ゼウスのスチルライフマジック Vol.30

地明かりを活かしたアンティーク撮影
Photo&Words: Tetsuro Takai
Photo: Yuko Oshirichan Shimomoto

高井哲朗が
スタジオスチルライフ撮影の
アイデアと 愉しみを 伝授
創造主ゼウスのように
光を操って 宇宙を創造しよう
スチルライフ それは あなたが
神になれる世界

フォトグラファーの“Oshirichan”こと下元優子さんがゲスト。
アンティーク好きで古物商許可も持っているという彼女のコレクションを撮ることとなった。
下元さんはランプの淡い光を活かして、しっとりと仕上げる。
ゼウス高井はゾウのランプをセレクト(ゼウスはゾウ好き?)。
ミラーボールとブラックライトを合わせたら、80年代ディスコティーク?

Photo:下元優子


机の上の冒険

翼くんは 仕事で 毎日 大量の商品を 撮影してるらしい
“下元“Oshirichan”優子というのが 彼女の名前

“おしりちゃん”ってなんで? って 聞いてみた

子どものころ お尻が プリっとして 可愛いかったから
“おしりちゃん”って 呼ばれてたんだって

ふーん 可愛い お尻の おしりちゃんね
納得 なんだけど なんだかな 微妙

そんな おしりちゃん 男の人 撮るの うまいんだな
特に 若い子 撮影させたら 抜群 セクシー 

趣味 と 言ったらいいのか
好きで集めているのが アンティーク小物
今回は それを撮ってもらう

時計 ランプ それぞれに 物語を持っている
どうやって それを引き出していけるか
物に語ってもらう ミッション

背景に使うのは 牛革?
もう それだけで ドラマ 始まりそうだ
闇に 光を集めて
少しずつ 紐解いていく

スチルライフ
それは 机の上の 冒険物語



ライティングの組み立て             

ライト:❶❷アンティークランプ(電球) ❸100W電球 
❹broncolor Pulso G Head+Softbox 100×100cm(旧タイプ)
カメラ:SONY α7 IV レンズ:ZEISS Batis 1.8/85
1/30秒  f1.8  ISO125
アンティークランプ❶❷の光のみで撮影。❷のランプは画角から外している。
左斜め上から2灯の電球❸を加える。
バンクライト(ソフトボックス)❹のモデリング光を全体に回して、
ライティングの完成。最終的にスモークとフィルターワークの演出を加える。


 

アンティークランプの明かりを活かしながら、ライトを加えていく。
左斜め上からの100W電球は2灯重ねて、変圧機で光量を調整した。
左サイドにはバンクライトをセットしているが、ランプの地明かりを活かすため、
ストロボ発光はせず、モデリング光で使用。
マシンでスモークを作り、スモークが拡散して消えかかるタイミングで
シャッターを切る。
下元さんが師事していたHASEO氏が考案した光学フィルター、
その名も「HASEOフィルター」(KANI OPTIC製)。
ガラス面に線が切ってあり、光源に対し光のラインが入る。
スモークを焚き、フィルターで光の演出を加えた最終仕上がりがTOPの写真。
「HASEOフィルター」の効果。右の写真がフィルターあり。
今回は左トップの二つの電球の光が、2本の光線となっている。
フィルターの回転によって光線の角度も調整可能だ。






Photo:高井哲朗


消えた象を探して

夢の中でね ドキドキして 乗ってるんだ
愛しい人を 前に乗せ カポン カポポン ジャングルの中に

バサ バサー 木の枝 葉っぱ 掻き分け
大きな 滝 目指して その奥の 秘密基地へ
嬉しさ満載の 天国 ズンズン ドンドン

大きな耳 掴んで 滑り落ちないように バランスよく 
太腿でリズム とりながら ふふーん 進むんだ

タイミング 見計らって 大空高く 飛ぶことだって あるんだぜ

“こころ”の 楽しさと “からだ”の 喜び
強く望んだものを 叶えてくれる たくましい力持ち
“象さん”は 僕の運転手 用心棒

目が覚めると ベッドの上だ
心地よさ 味わうために また 眠る
だから 早く起きれないのさ

夢からの 覚醒は 考えが巡る 気持ち良い 眠りからの 戯言
夢の中の象は消滅するけど そんな“象さん”を 撮った

具体的なものは “具象”といい 目で見て その形が わかる
不定形でも 雲 雨 波 それを 写真で示せる

抽象は 未来 夢 快楽 希望 そのものズバリを 形で表せない

いろいろ 考えるよね 写真って 
具体的な物しか 写らないから
どうやって 形に表しにくいものを 撮り込んでいくか

具象から 抽象に
おんなじ 象さんだけど
具体的な 象さんを使って 未来的なの 撮ってみた

夢は 頭ん中で いつも 蠢いてるけど
その楽しさは 抽象すぎて 見せてあげられない

表現したいけど いつも 難しい
だけど 無我夢中の快楽 その行為は楽しい

うまくできれば マジックだ
だからスチルライフは 夢中になれるんだ


ライティングの組み立て


ライト:❶ アンティークランプ ❷❸OPPSK LED-UVBAR
❹60W電球 ❺Elispot 
カメラ:Canon EOS 5D Mark II/レンズ:EF50mm F2.5 コンパクトマクロ
0.5秒  f4.5  ISO100
ライト❶。ゾウの台座がついたランプの地明かり。
ミラーボールの左右に配置したブラックライト❷❸を照射。
60W電球❹を2枚のライトカットボードの隙間から照射。
ゾウの左側に光を入れる。
LEDのハンディライト❻に紫のフィルターを貼って、
手持ちでゾウの背中にあてる。


被写体は、台座に鋳物のゾウがついたランプ。
ランプの電球の後ろにはミラーボールを吊るした。
ミラーボールの両サイドにはブラックライトをセット。
今回の被写体に蛍光物質はないので、ブラックライト特有の紫の光を得るための、
カラーライトとして使用している。
左サイド、2枚のボードの隙間から電球の光を入れる。
光量と照射範囲は2枚のボードの間隔で調整する。
右サイド下から、ミラーボールに向けて定常光のスポットライトを打つ。
狙うポイントはミラーボール下、やや背面側。反射した光が、背後の黒布にドットを描く。
ハンディライトとスモークの味付け。スモークを入れながら、
紫のカラーフィルターをつけたハンディライトの光をゾウの背中にあてる。



下元優子
Yuko Oshirichan Shimomoto
1981年生まれ。東京都出身。写真家HASEO氏に師事。その場にある物、その場にある光を使い美しく表現する手法を得意とし、人物撮影・創作写真・音楽芸能関係の写真撮影を行なう。また、国内・海外アーティストのミュージックビデオをはじめ、映像の制作・VJも行なう。公益社団法人 日本広告写真家協会(APA)正会員。
Web:siliphotograph.wixsite.com/siliphotograph/ 
Twitter:@Osiliphotograph 
Instagram:@siliphotograph

高井哲朗
たかい・てつろう/1978年 フリーとして活動開始。1986年(株)高井写真研究所設立。広告写真を中心に活動するかたわら、ゼウスクラブを開催し、写真の可能性を伝導する。
www.kenkyujo.co.jp/
twitter.com/TetsuroTakai


コマーシャル・フォト2023年10月号記事より

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