CP+プロ向け動画セミナー 2018

一眼ムービーなんて怖くない! CP+編「撮影シーン別・この機能が欲しい!」

解説:鹿野宏

CP+ 2018において、プロのフォトグラファーを対象として開催された「プロ向け動画セミナー」。2日間に渡って行なわれたセミナーの内容を詳細にレポートする。第1回は、フォトグラファー鹿野宏氏による「導入編」をお届けする。

3台のカメラと新機能

img_event_cpplus2018_shikano_20.jpgフォトグラファーの鹿野宏氏

皆さん、こんにちは。鹿野です。昨年に引き続き、CP+のプロ向け動画セミナーで、「一眼ムービー」についてのお話をさせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。

実は、このお話を頂いた時には、ムービー撮影機能に関して「あったら嬉しい機能」をテーマにお話をするつもりでいました。それが昨年から今年にかけて、それらの機能を搭載したカメラが次々に登場してきたんですね。そこで今回は当初の方針を変えまして、その新しい3台のカメラを紹介しつつ、最新の一眼カメラの注目機能についてお話しをさせていただこうと思います。

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私が注目した3台のカメラというのは、すべてミラーレスカメラでした。今、進化を続けているデジタルカメラの新機能はミラーレスだからこそ実現できたものだと言えると思います。ミラーやペンタプリズムがなく、背面液晶やファインダーで、映っているものをそのまま見ることができるミラーレスは、まさにデジタルカメラの完成形と言えるのではないかと私は思っています。

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もちろん、まだ課題も弱点もあります。なかでもファインダーに関して言うと、ミラーとペンタプリズムを通して見ることのできる一眼レフのファインダーのほうが魅力的に感じます。見ているだけでいい写真、いい映像が撮れるような気がしてくるのは一眼レフですよね。ただし、これからのカメラが求められる機能を搭載することを考えると、やはり、カメラはミラーレスの方向に向かうのは間違いのないところだろうと思います。

スライドにミラーレスカメラのメリットやデメリットを簡単にまとめてみました。このあたりも前提にしつつ、話を進めていこうと思います。

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「高感度に強い」だけではないLUMIX GH5S

さて、今回テストをしたのはソニーのα7R III、パナソニックのLUMIX GH5S、富士フイルムのX-H1の3台です。それぞれセンサーサイズが違って順にフルサイズ、マイクロフォーサーズ、APS-Cになります。なぜかフルサイズセンサーを積んだα7R IIIがいちばん小さい、というのがちょっと面白いですね。

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では、これら3つのカメラの特徴を見ていきましょう。まずGH5Sですが、外見は1年ほど前に発売された、「GH5」と見分けがつきません。目についた違いといえば、ダイヤル部分のリングに赤いラインが施されている程度でしょうか。

では、このGH5Sの最大の特色は何かというと、なんといっても高感度域での画質ということになります。これまでセンサーサイズの小さなマイクロフォーサーズではちょっと無理だろうと考えられていた、暗所での撮影性能が大きく改善されました。

私も実際に使ってみて、ISO6400で手応えのある絵が撮れるようになったと感じました。私はこの「ISO6400」で画質が、暗所で使えるカメラかどうかという点の1つの基準になると思っているのですが、このGH5Sは問題なく合格と言えるカメラに仕上がっています。

そして「HLG(ハイブリッドログガンマ)」による記録ができるようになりました。これは今、大いに注目されている機能の1つであるHDRでの撮影機能です。ダイナミックレンジを拡大することで、従来よりも明暗の階調をより豊かに表現する機能です。これについては後でもう少し詳しく触れたいと思います。

さらには4K60Pの撮影が、内部記録できるという点にも驚かされました。外部レコーダーがなくても、4K60P撮影ができるんです。また、ホワイトバランスやフォトスタイルが撮影中も柔軟に変更できるようになったり、電源OFF中もタイムコードがカウントアップしたり、音声収録時にノイズ除去機能がついたりと、利用者の声によく耳を傾けた改善が行なわれていることにも感心します。

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しばしばタイムラプス撮影をする者としては、インターバル撮影時に最初からV-log L、HLGに対応しているという点もうれしい進化です。また、フルHDにはなってしまうんですが、240Pの撮影ができるという点もこのカメラの優れた部分だと思います。

こうして機能を挙げていくと、本当に技術的に優れたカメラだと感心します。その分、バッテリーの持ちが悪くなったかな、と感じます。まあ、これだけいろいろなことができるカメラですし、仕方ない部分かと思います。

