毎日家に届く新聞。そこに掲載された新聞広告の中には 時を超えて刻んでおきたい言葉やビジュアルがある。
多くのコピーライターと共に広告を制作してきたアートディレクターの副田高行が企画・監修し、6人のコピーライター(安藤 隆・一倉 宏・岩崎俊一・ 児島令子・前田知巳・眞木 準)の広告をセレクトした企画展「時代の言葉。コピーライターがつくった新聞広告名作120選。」が横浜のニュースパーク(日本新聞博物館)にて開催中だ。
9月6日には企画展の内容をまとめ、副田氏のインタビューを加えた 「刻んでおきたい名作コピー120選」を発売。 改めて新聞広告の名作を振り返ってみる。
安藤 隆のコピー
一倉 宏のコピー
岩崎俊一のコピー
児島令子のコピー
前田知巳のコピー
眞木 準のコピー
SPECIAL SESSION
副田高行×一倉 宏
アートディレクターとコピーライターとして、40年以上も共に広告を作ってきたお2人。名作コピーを中心に据えた作品集と企画展の開催、そしてこれからの広告について、ざっくばらんに話してもらった。
コピーライターに注目してほしい
――横浜のニュースパークで開催中の「時代の言葉。コピーライターがつくった新聞広告名作120選。」を企画した理由を教えてください。
副田 僕自身、多くのコピーライターと一緒にたくさんの広告を作ってきましたし、僕が関わっていないものでも素晴らしいコピーの広告をたくさん見てきました。 デザインに対してコピーは影の存在のように思われがちですが、ビジュアルよりもコピーが人々の心に残っている広告も数多くあります。もっとコピーライターが注目される機会があってもいい。
これまで多くのアートディレクター、デザイナーが企画展を行なってきましたし、僕も過去に何度か開催しています。それに対して、コピーライターがコピーだけでなく、広告と共に展示を行なったのは仲畑貴志さん(2016年5月「大仲畑展mini~コピーライター 仲畑貴志のぜんぶのいちぶ~」)ぐらい。コピーライターを主役にした広告展をやってみたいと思いました。そこで、以前僕が展示を行なったニュースパーク(日本新聞博物館)に企画書を出して、企画展ができることになりました。
一倉 人選も含めて、副田さんが全部お膳立てしてくれました(笑)。
――6人はどのように決めたのですか。
副田 今回は日本の経済や発展を支えたコピーライターたちの仕事を紹介しています。
6人のうち5人は僕と同世代か少し年長、前田知巳さんだけが15歳若いですが、彼の関わった宝島社の広告は日本の社会に問題提起する特別な広告だと思っているので、外せないなと思いました。
一倉 副田さんは本当に広告が好きで、アートディレクターでありながら、広告のデザイナーでもあり、広告マンであることを自認している。それは珍しいことだと思います。
副田 ADC(東京アートディレクターズクラブ)会員でも僕ぐらいじゃないかな。みんな基本的にグラフィックデザイナーだよね。でも僕はアドバタイジングをやっていきたい。 一倉 副田さんにとってはコピーがすごく大事で、大切にする。そうでなければデザインが成り立たないくらい。アートディレクターは、いずれ広告を離れコピーのないポスターを作るようになる場合が多い。それは作品としてですね。
副田 コピーがいらないと考えるようになるんだよ。
一倉 最後は教科書、もしくは美術史に残るようなポスターを作りたいということになるのかな。広告じゃなく、という気持ちもわかりますが。
副田 僕は違う。コピーライターはいつも仲間だと思っているんですよ。
一倉 だから僕は「副田高行とコピーライターの仲間たち展」みたいに思っています(笑)。 副田 僕は天才コピーライター·仲畑貴志とずっと仕事をしてきたから、まずコピーがあって、そこからデザインをどうするかを考えてきた。そんな僕に選ばれたらコピーライターとして光栄に思ってくれるんじゃないかなと。 一倉 もちろん嬉しいですよ。
このままでは広告は死んでしまう
――新聞広告を本や企画展で見てもらいたいと強く思ったのはなぜですか。
副田 このままでは広告は死んでしまうかもしれないと感じるからです。今のクリエイターは疲弊しています。広告に関わりたくてこの業界に入ってきたのに、全く違う競技で仕事しているような感覚があって、広告にやる気を失っている。 そういう人たちをどこかで勇気づけたい。そのためには先人たちが作ってきた名作と言われる広告を見てもらいたい。デザインもコピーも、いわゆるいい表現は普遍的だと思います。素晴らしい広告に触れることで、感動を与えられると思うのです。
