玉ちゃんのライティング話 03〜四角い箱のライティング〜


照明機材のオーソリティ
「玉ちゃん」こと玉内公一氏と、
担当編集者との掛け合いでお届けする、

ライティングの基礎と実践。
2009年から約3年間にわたって

コマーシャル・フォトで
連載した記事から抜粋して

お届けします。


 今回は、立方体や箱モノのライティングの基礎トレーニングです。

 基礎トレーニング?

 商品撮影、テーブルトップ撮影の被写体って、四角い箱形のモノ、多いでしょう。
その基本を理解、トレーニングしておくと、色々な被写体に応用できると思うんです。

 なるほど、で、その基本とは?

 まず立方体を撮る時、ライティングで考えるのは、❶どの面を明るくするか、❷その面の材質、❸各面の明るさのバランス。
今回、材質のことはちょっとおいといて、面の明るさについて考えてみます。

立方体各面の明るさのバランス

トップ(天面)を最も明るくし、各面の差をつけるのが基本。トップ以外の面を明るくした場合も、最も暗い面と中間の明るさの面を作り立体感を出す。

トップf22、左サイドf16、
右サイドf11

トップを一番明るくして、各面、1段の明るさの差をつけた。自然な立体感が出せる。

トップf16、左サイドf22、
右サイドf11

左サイドを明るく、右サイドを最も暗くした。左サイドが正面であることを強調したライティング。

トップf11、左サイドf22、
右サイドf16

トップを暗くして、左をメインにサイド全体を見せるライティング。

トップf11、左サイドf11、
右サイドf11

全ての面を同じ明るさにした場合。当然ながら立体感はなくなってしまう。

 ここに用意したのは、標準的な反射率の紙でできた立方体。テーブルなどに置くと、通常、3つの面が見える訳です。

 普通に斜め俯瞰から撮るとそうなりますよね。

 では、どの面を一番明るくするか? この無地の被写体のように、特に強調したい面がない場合、トップ(天面)を明るくするのが、一番自然なんです。

 それはやはり、太陽が上にあるから?

 そうです。そしてサイド面の一つを中間の明るさ、もう一つの面を暗くすると、立体感が出るでしょ。

 各面の明るさの差は?

 上の作例では、最も明るいトップがf22、左サイドがf16、右サイドf11。これはスポット測光の値です。ライティングの勉強としては、この1段差を基本にしてスタートするといいと思う。それで被写体や目的に合わせて、最適な明るさのバランスをつかむトレーニングです。

考え方としてはまず、一番明るくしたい面の明るさを決める。次に暗い面の暗さを決める。そして中間の面の明るさを調整する。作例のようにちょうど一段差のバランスだと、非常に優等生的というか、基本的なライティングですが、たとえば中間の面をもう少し明るくしていくと、ハイキーな印象の写真になるし、逆に暗くしていけば暗めのしっとりした写真になる。さらに明暗の差を強調したいなら、明るい面と、暗い面の差を大きくすればいい。

 サイド面を一番明るくする場合もあるんですよね。

 もちろん。トップを明るくするのはあくまで基本。たとえばサイドに一番見せたい部分、強調したい部分があるなら、そこを明るくします。その場合も他の二つの面の明るさのバランスが重要になる。要は立体に見えることがポイントですから。

トップ(天面)を明るくした作例

スピーカーの上の面を明るくし、右サイドを一番暗くした作例。箱モノを撮る基本的なライティング。全体を過不足なく見せ、自然な立体感が出る。切り抜き写真やカタログなどのカットによく使われるライティング。

サイド(横面)を明るくした作例

スピーカー前面(サイド面)を最も明るくして、他の面を暗くした作例。上の作例に較べ、いわゆるイメージカット的なライティング。

 このスピーカー作例、上の写真は天面を最も明るくして、各面1段の差をつけたノーマルな撮り方ですが、下の作例はスピーカーコーンの面を強調、いわばイメージカット的な撮り方をしてます。

 トップを明るくした場合、サイド面は左右どちらを暗くするのがいいんですか?

 最初の作例の立方体でこのアングルだと、左右対称だから、どちらでもいいんですけど、たとえば細長い直方体だと、長辺、短辺、どっちを暗くするかで、写真から受ける印象が変わってきます。

下の作例2の板のような被写体の場合、短辺を暗くすると、板の厚みが強調され、長辺を暗くすると、長い板という印象が強くなりせんか?

 うーん、そう言われてみれば…。

どこを暗くするかで形の印象が変わる

細長い箱形の場合など、長辺、短辺のどちらを暗くするかで、印象が変わってくる。

短辺を暗く

このアングルの場合、短辺を暗くすると奥行き(板の幅)や厚みが強調される。

長辺を暗く

長辺を暗くすると板の長さが強調される

▶玉ちゃんのライティング話 アーカイブ

玉ちゃんのライティング話(Kindle版)

コマーシャル・フォトで約3年にわたり連載された「玉ちゃんのライティング話」を再構成した1冊。カラー作例をふんだんに使い、プロのスタジオ撮影の基礎を解説したライティング読本です。

Amazonで見る

コマーシャル・フォト 2025年1月号

特集】フォトグラファーたちの これまでとこれから
2024年もそろそろ終盤。フォトグラファーたちが2024年に発表した作品や仕事、取り組みを作品とインタビューとともに掲載。それぞれの写真観や作品制作、仕事についてなどたっぷりと語ってもらった。
ソン・シヨン、𠮷田多麻希、濱田英明、金本凜太朗、服部恭平

FEATURE 01  薄井一議「Showa99 / 昭和99年」
FEATURE 02  金澤正人「KANA Kana Kitty」

【好評連載】
■GLAY CREATIVE COLLECTION 2024- VOL.06
 GLAY 30th Anniversary ARENA TOUR 2024-2025 “Back To The Pops” OFFICIAL GOOD

■Create My Book -自分らしいポートフォリオブックを作る
  Vol.5 「みくふぉと」 金村美玖

■ニッポンフォトグラファー探訪 Vol.08
 長野の森で過ごしながら、日常の視点で撮り続ける  砺波周平

■写真を楽しむスペシャリストたち 中野敬久