Canon New Body Impression 03

キヤノンが誇るNeural network Image Processing Tool(ニューラルネットワーク画像処理ツール)が、EOS R5 Mark II内で作業可能となった。
その中でも、ニューラルネットワークノイズリダクションとニューラルネットワークアップスケーリングが可能になったことにより、いかに表現の可能性を広げることができるのか。フォトグラファー・川内章弘が未来を探る。

Costume Cooperation
(カット1、カット2) アシンメトリーリブニットトップス、ラインストライプロングスカート/LIENCOEUR アクセサリー/VATSURICA 
(カット3) 白ワンピース/AULA AILA アクセサリー/VATSURICA

ST=ヤマダタカノブ(CUBISM) HM=遠山祐紀 T=山田愛奈

EOS R5 Mark II +RF85mm F1.2 L USM  1/8000秒  F6.3 ISO8000
EOS R5 Mark II +RF85mm F1.2 L USM  1/250秒  F2 ISO250

同じシチュエーションでのニューラルネットワークノイズリダクションを反映して仕上げたISO8000のカット1と、ISO250で撮影したカット2。(いずれも色味は調整済み)

INTERVIEW  川内章弘

なお、今回は普段の作業ワークフローに近い形で検証するため、カメラ内現像後、編集ソフトで画作りをしています。人物カットはノイズリダクション、波のカットはノイズリダクション+アップスケーリングを行ないました。

EOS R5 Mark II +RF70-200mm F2.8 L IS USM  1/200秒  F2.8 ISO8000

ボディ内で「ニューラルネットワークノイズリダクション」を反映

ボディ内機能の「高感度撮影時のノイズ低減」を反映

「ノイズ低減処理なし」の状態

※いずれも色味のみ調整済み

人物で、着目したのは肌と髪の毛。肌のノイズが綺麗に除去されているのはもちろん、窓越しで捉えた髪の毛のシャドウ部分のディテールが壊れないまま、ノイズが除去できています(カット1)。ISO感度が8000…10000となると、シャドウ部のダイナミックレンジがなくなるんですが、カット3でも空に溶けそうな部分や風に吹かれてなびく細い髪を上手く処理してくれている。効果も、しない/弱め/標準/強めと段階があるのでお好みで設定しながら、例えば、ISO3200であっても6400であっても、適切なケアができる。プロフェッショナル的に、繊細にノイズをなくしていく方向性を感じています。もちろん、ベースとしてEOS R5 MarkⅡの高感度ノイズがそもそも少ないということも、より効果を強調しています。

EOS R5 Mark II +RF50mm F1.2 L USM  1/5000秒  F8 ISO5000

ニューラルネットワークアップスケーリングを反映し、波間の部分を拡大

アップスケーリングは、レタッチで解像度をどうしても上げる必要があった時に、編集ソフトで少し触った経験があるくらい。ですので厳密な比較ではないですが、率直なところカメラ内の処理だけでここまで出来たことはかなりの驚きです。カット4の被写体は夕暮れ時の波で、流動的で有機的な被写体を選択し、正確性より細かな部分をどれだけ再現できるか、をメインで想定しましたが、ディテールを保ちつつ、ピクセルが増える際に出てくる疑似的なピクセル、嘘っぽさがパッと見では見受けられない。生成された感じが出ていないというのでしょうか。

現状、JPEGのみで可能な処理なので、今後RAWでもできようになるとさらに用途が変わってくるかもしれませんが、報道・スポーツ、野鳥撮影、フレーミングや瞬間の「一発撮り」を求められるジャンルでは、カメラ内処理によってよりスピーディーに高画質のものを入稿できるという点で強みになるかもしれません。

話が前後しますが、アップスケーリングを使うからこそ、もともとのデータのノイズを落としたいという意図もあります。アップスケーリングによって、ノイズが増える可能性があるため、できるだけ低感度で撮影する。ただそれができないシチュエーションもあるので、その時は高感度撮影後にノイズリダクションで整えて、アップスケーリングで仕上げるという方法も考えられると思います。

川内章弘
(かわうち・あきひろ)
武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン学科卒業。エディトリアルデザイナー、スタジオアシスタントを経て広告写真家、BEAM×10佐藤孝仁氏に師事。2011年に独立する。
Web:www.cubism-tokyo.com/
Web:www.akihirokawauchi.com/
Instagram:@kawauchi_aki_photo

コマーシャル・フォト 2025年7月号

【特集】レタッチ表現の探求

写真を美しく仕上げるために欠かせない「レタッチ」。それはビジュアルを整えるだけでなく、一発撮りでは表現しきれないクリエイティブな可能性を引き出す工程でもある。本特集では、博報堂プロダクツ REMBRANDT、フォートンのレタッチャーがビジュアルの企画から参加し、フォトグラファーと共に「ビューティ」「ポートレイト」「スチルライフ」「シズル」の4テーマで作品を制作。撮影から仕上げまでの過程を詳しく紹介する。さらに後半では、フォトグラファーがレタッチを行なうために必要な基本的な考え方とテクニックを、VONS Picturesが実例を通して全18Pで丁寧に解説。レタッチの魅力と可能性を多角的に掘り下げる。

PART1
Beauty  石川清以子 × 亀井麻衣
Portrait  佐藤 翔 × 栗下直樹
Still Life  島村朋子 × 岡田美由紀
Sizzle  辻 徹也 × 羅 浚偉

PART2
フォトグラファーのための人物&プロダクトレタッチ完全実践
講師・解説:VONS Pictures (ヴォンズ・ピクチャーズ)

基礎1 フォトグラファーが知っておくべきレタッチの基本思想
基礎2 レタッチを始める前に必ず押さえておきたいポイント
人物レタッチ実践/プロダクトレタッチ実践

ほか