GH5Sの暗所性能はなぜ向上したのか

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暗所性能の向上について補足をしておきましょう。なぜセンサーの小さなGH5Sでこんなことができたのか。その秘密についてパナソニックは、高感度域の撮影時に、アナログ状態の時にゲインアップをしてからデジタルに変換している、と話しています。これは音声のノイズ処理を行なうドルビーノイズリダクションシステムの仕組みと似ています。

そのD/A変換の仕組みに加えて、ノイズだけを選択的に処理する仕組みや色分離をするために、参照するエリアを今までの9倍以上にしていると言います。映像の解析をして必要なところだけ、そういった効果をかけているわけですから、データの処理が大変だと思います。単に高感度に強いだけでなく、人肌の処理が本当に良くなったのにはこういった理由があったんですね。

img_event_cpplus2018_shikano_07.jpgGH5Sのダイナミックレンジのカーブ。ISO3200時

さて、実際に撮影した映像をもとに、GH5Sのダイナミックレンジのカーブを見てみましょう。大変きれいなカーブを描いていることがわかります。ISOが上がってもカーブはきれいで(上図はISO3200)、十分にきれいな画が撮れることがわかります。ISO6400でも10絞り分のダイナミックレンジが確保されているのですが、これはなかなかない広さだと思います。

GH5Sで撮影した星空の映像を見ると、天の川がうっすらと見えるGH5やその前のGH4では無理だった表現が可能になっているんですね。ちなみに、ISO25600のカーブもちゃんとしているので驚きました。

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こちらはGH5SとGH5を2台並べ、同じ条件で撮影してみた映像です。ISO800まではそれほど変わらないのですが、そこから先になると肌色の塗り具合や頰の部分の白飛びの具合、さらにはシャドウ側のノイズで差がついていますね。GH5Sはかなりがんばっていて、肌色のバランスが崩れないことがわかります。

ちなみにISO25600も撮影してみましたが、さすがに厳しいです。とはいえ緊急避難的には使えそうなことにはちょっと驚かされました。また、先程触れたホワイトバランスに関しても、背景がブルーだろうがベージュだろうが、なかなかうまくまとめてくれています。高感度への対応だけでなく、色作りもとても良くなっているなという印象です。

撮って出しも可能なFUJI X-H1

さて、次は富士フイルムのX-H1です。こちらのカメラはなんといっても、フィルムシミュレーション機能に注目です。新たに搭載された「エテルナシネマ」とは、かつて富士フイルムが映画用に製造していたカラーネガフィルムです。高感度の画質がよく、グレーバランスもよい。急に光が入ってもオーバーにならない。飛びすぎず、シャドウ側の立体感が失われないという特色を持っています。

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実際にこのエテルナで動画を撮影してみると、これが実に扱いやすい映像が撮れます。個人的には、エテルナで撮影しておけば、後で少しチューニングするだけでいいと思えるくらいでした。さらに人物を撮影するには「プロネガスタンダード」も素晴らしい。固い光の中でもやわらかな表現ができるカメラだと言えます。

X-H1のすごいところはもちろん、フィルムシミュレーションだけではありません。ISO6400で非常にきれいな画を撮ってくれますし、EVFの見やすさは特筆すべき点です。私がこれまで使った中でも1番目か2番目くらいの出来ではないかと思っています。また、注目なのがダイナミックレンジ拡張モードです。ISO400で200%、ISO800で400%と、ハイライトが飛んでしまうのを防いでくれます。logはもう必要のないのではないかと思われるほど、画作りという点で優れたカメラだと感じます。

実は、動画カメラとして見ると「ちょっとどうなんだろう」と思う部分がないわけではない。しかし、後工程の色調整の作業をせずにそのまま仕上がりの映像を撮ってくれるという意味では、実に素晴らしいカメラだと思います。

フィルムシミュレーション「エテルナシネマ」の特徴とは?

img_event_cpplus2018_shikano_10.jpgフィルムシミュレーション「プロネガスタンダード」「エテルナシネマ」の違い

エテルナシネマとプロネガスタンダードを比較してみました。ISO感度は200。比較してみると両者の違いがわかると思います。エテルナシネマはプロネガスタンダードと比べると、シャドウ部分のトーンが豊かな印象です。にも関わらず、眠い絵にならないように色相などを上手にコントロールしているな、という印象です。ISO6400で比較してもその傾向は変わりません。以前のカメラと比べて大きく進化している部分ですね。

