EOS R5 Mark II×川内章弘
キヤノンが誇るNeural network Image Processing Tool(ニューラルネットワーク画像処理ツール)が、EOS R5 Mark II内で作業可能となった。
その中でも、ニューラルネットワークノイズリダクションとニューラルネットワークアップスケーリングが可能になったことにより、いかに表現の可能性を広げることができるのか。フォトグラファー・川内章弘が未来を探る。
Costume Cooperation
(カット1、カット2) アシンメトリーリブニットトップス、ラインストライプロングスカート/LIENCOEUR アクセサリー/VATSURICA
(カット3) 白ワンピース/AULA AILA アクセサリー/VATSURICA
ST=ヤマダタカノブ(CUBISM) HM=遠山祐紀 T=山田愛奈


同じシチュエーションでのニューラルネットワークノイズリダクションを反映して仕上げたISO8000のカット1と、ISO250で撮影したカット2。(いずれも色味は調整済み)
INTERVIEW 川内章弘
カメラ内でのニューラルネットワークノイズリダクション、
ニューラルネットワークアップスケーリングに挑む。
まず、EOS R5 MarkⅡの実機を触り、EOS R5から順当にアップグレードしたという印象です。追加された機能の中で目新しかったのが視線入力AF、静止画/動画の切り替えスイッチ、そしてバッテリーが新しくなったこと。AFはEOS R5でも体感としてかなりの精度があったので、EOS R5 MarkⅡでは視線入力AFを使い、いかに効率的な撮影ができるかを考えました。そして驚いたのは感度をどこまで上げてもなかなかノイズが出てこないこと。通常、高感度になるほどダイナミックレンジが狭まっていく傾向にあると思いますが、画像を触った感触としては、ダイナミックレンジもそこまで損なわれず、ニューラルネットワークノイズリダクション使用前でも、高感度で高画質な撮影ができると感じました。
なお、今回は普段の作業ワークフローに近い形で検証するため、カメラ内現像後、編集ソフトで画作りをしています。人物カットはノイズリダクション、波のカットはノイズリダクション+アップスケーリングを行ないました。
ノイズの場合、輝度ノイズとカラーノイズが存在し、それらを除去すると一般的にディテールが失われていきます。それがニューラルネットワークノイズリダクションでは、ボディの中で反映でき、さらにディテールがちゃんと残った状態に仕上げてくれる。印象としては、PCで画像編集ソフトを使ったノイズ除去に限りなく近く、優秀で心強いです。特に輝度ノイズが厄介でディテールを壊しがちですが、それを壊さずに処理できていると感じました。
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ボディ内で「ニューラルネットワークノイズリダクション」を反映
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ボディ内機能の「高感度撮影時のノイズ低減」を反映
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「ノイズ低減処理なし」の状態
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※いずれも色味のみ調整済み
人物で、着目したのは肌と髪の毛。肌のノイズが綺麗に除去されているのはもちろん、窓越しで捉えた髪の毛のシャドウ部分のディテールが壊れないまま、ノイズが除去できています(カット1)。ISO感度が8000…10000となると、シャドウ部のダイナミックレンジがなくなるんですが、カット3でも空に溶けそうな部分や風に吹かれてなびく細い髪を上手く処理してくれている。効果も、しない/弱め/標準/強めと段階があるのでお好みで設定しながら、例えば、ISO3200であっても6400であっても、適切なケアができる。プロフェッショナル的に、繊細にノイズをなくしていく方向性を感じています。もちろん、ベースとしてEOS R5 MarkⅡの高感度ノイズがそもそも少ないということも、より効果を強調しています。

ニューラルネットワークアップスケーリングを反映し、波間の部分を拡大

アップスケーリングは、レタッチで解像度をどうしても上げる必要があった時に、編集ソフトで少し触った経験があるくらい。ですので厳密な比較ではないですが、率直なところカメラ内の処理だけでここまで出来たことはかなりの驚きです。カット4の被写体は夕暮れ時の波で、流動的で有機的な被写体を選択し、正確性より細かな部分をどれだけ再現できるか、をメインで想定しましたが、ディテールを保ちつつ、ピクセルが増える際に出てくる疑似的なピクセル、嘘っぽさがパッと見では見受けられない。生成された感じが出ていないというのでしょうか。
現状、JPEGのみで可能な処理なので、今後RAWでもできようになるとさらに用途が変わってくるかもしれませんが、報道・スポーツ、野鳥撮影、フレーミングや瞬間の「一発撮り」を求められるジャンルでは、カメラ内処理によってよりスピーディーに高画質のものを入稿できるという点で強みになるかもしれません。
話が前後しますが、アップスケーリングを使うからこそ、もともとのデータのノイズを落としたいという意図もあります。アップスケーリングによって、ノイズが増える可能性があるため、できるだけ低感度で撮影する。ただそれができないシチュエーションもあるので、その時は高感度撮影後にノイズリダクションで整えて、アップスケーリングで仕上げるという方法も考えられると思います。
今回注目した機能に加え、カメラの進化が順当に進んでいくのであれば、既存のワークフローでは編集ソフトを経由しなければ、納得できる最終アウトプットができなかったことが、カメラ内作業だけで素晴らしい画質の最終アウトプットを得ることができるようになるのかもしれません。
川内章弘
(かわうち・あきひろ)
武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン学科卒業。エディトリアルデザイナー、スタジオアシスタントを経て広告写真家、BEAM×10佐藤孝仁氏に師事。2011年に独立する。
Web:www.cubism-tokyo.com/
Web:www.akihirokawauchi.com/
Instagram:@kawauchi_aki_photo
協力:キヤノンマーケティングジャパン

コマーシャル・フォト 2025年5月号
【特集①】
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長山一樹流 違いを生むコマーシャル・ポートレイト
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