ゼウスのスチルライフマジック Vol.25

スチルライフの定番被写 ボンベイ・サファイヤを撮る
Photo&Words: Tetsuro Takai   Photo: Photo: Daichi Akashi

高井哲朗が
スタジオスチルライフ撮影の
アイデアと 愉しみを 伝授
創造主ゼウスのように
光を操って 宇宙を創造しよう
スチルライフ それは あなたが
神になれる世界

日芸写真学科2年赤司大知くんとゼウス高井が撮るのは、ボンベイ・サファイア。
その美しいブルーのボトルは多くのフォトグラファーが撮ってきた。
赤司くんは、18世紀英国にルーツを持つジンのボトルに、
産業革命時代のロンドンのイメージを重ね、スチーム演出。
自作ボックスライトを使って撮影。
創造の神ゼウスもアイデア工作ならば負けられない。

Photo:赤司大知


A Foggy Day in the LONDON TOWN

赤司くんは Shu Akashiというフォトグラファー 知っている? 

赤司周一さんフィルムが デジタルに移行する頃
彼の BOMBAY SAPPHIREの 広告写真 見たんだ

すごく綺麗で
今まで見てきた広告写真と違って
シャープで 新鮮な描写だった被写体の持つ 

本質と魅力 独特の 感性と表現力
見てみなよ


なんてこと 話してたら
BOMBAY SAPPHIRE
貢いでくれた人がいたんだよ


これはもう 撮影しろってことだよね


“はい がんばります”って ボンヤリ 言ってたけど
よく研究したね


蒸留酒から ヒント もらい エントツ スチーム
加湿器の湯気 使ったりとか
さらに
自作のライトボックスまで 作ってくるなんて
素晴らしい 


こだわりメインライトに そのライトボックスを使い
スチーム描写には 小さなLEDライトも使うのか


綺麗なラベルにも うまくライトコントロール
仕上がりが 楽しみだね



ライティングの組み立て             

ライト:❶Godox MS300+AD-R6 Standard Reflector+Honnycomb Gird 
❷Godox MS300+AD-R6 Standard Reflector 
❸Godox MS300+自作ボックス
カメラ:Sony α7 IV レンズ:SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN
1/60秒 f22 ISO100

撮影台下からライト❶でボトル内に光を入れる。

ディフューザー越しのライト❷でボトル右側にシャープなハイライトを入れる。

自作のボックスライト❸を左斜め上からあてて、ボトル前面のラベルの色を出す。
ライトの角度、距離でラベルの明るさや質感を調整。最適なバランスを探っていく。

 

赤司君自作のボックスライト。
筐体はアルミ製、前面は乳白アクリル、
ボーエンスマウントでGodoxのストロボに装着。
ボトルの背後にペーパーレフを立ててメインライトの光をボトル内部に返す。
明るくなりすぎないようにグレーペーパーを使用。
仕上げにミストスチームで煙(蒸気)を入れて撮影。




Photo:高井哲朗



too early for a gimlet

BOMBAY SAPPHIRE 美しいデザイン 
イギリスのエレガント インドのラグジュアリー

サファイアは インドを代表する宝石
お酒のボトルなんだけど 格式高い 様式美

ボンベイ 懐かしい響き 
それは 昔 写真展を開いた インドの 華やかな都市

もう 刺激的 興奮 雑踏 爆音 密集 カオスの塊だったね

飛行機到着は 真夜中 ガラス越しに ギラギラ光る目 
まるで アラビアンナイト
想像を越えた 到着口の闇

あれは まるで 映画の1シーンだった
人間という エネルギー  ケダモノの匂いすら 感じた

空港から ホテルまで ずいぶんかかったような
夢の中で 泳いでいるような 不思議な 浮遊感だった

ホテルは タージマハールホテル
ヴィクトリア女王のイギリス インド統治時代のものだ
宮殿のようなホテル 中庭にはプールがあって
サファイアのような 綺麗な色

雑踏が消えた 静かな時間 

ボンベイの宝石 美しい名前のボトル 
蘇ってくる興奮の時 そして 静寂

写真は記録だけど 記憶だ 頭の中の景色だ
カオスの中の 清涼感
そんなのを 撮ってみた

冷やしたグラスに氷を入れ サファイアを入れ
ライムの一切れ トニックウォーター
ボタニカルな 香りが漂う
目を閉じれば あの喧騒が 興奮が
キリッとしたスピリッツ 弾けながら 飛び込んでくる

クール インフュージョン
“ほんとのギムレットはジンと
ローズ社のライム・ジュースを半分ずつ
ほかには 何も入れないんだ”

「THE LONG GOODBYE」で チャンドラー そんなこと 書いてたな

懐かしい想い出には 甘みを 加えたいものだ
次の1杯は ギムレットか 

早いけどな

ミッドナイト 苦みと甘み 優しい唇 
SAPPHIREの夜に 乾杯





ライティングの組み立て

ライト:❶ ❷broncolor Pulso G Head+Standard Reflector P70+自作スヌート 
❸broncolor Picolite+Picobox ❹GENTOS T-REX TX-850Re
カメラ:Canon EOS 5D Mark II レンズ:EF50mm F2.5 コンパクトマクロ/1/100秒   f8   ISO100


自家製スヌート❶。グラス横から中の液体と氷(アクリル製模造アイス)を透過して、透明感を出す。
自家製スヌート❷。ラベルのロゴと紋章部分を中心に光を入れる。
奥(画面上)からブルーのフィルターをかけたボックスライト❸。
下に敷いた乳白アクリルボードとボトルに青みを入れる。

手持ちのLED懐中電灯でラベルのロゴ、紋章部分にスポットを入れて完成。

撮影台(サイコロ)にアクリルボードを置いたセット。
左右の筒が自作スヌート。左が内面黒、右側が内面白のボール紙を使用。
標準リフレクターにつけている。
スヌートの内面で光の収束状態が変わる。左が内面黒、右側が内面白。
自家製スヌートだけではラベルの明るさが足りないので、LEDの懐中電灯でスポットを入れた。
箔押し加工されたロゴ、紋章の金のラインが浮き出る位置を探りながら、シャッターを切る。


高井哲朗
たかい・てつろう/1978年 フリーとして活動開始。1986年(株)高井写真研究所設立。広告写真を中心に活動するかたわら、ゼウスクラブを開催し、写真の可能性を伝導する。
www.kenkyujo.co.jp/
twitter.com/TetsuroTakai


コマーシャル・フォト2023年6月号記事より

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