ゼウスのスチルライフマジック Vol.32

被写体はティッシュペーパーあなたならどう撮る?
Photo&Words: Tetsuro Takai Photo: Shunpei Mitsutsuka

高井哲朗が
スタジオスチルライフ撮影の
アイデアと 愉しみを 伝授
創造主ゼウスのように
光を操って 宇宙を創造しよう
スチルライフ それは あなたが
神になれる世界

友人の“よーこちゃん”が焼いてきてくれたピザを食べながら、
ゼウス高井がふと思いついた今回の撮影テーマは「ティッシュペーパー」。
フォトグラファーの三塚駿平さんをゲストに、想像力とアイデアを駆使して、
このありふれた、捉え所のない被写体の撮影に挑戦する。

Photo:三塚駿平



ただの薄い紙をどう見せる?

よーこちゃんから 突然メール
“ゼウスに紹介したい人 いるから
夜 ピザ焼いて持っていくね” てね

“ピンポン” 
入り口に 立派な体格の ちょっと 胡散臭い
男の子 連れてきた
聞くと ゼウスの ポエムの
熱烈ファン らしい

珍しい 写真でなく 文の方とは
面白い奴だ 好感度プラス1

三塚駿平くん しっかり 写真やってる
銀座で個展も 開催してたし 見た目からは わからない

ライスワーク 最中だけど
ライフワーク 研究中ってことで
このゼウスページに 参加してみたい と

ところで ピザ
しらす 焼き海苔 相性いいね とても 美味い 
マルゲリータも 絶妙

“ティッシュ 何処?” って 
よーこちゃん 口に たっぷり 
コッテリ チーズ 艶 艶 なんとも

ん? “ティッシュ取って” って?
そうか これはアリだな 
今度のテーマは ティッシュ撮影
ただの薄い紙が 被写体
スチルライフの 定番難問だな

ありきたりな 日常的な「もの」
わかったフリしていた 被写体で 
自分世界を構築し 
思考を再稼動 させられるのか?

さあ チャレンジ
駿平 自分世界 撮りこめるか?


ライティングの組み立て             

ライト:❶ broncolor Pulso G Head+黒アルミスヌート+Standard Reflector P70+Grid 
❷broncolor Pulso G Head+Standard Reflector P70+Grid 
❸Broncolor Sunlite Set
カメラ:Nikon Z9 レンズ:NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR S 
3秒 f16 ISO32 ND32使用

 

手前からのメインライト❶。
ライト❷。右サイドより逆光気味に光を入れる。
ライト❸。トップからのライトを加える。
照射範囲はバーンドアで調整。
シャッター速度は3秒。
ライト❶❷❸のストロボ発光でテッシュの象を制止した後、
そのままモデリング光で露光。
スタジオ内の空気の揺れるテッシュのブレを重ねて完成。
セット全体。ティッシュは紐でライト❸のバーンドアから吊るしている。
メインライト❶は三塚さん考案のスペシャルライト。
標準リフレクターに黒アルミの筒を付け、その前にグリッドをセット。
リフレクターにグリッドをつけるだけだと照射範囲が広すぎる時に使う仕掛けだとか。
今回の撮影では、グリッド前も、上半分を黒アルミで覆って光をコントロールしている。

ZEUS’S STILL LIFE MAGIC



Photo:高井哲朗



重ねりゃ、重みも出てくるさ

駿平くんが撮影してた ティッシュは 
ま ティッシュ だなぁ ひらり の 1枚もの

ゼウスは 創造主だから 創ってみるんだな
ブルームーン 月面 ボコボコ まあるい お月さん

ちっちゃな子 砂場で 作るよね
泥団子 そんな感じ

ツルツル ピカピカ 綺麗に作るには
精神力 忍耐力 美学力 養われるね

クリエイトだ 
人間力 造形力 考える力が 社会をつくってきたんだ
そんなこと 考えながら 丸めた ティッシュ
薄い紙 何枚も 霧吹きで 接着剤みたいに 湿らせ 
重ね合わす

経過した 時間の層 今日のできごと 経験
そんなものを 心に 重ねる
薄いから 軽いんだよ 1枚は

だけど 時間は 重なっていく
嬉しいことも そうでないことも
心に 少しずつ 澱となって

なんだかな 
誰だって 単純じゃないよ

鬱とか 躁とか 考えすぎて
人間 やめたいって 考えてる奴 いるだろ

そもそも 生まれて来たいって 生まれた人なんて いないんだから
物心ついた時に 気がついたら こうなってたんだから

体は 借りもんなんだよ
それを 認めて 生きていくんだよ
考えすぎないことだよ

ある程度は がんばって
努力ってやつは 全てが報われることは ないからさ
楽しく生きれば いいんだよ

命は 動的平衡
とどまることなく 細胞は 入れ替わっていく
流れていくもんだよ

薄い紙 どんどん重ねて
少しづつ 丸いのが 心の中に できていく
記憶の塊 ブルームーン

心の月が 撮れる日まで
楽しく生きよう

DNAに仕込まれた 潜在的な クリエイティビティ
泥団子 作るように 捏ねて 重ねて
象徴的偶像を 作ること

スチルライフ
人生の 生き方の考察
Enjoy life as much as possible


ライティングの組み立て

ライト:❶ broncolor Pulsospot4 ❷Aputure amaran PT1c ❸Aputure APMT-Pro 
カメラ:Canon EOS 5D Mark II/レンズ:EF50mm F2.5 コンパクトマクロ
1/5秒 f7.1 ISO100

 

ライト❶はレンズユニットで照射範囲を絞れるストロボ。
ティッシュボールの表面のみ光があたるように、
スポット範囲を調整。
右サイドのLEDライト❷を点灯。
背景とティッシュボール右側にカラーグラデーションの光を入れる。
ボール下のグラスは透明のため、
逆サイド(左側)にハイライトが入る。
左サイドのLEDライト❸を点灯。
これでライティングの完成。
ボールの上でティッシュペーパーを動かしながら撮影。
ストロボのライト❶はティッシュボール表面にしか
あたっていないため、
ボール周辺の露光はLEDの定常光となる。
シャッター速度を遅めにして、ボール周囲で
ティッシュペーパーを動かすことでブレて、
透明なモヤのような背景アクセントとなる。

ティッシュを1枚1枚重ねて、霧吹きで湿らせて泥団子のようにボールを作っていく。
なかなか根気のいる作業。
背景の乳白アクリルには穴が空いていて、
そこから透明アクリルの棒を出して、テッシュボールを固定。
通常の商品撮影などでも、製品を浮かせて撮る時によく使われる仕掛け。
シャッターの瞬間、ティッシュペーパーをボール周辺で素早く動かす。
シャッター速度1/5秒のため、LEDの定常光でブレて露光される。
他の撮影でも背景演出などに使えそうなアイデア。

三塚駿平 Shunpei Mitsutsuka
1994年生まれ、東京を拠点に活動。主な被写体は人物で揺れや動きのあるポートレートと得意とする。
2023年10月に富士フォトギャラリーで行なわれた個展「実り咲く」では展示した15枚の作品が完売。
instagram:mitsutsuka_

高井哲朗
たかい・てつろう/1978年 フリーとして活動開始。1986年(株)高井写真研究所設立。広告写真を中心に活動するかたわら、ゼウスクラブを開催し、写真の可能性を伝導する。
www.kenkyujo.co.jp/
twitter.com/TetsuroTakai


コマーシャル・フォト2023年12月号記事より

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