もちろん今の時代とは置かれている状況も違いますけど、それでも自分たちの仕事に置き換えて学べるところは多いと思っています。
一倉 新聞広告に興味がないし、やったことがないという若手のコピーライターやクリエイターも多いです。でも、そこはちょっと違うぞと思います。改めて見てみると、僕も新聞広告でこんなことをやっていたのかとか、こんなにコピーを書いていたのかと驚きましたし、新聞広告は抜群に力のあるメディアだと感じました。 読まれさえすれば。
副田 いいコピーライターはボディコピーが上手い。ボディコピーからいいキャッチコピーが何本もピックアップできるぐらい。本や展示では当時のビジュアルが見られるので、6人のボディコピーも堪能してもらいたいです。
――参加しているコピーライターもしくは所縁のある方の書き下ろしの解説文も見どころです。
一倉 TCC(東京コピーライターズクラブ)年鑑などで人の作品を分析して講評を書くことはあっても、自分の書いたものを解説する機会はほとんどないし、とても新鮮でした。
副田 解説文がどれも素晴らしいです。単なる解説ではなくて、時代背景や商品のマーケティング的な意味合いも盛り込まれている。コピーライターは考え抜いて言葉にしているから記憶に残っているんですよ。
安藤 隆さんに「わざわざ横浜まで広告を観にくる人のために文章は長い方がいい」と言われて、解説文は全て500字前後でまとめてもらいました。展覧会場で読むのが大変で本を買ってくれる人も多いかもしれません(笑)。
一倉 いつもなら自分のことをあまり語りたがらないコピーライターもいるので、僕も他の人が書いた解説や告白を読むのが楽しみですね。
副田 仕事では、僕からコピーライターに依頼することもあるけど、コピーライターからお話をいただくことも多いんですよ。「トンボ」や「ほっともっと」の仕事は、岩崎俊一さんからだし、「岩波書店」「日本医師会」では前田知巳くんから依頼がありました。
「earth music &ecology」の時も児島令子さんからの「仕事を依頼したいのですが、副田さんはファッション広告なんてやっていないですよね?」と失礼な電話から始まりました(笑)。だから、これまでやってこられたのは、コピーライターのおかげでもあります。
一倉 コマ·フォトに広告を応募しているクリエイター、特にアートディレクターは「なぜ副田さんはこんなに途切れずに広告を作れるんだろう」と思っているかもしれない。それはコピーライターが副田さんを取り合って、次から次へと頼むからです(笑)。
副田 やっぱり広告が好きなんですよ。これからもコピーライターと共に広告を作っていきたいと思います。
副田高行 × 一倉 宏の広告
このほかにも特集扉で紹介したシャープAQUOSシリーズやピラミッド·ゾーン、サントリー山崎など、様々な広告を共に制作している。
「刻んでおきたい名作コピー120選」
本体2,200円+税/A5判/328P/企画・監修・AD:副田高行 1980年代から2020年代まで、日本人の心に残る広告コピー、キャッチフレーズを作ってきた6人のレジェンドコピーライター(安藤 隆・一倉 宏・岩崎俊一・児島令子・前田知巳・眞木 準)の名作コピー120本を紹介。さらにコピーライター自身や所縁の人物による作品解説も掲載する。
https://amzn.to/46wB2hX
「時代の言葉。コピーライターがつくった新聞広告名作120選。」展
開催日程:開催中~12月24日(日) 前期:開催中~10月22日(日)/後期:10月24日(火)~12月24日(日) 会場:ニュースパーク(日本新聞博物館)みなとみらい線 日本大通り駅3番出口直結 企画展は前期と後期制。前期は安藤隆、一倉宏、岩崎俊一を、後期は児島令子、前田知巳、眞木準の新聞広告がそれぞれ展示される。会場では、書籍「刻んでおきたい名作コピー120選」も販売中だ。 11月11日(日)には副田高行 × 前田知巳トークイベントが開催される(事前申し込みが必要)。
https://newspark.jp/exhibition/ex000333.html
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