ゼウスのスチルライフマジック Vol.27

白ホリスタジオで自転車撮影
Photo&Words: Tetsuro Takai  Photo: Yuki Kiuchi

高井哲朗が
スタジオスチルライフ撮影の
アイデアと 愉しみを 伝授
創造主ゼウスのように
光を操って 宇宙を創造しよう
スチルライフ それは あなたが
神になれる世界

四谷にある「スタジオD21」でスタジオスタッフの木内優稀さんと自転車の撮影。連載初の白ホリスタジオ。
「スタジオD21」勤務4年目の木内さんは白ホリのメリットを存分に活かしたプロダクトカット。
ゼウス高井は新型LEDライトを使ったアートイメージに挑戦する。
撮影協力:スタジオD21 (URL:studiod21.co.jp)

Photo:木内優稀



自転車は綺麗にディテール出すのが難しいけど

スタジオD21の中田さんから 電話があった

“ゼウスクラブ やるんだったら
うちのスタジオ 使っていいよ”  ってね

タイミング いいなぁ
次は 自転車 撮ろうと思っていたけど
ゼウスのスタジオだと ちょっと狭くて

“それならD21の スタジオスタッフに
撮影してもらうのもいいな” って ことで 
スタジオのライトを知り尽くしている
ベテランスタッフの 木内くんと 撮影することになりました
さすがだね 木内くん スタジオD21に 4年か

モデル撮影でよくやる バック飛ばし
白ホリに反射した光を レフで受けて 全体に回す
光量 足りない時は ストロボのパワー 調整
天面に白ボード 天バンして ハイライト入れるんだ
スタジオの光の回し方 知り尽くしてるね

自転車 縦置きにするのは ライト調整 やりやすいからだね
カタログ的写真のお手本
綺麗に 光を回すこと 基本的なライト設計 完璧



ライティングの組み立て             


ライト:❶〜❹ Photona Hero Head 
カメラ:Canon EOS 5D Mark III 
レンズ:EF24-70mm F2.8L II USM 1/125秒  f11  ISO100

左右両サイドから背景用ライト(バック飛ばし用ライト)❶❷を
トレペ越しに打つ。ライト❶は上から下に向けて、
❷は下から上に向けて、背景全体を均等に明るくする。
セット全体を白で囲っているため、ホリにバウンスした光が
自転車前面にも回ってくる。
ライト❹は白ホリの床に向けて打ち、床からの反射で
後輪部分を中心に明るくする。
同じライティングで、自転車を手で支えて
ハンドル部分の合成用カットを撮影。
Ph.03とPh.04を合成して、背景の明るさ、
床の影などをレタッチして完成。

撮影の様子白ホリ背景に自転車を置きカポックで囲ったセット。
自転車周囲のカポックは白面を内側に向け、カメラ両サイドのカポックは
黒面でスタジオの写り込みをカット。
自転車はハンドル部分をセンチュリースタンドで固定。縦位置で撮影して
横位置写真に仕上げる。ハンドル部分は別撮りカットを合成して、
固定の仕掛けを消す。




Photo:高井哲朗



星空サイクリング

自転車に 乗ったのって いつ頃だったっけ
小学生3、4年生の頃か?
子供自転車 買ってもらえなくて
大人の自転車で 三角乗り やっていたんだ
いま 考えてみると まるで 曲芸してるような
不思議な 乗り方で よくまぁ 乗れたもんだと

高校になったら ドロップハンドルが
すごくカッコよく見えたので 親に頼んで買ってもらった

あの頃は 自転車 乗ること とっても好きで
岐阜から 伊豆半島 長野と
自転車旅行 なんてのも やったもんだ

山道を 登る 峠を越え 谷に降り
いくつかの 山を越えたころ
遠く 先のほうに ドーン と 大きな 海原がみえた
丘の上から 光る海への道は
キラキラと 輝いて いまでも 記憶に残る
風を切って ヒューン 心地よく 気持ちが 沸き立つ

天気のいい 夏の初めは 毎日 どこかに
自転車で お出かけだった
その時の気分で 近くから 遠くまで
好きなように 自分の足で 進める

雨の日は つらいけど 晴れた日に 乗るときは
青や緑 赤や黄 通り過ぎていく景色 素晴らしい世界だった

沸き立つ 浮遊感 そんなこと 考えて
自転車を 浮かせてみた 太い テグスでね

車輪を 回す カメラを ブラす
ストロボ発光 ズラす LEDライトを 振り回す

キラキラの めくるめく 高揚感と
ボワんとした 浮遊感
記憶の記録を 一発の シャッターで 切り「撮」ってみた

記憶は いつまでも 心 浮き立つ 美しい 花色の世界



ライティングの組み立て

ライト:❶ broncolor Striplite 120 Evolution
❷❸ broncolor Pulso G Head+Standard Reflector P70
❹❺Aputure amaran PT 4c 
カメラ:Canon EOS R6/
レンズ:EF24-105mm F4L IS USM(マウントアダプター使用)/
1/4秒 f8 ISO100

ライト❶。ストロボ。低い位置からの横長ボックスライトで前輪を描写。
ライト❷。左サイドからブルーのフィルターをかけたストロボ。
やや下向きに打ち、床面にも青いグラデ−ションを作る。
ライト❸。右サイドからグリーンのフィルターをかけたストロボ。
ライト❶と同じ方向からLEDライト❹。LEDは設定で
レンボーカラーに発光させ、前輪フレームにカラフルな色を入れる。
自転車の右サイドにLEDライト❺をあてて、サドル、
フレーム、自転車を吊ったナイロンテグスに色を入れて、
ライティング完成。
ライト❶❷❸を0.09秒間隔で発光するように設定。
シャッター速度1/4秒で、カメラを動かしてブレを作る。


スタジオD21代表、中田さんが車輪の回転係を買って出てくれた。
1/4秒の長時間露光で撮影。3灯のストロボは、遅延発光機能で発光タイミングをコンマ数秒ずらし、
右のチューブタイプのLEDは手で持って振り回している。
カメラは手持ちで、シャッターの瞬間、素早く上下させる。
遅延発光設定をした3灯のストロボによる3重の像ができ、
定常光のLED光はブレて、レインボーカラーの帯を作る。




アザーカット Photo:高井哲朗
アザーカット Photo:高井哲朗


高井哲朗
たかい・てつろう/1978年 フリーとして活動開始。1986年(株)高井写真研究所設立。広告写真を中心に活動するかたわら、ゼウスクラブを開催し、写真の可能性を伝導する。
www.kenkyujo.co.jp/
twitter.com/TetsuroTakai


コマーシャル・フォト2023年7月号記事より

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