【2026年2月号 編集部注目のMV】サニーデイ・サービス 「レモネード挽歌」

Pr=平林真甲 Dir=中村佳代 P=浅田政志 AD=羽生敏博 A-P=松村博 グレーディング=岩野豪洋 ST=加藤田鶴 HM=くどうあき T=曽我部恵一・田中貴・大工原幹雄・久米俊輔(文学座)・武蔵怜央 殺陣師=武蔵怜央 R+MA=林恭睦 ED(編集)=吉田蓮歩 ED(本編集)=平野七穂 ポスプロ=イメージスタジオ109目黒 BM=滝波豊 A-Mg=水上由季 A&R=岩崎朗太

 本作は、監督・中村佳代の直感から立ち上がった物語だ。「イントロを聴いた瞬間に、向こうから武士が歩いてきた」という中村監督の第一印象が、3人の武士が密航留学を命じられ、藩を離れ、山越えをしてエゲレス蒸気船を目指す──という大胆なストーリーへと結晶した。幕府の刺客に追われる父を、息子・丈之介が密かに援護するべく後を尾ける。そこで彼は初めて真剣を抜く。しかし4年後には武士がすべて職を失う時代が訪れる。

 物語の厚みもさることながら、映像の思い切った構成にも驚かされる。船出ののちに続くのは、武士姿のサニーデイによる演奏シーン。曲尺いっぱいにその姿を映す二部構成だ。監督の中には90年代から彼らに“ 武士姿” のイメージがあり、今回、長年温めてきた発想がようやく形になった。演技は大仰なものではなく、状況説明のみを共有し、細かな感情表現は本人たちに委ねた。その結果、三度差し込まれるソロカットには、微妙に異なる温度の表情が宿る。武士という設定でありながら、過剰な芝居に寄らない自然さが生まれた。

 キャメラマンとして映像を支えたのは、写真家・浅田政志。使用機材はBlackmagic Pocket Cinema Camera 4K にNikon の単焦点レンズを35mm〜200mm まで幅広く使用。冒頭の坂道シーンは、中村監督がイントロで思い描いた“ 武士が歩いてくる” イメージを再現するため、急勾配と背景の抜けに徹底してこだわったロケハンが生んだカットだ。

 浅田氏にとっても時代ものの撮影は初挑戦。後半の演唱シーンは「動き回り」「三脚定点」「手持ち定点」の3パターンを撮影し、最終的に「手持ち定点」が採用された。殺陣のシーンは迫力を盛りすぎない“ クールさ” を狙い、画の余白が物語を語る作りとなった。仕上げではモノクロ案もあったが、海辺で捉えた夕景の色が決定打となり、自然光の柔らかさを生かす色調へと舵を切った。

 現場では、サニーデイらしい軽やかな空気も流れていた。武士姿でのフィッティングに3人が驚くほど馴染み、「このままライブしてほしい」と監督が叫んだほど(笑)。武士姿のまま車を運転し、コンビニに立ち寄り、おでんを買う──そんな脱力的な瞬間さえ、作品の“ 現在性” を裏打ちしている…のかもしれない。

 歌詞・曲調と映像の組み合わせが最初は異様に思うけれど、見返すほどに魅力として立ち上がり、「これ以外ない」と思わせてくる。軽やかさの奥にひそむ切なさと、静かな余韻。その感覚こそが、心に長く残る理由なのだろう。

※この記事はコマーシャルフォト2026年2月号からの転載です


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