
前述したフルカラーの調色だけでなく、色を変化させながらの
点滅とその点滅間隔の調整、レインボーカラーなどの設定が、
アプリを介して簡単にできる。
USB充電式、他のライトのような発熱もないので、手持ちも可能。
自由度の高いセッティングができる。
蒲生ヒロマサ×黒川隆広
「LEDライトの可能性を語る」
黒川 最近はブツ撮りのスタジオでも、商品のスチル撮影と一緒に動画を撮る機会が増えてきました。だけどこれまでは静止画で使うストロボと、CM撮影などでよく使われるHMI(太陽光に近い光成分の定常光ライト)では、同じ表現ができないという問題があった。そこで今回は、以前からスチル撮影、動画撮影を手がけ、HMI撮影の経験も多い蒲生君に、Aputureの新型LEDライトを使ってもらったわけですが。
蒲生 同じライトでスチルとムービーを撮れるというのは、便利ですよね。HMIは熱の問題があって、被写体に近づけての撮影ができない。今回の時計のような小さな被写体でストロボのようにグラデーションをコントロールしようとしても、HMIはライトの熱でディフューザーの乳白アクリルが溶けてしまったり、化粧品の撮影では口紅が汗をかいてしまったり、色々と苦労があったから。
黒川 リフレクタータイプの「x S」はサイズが小さいのもいいですよね。本体のサイズだけでなく光自体がコンパクト。通常のストロボは「人物も撮れて、ブツも撮れて…」というサイズだから、時計のような小さな被写体の撮影には、光が大きすぎるんですよ。それにリフレクターを付けて光の状態を見ると、ちゃんと光に芯がある。ブツ撮りの場合、乳白アクリルのボード越しに光をあてることが多いけれど、光に少し芯がある方がハイライトの中にグラデーションを作ることができていいんですね。多分、これまでのストロボの光質をきちんと研究して、開発したんじゃないのかな。
蒲生 手元のアプリを使って全体を見ながら光をコントロールできるのも魅力ですね。ライト100台まで管理できるんでしたっけ? すごいですよ。ストロボでもワイヤレスコントールができる機種はあるけれど、ストロボの場合、モデリングライトとストロボの発光って、光のまわり方とかが違うじゃないですか。それを僕らは経験値で補ってきたけれど、LEDならホントに「見たまま」が撮れる。アプリ画面のスライダーで出力を調整するのですが、クリックじゃなくて10%、20%って指先で感覚的に光をコントロールできるというのも、自分には合っていた。
黒川 その辺は慣れですよね。チューブ型のPTはどうでした?
蒲生 長い直線的なハイライトを入れるのに、昔は蛍光灯のキノフロライトをよく使っていましたよね。ブツ撮りでは、こういう形のライトがあると便利ですよ。ソフビの撮影では長さの違う3本のPTを使って、未来的な空間を作ってみたけれど、ビニールの質感を上手く再現してくれました。カラフルなソフビと色がぶつかってしまうから、今回はあえて白色光のみで撮影したけれど、チューブの色も自在に変えられる。
黒川 スマホで、色を拾う機能は凄いですよね。
蒲生 いわばカラーメーターを内蔵したライト。たとえば夕日の浜辺にロケに行って、その夕焼けと同じ色の光を補助光として入れられる。他のライトと組み合わせて使うときも、ライトの色を合わせて撮影ができます。
黒川 そこが一番のメリットですよ。
蒲生 これで水中でも使えるようになると、面白いと思うけれど。
黒川 年に何度、そういう撮影があるかわからないけれど。
蒲生 でも、PTはそうした撮影のアイデアが色々と沸いてくるライトですね。
黒川 瞬間撮影や、ストロボと定常光の併用でブレを作るなど、ストロボでしかできない表現はありますが、LEDなら静止画と動画が同じ表現で、シームレスに撮影できます。だから、これまでストロボを使い「ライティング力」で一発撮りの写真を撮ってきたスチルライフのフォトグラファーにこそ、LEDを使って動画撮影に挑戦して欲しいと思うんですよね。
蒲生ヒロマサ
1986年 (株)ハヤサキスタジオ入社。1989年(株)アーバンパブリシティ(現amana)入社。2001年 (株)アン設立。人物、商品、料理、飲料、それぞれの魅力に合わせたスタジオライティングを得意とする。
黒川隆広
amanaにて30年間、商品撮影を中心に活動。2016年退社後、アライアンス社員として連携。現在は大手ECサイトの商品撮影講座開催、写真の学校特別講師他、セミナー、イベントで写真の学びの場を提供。個別レッスンも開催。
株式会社 アン
今回、撮影協力をお願いした蒲生ヒロマサ氏が代表を務める「UN」(アン:UN.inc)は、
2001年4月設立。広告を中心とするビジュアル制作会社として培った技術と経験を活かし、
現在、プロデューサー3名、フォトグラファー8名、レタッチャー2名の体制。
「欲しくなる、触れたくなる、心に響く写真映像をめざす」をモットーに、
商品から人物まで静止画・動画の撮影を行なっている。
東京都港区芝大門2-11-4
URL www.un-photo.com
Mail contactsuru@un-photo.com
コマーシャル・フォト2023年5月号記事より