Blackmagic Design Special Interview

Ⓒ2023 Kyrie Film Band
Ⓒ2023 Kyrie Film Band

唯一無二の世界観で魅了しつづける映画監督・岩井俊二。今年解散したBiSHからアイナ・ジ・エンドを主演に迎えて描いた最新作『キリエのうた』は、音楽性豊かで色鮮やかな、救済の物語だった。本作にVFXクリエイターとして参加し、画面作りを支えた田中裕治氏も交えて、岩井監督の作品づくりについて聞いた。

——映画の企画のはじまりについて。
岩井 映画『ラストレター』に登場する「未咲」という小説のエピソードを音楽映画にしようと思ったことがきっかけでした。先に小説を書いてからシナリオに落としていくのが通常のプロセスで、思い浮かんだいくつかの物語やシーンを組み合わせています。

——今回使用したカメラは何でしたか。
岩井 いろいろな種類のカメラを使用しています。シネマカメラから、ポケットカメラまで。

——カラーグレーディングの段階での色づくりでこだわった点はありますか?
岩井 あまり色をさわると顔が壊れてしまうので、そこはナチュラルに仕上げて、「ビビッドな色だな」と錯覚をしてもらうような仕掛けをしています。

——作品ではDaVinci Resolveをどのように使用されましたか?
岩井 主にはカラーグレーディングですが、いわゆるバレ消しにも随分使わせていただきました。カメラマンの映り込みだとか。大阪のシーンであべのハルカスが映っていたんですが、この物語の時代にはあるはずのないものだったので、田中さんにFusionで消してもらいましたよね。
新宿南口の路上ライブは人通りが少ない時間に撮影したので、別撮りした人物を合成しました。撮影当時はコロナ禍でしたが、いつか過ぎ去ることを願って劇中ではマスクのない世界線で描いてました。なので遠方の通行人のマスクなんかも消す必要がありました。

田中 キリエの妊娠シーンでもDaVinci ResolveのFusionページを使っています。いかに自然に違和感なく、CGが目立ちすぎないようにするかに時間をかけました。

——ソフトウェアが映像の修正にもすごく大活躍したということですね。
岩井 そうですね、昔ならできなかったことができるようになるのは、創作の可能性が広がります。DaVinch Resolve は一昨年に MVで使ったのが最初で。まだ慣れてはいないので勉強中です。
——作品づくりにおいてこだわる点を教えてください。
岩井 物語はとにかくパズルを解いていくみたいな感じです。それがどういう結果になっていくかは、自分でもわかりませんし、そのまま今回みたいに次の作品に繋がることもある。それは実際にやってみないとわからないんです。

Ⓒ2023 Kyrie Film Band
Ⓒ2023 Kyrie Film Band

原作・脚本・監督=岩井俊二『キリエのうた』(文春文庫刊) 音楽=小林武史
撮影=神戸千木 
企画+Pr=紀伊宗之 
製作プロダクション=ロックウェルアイズ  
配給:東映

※この記事はコマーシャル・フォト2024年2月号から転載しています。

コマーシャル・フォト 2025年7月号

【特集】レタッチ表現の探求

写真を美しく仕上げるために欠かせない「レタッチ」。それはビジュアルを整えるだけでなく、一発撮りでは表現しきれないクリエイティブな可能性を引き出す工程でもある。本特集では、博報堂プロダクツ REMBRANDT、フォートンのレタッチャーがビジュアルの企画から参加し、フォトグラファーと共に「ビューティ」「ポートレイト」「スチルライフ」「シズル」の4テーマで作品を制作。撮影から仕上げまでの過程を詳しく紹介する。さらに後半では、フォトグラファーがレタッチを行なうために必要な基本的な考え方とテクニックを、VONS Picturesが実例を通して全18Pで丁寧に解説。レタッチの魅力と可能性を多角的に掘り下げる。

PART1
Beauty  石川清以子 × 亀井麻衣
Portrait  佐藤 翔 × 栗下直樹
Still Life  島村朋子 × 岡田美由紀
Sizzle  辻 徹也 × 羅 浚偉

PART2
フォトグラファーのための人物&プロダクトレタッチ完全実践
講師・解説:VONS Pictures (ヴォンズ・ピクチャーズ)

基礎1 フォトグラファーが知っておくべきレタッチの基本思想
基礎2 レタッチを始める前に必ず押さえておきたいポイント
人物レタッチ実践/プロダクトレタッチ実践

ほか