Blackmagic Design Special Interview

強烈な個性が光るミクスチャーバンドKroiが奏でる「Method」のMVを観れば、誰もがその特別感に驚くだろう。40台のiPhoneに囲まれた緊張感は、まるで主題歌となったアニメ「SAKAMOTO DAYS」の中で殺し屋に囲まれたシーンのように、張り詰めたエネルギーさえ感じられる。ディレクターの木村太一氏とカラリストの西田賢幸氏、そしてDITの内田誠司氏に今回の作品について質問をした。

木村 ディレクションをしない撮影方法ってあるのかなと思い、40台置いてみようと軽い気持ちで始めたのですが、いざやってみるとすごく大変でした。以前に手持ちカメラで撮影しカット割りを速くする作品を手がけたことがあったのですが、それとは対照的にカメラの動きではなく事前にセットしたカット割りでやりすぎなくらいエネルギーを出してみたら面白いんじゃないかと思ったんです。

木村 最初にKroiの皆さんへ撮影のコンセプトや難しさを撮影監督から説明した時には正直言って想像がつかなかったようで、聞いただけではわからないというリアクションでした。そういう意味ではiPhoneをメインカメラとして使うということは、まだスタンダードではないんだと思います。でも現場に入ってフィジカルで見ると、想像を超えた印象があったようで驚いていました。

木村 最初は40台のVHSビデオカメラで撮りたいと思っていたんですが、テープだと技術的に40台は難しいし、ホワイトバランスを合わせにくいという課題がわかってその案は無くなりました。シネマカメラを40台だと予算的にも難しいし、映像に映ってしまうカメラを考えた時、空間デザイン的にカメラ自体もかっこよくないといけない。そこでAppleの方がiPhoneを貸してくださることになって、美術チームもデザイン性や機能性としてもiPhoneが良いという結論になりました。この時のバージョンは16 Proと16 Pro Maxです。――今回のトーンや色作りはどのように設計しましたか。
西田 監督と話しながら、今回はあまり脚色しないクリーンな感じにしようと決めました。僕の勝手な解釈ですが、監視カメラで見た記録映像のような、いい意味で雑味がない高品質な感じにしようと意識してグレーディングしていました。

西田 iPhoneで撮影するということがどういう感じなのかと思っていたんですが、実際に素材を扱ってみると普通のカメラで撮影したものと遜色はありませんでした。撮って出しの状態も悪くなかったので、グレーディングはいつもに通りDaVinci Resolveで行いました。

西田 まずはデフォルトからスタートして、そこから特にフィルムエミレーション系のLUTは特に使わず、そのままの感じを少しだけ味付けするぐらいのイメージで仕上げました。

内田 現場で木村監督的に何テイク必要なのかを相談し、iPhoneの容量で収まるデータ量と照らし合わせて選びました。30分が限界だったので、4テイクで126GBぐらいだったと思います。

木村 撮影ではTentacleのアプリで同期したのですが、何台かはうまくいかなかったものもありました。カメラに映り込むため見栄え重視でLANケーブルだけ繋ぎましたが、HUBをつけると充電など色々なものが見えてしまいます。そのコネクターの動きが統一されているのはかなり美しいなと思いますし、リリースされたら試してみたいですね。
内田 今回はiPhoneだったので色々くっつけたりできて可能でしたが、恐らく普通のカメラだったら、システムを打ち込んで遠隔でRecできるように改造しないと無理でしたね。

木村 まずはiPhoneで撮っていることを強調したいと思っていました。無理矢理にシステマチックなルックにするのではなく、レンズも魚眼の8mmみたいなものをあえて使用しています。複数のiPhoneで同時にいろんなアングルから撮影していることを強調するために、編集時には1つの画面を2つ以上に分割するスプリット構成をたくさん使いました。編集時にまとめてみると、40台分の素材はもうちょっとあってもよかったとは思いましたが、タイムコード的には多すぎました。それらをレイヤーで重ねて編集しないといけないので、同時に作業するとレイヤーがものすごく多くなるんです。編集をしていると途中でどれがどれだかわからなくなりますし、パソコンも重くなってくる。きちんと色分けなどをしておかないと、どれがベースのシーン、どれがドラムのシーンかもわからなくなったりしました。

木村 このアプリがなかったら恐らく実現できませんでしたね。メディア総合イベント「Inter BEE 2025」の際にBlackmagicの開発者の方とお話した際に、240台ぐらいまでは理論的にもネットワークの制限的にも問題なさそうだったので、複数台で検証しました。その後開発の方からもっと台数を増やせるかもしれないという話を聞いて最終的に40という数字に落ち着きました。実際には予備で持ってきたiPhoneも追加で7台ぐらいは使っていたような気がします。ベースは演者1人に対して4カメラを設置し、ボーカル用のカメラはもう少し台数を増やしていたと思います。ピアノの手元に近いショットやアングルなど、iPhoneならではの表現はお気に入りのシーンです。

※この記事はコマーシャル・フォト2025年12月号から転載しています。

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