玉ちゃんのライティング話 02〜メインライトの位置を考える〜


照明機材のオーソリティ
「玉ちゃん」こと玉内公一氏と、
担当編集者との掛け合いでお届けする、

ライティングの基礎と実践。
2009年から約3年間にわたって

コマーシャル・フォトで
連載した記事から抜粋して

お届けします。


 前回は、太陽の下でモノを見るのと近い状態を、メインライトとフィルインライトで作るという話でした。

 メインが太陽光、フィルインが空全体から拡散して降り注ぐ光という考え方ですね。
今回は、それをもう少し応用して、メインライトの位置を考えてみようと思います。

 普通、メインライトは斜めからあてますよね。

 斜めからあてた方が、正面からあてるよりも自然な影ができて、立体感が出るのは当然ですよね。また、やや上方からあてるのも、通常は太陽の光が上にあることに倣っているわけです。水平45度、垂直45度ぐらいの高さにライトをセットするのが、基本的なライティングですね。

下の作例の、両端から棒が出た立体の場合、被写体正面をカメラの光軸からやや斜めに向けた方が、形全体が見えて立体感を感じます。さらに被写体が向いた方向とは逆斜めからライトをあてると、手前が明るくなり、カメラから遠い部分に影が落ちて、奥行き、立体感が強調される。

これが同じ斜めからの光でも、被写体の向いた正面から光をあてると、全体がのっぺりとした印象でしょう? つまり「被写体の形状」「被写体の向き→カメラアングル」「光のあたる方向→ライトアングル」が、ライティングの重要なポイントなんです。

メインライトの位置でモノの見え方が変わる

小型バンクライトをメインにして、その位置を色々と変えてみた。
明暗のコントラストをつけるため、フィルインはストロボを使わずに、大きなレフ板を囲むようにセットした。

水平45度/垂直45度

左斜め上前方から。手前が明るく奥が暗くなる、基本的なライティング。被写体が過不足なく照らされる。

水平0度/垂直45度

正面上斜めから。作例のような被写体では影がなくなり立体感が出ない。

水平0度/垂直90度

真上からのライティング。影が真下に落ちる。太陽の位置が高い夏の日差しの感じ。

水平45度/垂直0度

作例の円錐形の被写体はある程度、高さがあり、上面に照らす必要がないので、水平45 度でも自然な仕上がり。

水平0度/垂直0度

ほぼカメラ位置からのライティング。影がなくなり立体感が乏しくなる。

水平-45度/垂直0度

被写体の正面にライトがあたっている状態。被写体正面は明るくなるが、立体感がやや減じる。

水平135度/垂直0度

斜め後ろからの逆光気味のライティング。被写体正面が暗くなる演出的な手法。

水平-135度/垂直0度

左の写真と逆の位置からの逆光。被写体正面のエッジにハイライトが入る。

 ところでマジックアワーって知っていますか?

 朝、夕の太陽が出る直前、太陽が沈んだ直後ですよね。クルマのロケ撮影は、その時間帯がいいと言われますね。

 そう、モノがとてもきれいに見える一瞬。マジックアワーとはメインの光源、すなわち太陽が地平に沈み、まだ明るさが残る空の光のみでモノを見る状態。ライティングで言えば、全体に回る光、フィルインライトだけで撮影する感じです。

 メインライトがないと、立体感は失われませんか?

 強い影がなくなるので、明暗差による立体的な見え方はしませんが、全体を柔らかい光が覆い、被写体表面の凹凸が自然な感じで浮き上がってくる。また、ハイライトや濃いシャドーがなくなり、モノの自然な色、グラデーションが出てくる。 人物の場合、ホリの深い人なら、そのホリの凹凸がよりはっきりする。女性なら肌のトーンが出てくる。被写体がぐっと存在感を増すというのかな。だから、プロポーズは夕暮れ時がいいんですよ。

 本当ですか? それってもしかして経験談? でも何十年前のことなんですか?

 いやいや、マジックアワーっていうのは、原理的には広い水平線が見えるような場所だからできるわけで、日本みたいに山が多いと、日が山に落ちて、すぐに暗くなってしまうのですよ。

スタジオライティングで、マジックアワーの状態を作るには、大きなディフューザー、沙幕などで被写体を覆って、光を回す。いかにきれいに均等に光を回すかがポイントです。人物撮影ではよく行なわれる手法で、メイプルソープのモノクロのポートレイトは、そんな感じですよね。物撮影だとハイライトを入れたり、もう少し全体の立体感がほしくなるんですが。

写真左:メイン(左斜め上)+ フィルインの2灯ライティング。適度にハイライト、シャドーが入るノーマルなライティング。
写真右:フィルインのみの「マジックアワー」ライティング。全体の立体感は乏しくなる反面、被写体の色、質感が出てくる。すべての被写体にマッチするわけではないが、絵画のような雰囲気のある仕上がり(写真右)。

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