さらに感度をISO12800に上げてもノイズは非常に少ないです。静止画であればこのくらいで最近普通になってきましたが、動画でもこのレベルなんですよね。非常に自然な描写です。人物を撮っても不自然さはほとんどありません。シャドウからハイライトまでしっかりと記録されています。

ダイナミックレンジ拡張機能を使うと、ISOに制限はありますが、12絞り分まで使えます。特にISO800ぐらいを目処に使っていくと、広いダイナミックレンジで使えると思います。この点も素晴らしいですね。

img_event_cpplus2018_shikano_11.jpgフィルムシミュレーションそれぞれのカーブを重ねてみると、いずれも傾向が似ていることがわかる

次に、5つのフィルムシミュレーションを比較してみることにしました。どれもかつてのフジのフィルムを忠実に再現しているなと感じます。実際の映像のカーブを比較してみると、色相や彩度に違いがありますが、どれもカーブの傾向が似ています。これはモノクロモードに至るまで同様です。エテルナやプロネガスタンダード、ベルビアなど、特徴的でありながらも似たような傾向の色味ですから、編集で組み合わせても破綻することはないでしょう。狙いに合わせて使い分けるといいと思います。

img_event_cpplus2018_shikano_12.jpgXF56mmF1.2 R APDを使ってみる

ちなみに、レンズは単焦点の大口径中望遠レンズ「XF56mmF1.2 R APD」を使わせていただいたんですが、評判どおりボケが美しく、コントラストもやわらかいにも関わらず、絞っていくとシャープさが出てくる。これもまた、素晴らしい機器だなと感じました。

動画撮影にも強いソニー「α7R III」

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さて、本日紹介する3台目のカメラは、ソニーの「α7R III」です。皆さんご存じのとおり、4,240万画素のセンサーを積んだカメラです。私はこのカメラを、ピクセルシフトマルチ撮影をするために購入したんです。1回の撮影時に、イメージセンサーを1画素分ずつずらして4枚のRAW画像を撮影することで、約1億6,960万画素相当の画像を作る機能です。

とはいえ、動画撮影にも使ってみると、ムービー用にもいいカメラだったんです。その理由の1つは、フルサイズレンズを付けても、APS-Cレンズを付けても、どちらでも4K撮影ができるという点です。レンズの画角を写真撮影時と同じように使用できますし、フルサイズではシャープに、APS-Cはいかにも動画らしいシャープすぎない画が撮れる。また動画撮影中にハイブリッドAFが効くところも素晴らしい。瞳検知はまだ動画撮影では使えませんが、それでもAFはよく効きます。

私が最も気に入っているのが、カメラを持った時に右手親指でピントの位置を操作できる「マルチセレクター」。これなしではいられなくなるほどに便利です。

バッテリーはただ持つだけでなく、USB給電も可能です。小型のスマホ用バッテリーなどを一緒に持ち歩けば、動画撮影でもまるまる1日使うことが可能ですね。

さらに、フレームレートが1から120fpsまで8段階から選択できる点や、テザーソフトに対応したのもトピックです。このソフトのおかげで、やっとPCからカメラの操作ができるようになりました。まだこなれないところはありますが、今後大いに期待できると思っています。

モードの違いと映像の傾向の違い

img_event_cpplus2018_shikano_14.jpgα7R IIIでは、動画モードの違いによって、撮れる画の傾向が大きく変わってくる

今回、α7R IIIは3種類のモードで、ダイナミックレンジの違いをチェックしてみました。一番上が「HLG(ハイブリッドログガンマ)」、次が「CINE1/PP5」。CINE1/PP5はソニーが考える標準的なカーブだと捉えていいのではないかと思います。一番下が写真用の「ニュートラル」。それぞれ全く性格の違うカーブになっているのがわかると思います。

ニュートラルはコントラストが高く、それをややゆるやかにしたのがCINE1/PP5です。私は以前からずっとこれを使ってきました。そして注目のHLGですが、これはX-H1の拡張モードに匹敵するくらいダイナミックレンジが広いです。

撮影した映像を見ていくと、ISO3200くらいまでは全く変化がない。ISO6400くらいになって初めて、カーブがちょっとざわつくようです。それでも、ISO12800までは十分に使える印象です。ISO25600になるとはちょっと厳しいかもしれませんが、使えないことはありません。

また今回は「ポートレートモード」で撮影してみた際、肌色の表現がとてもよいと感じました。これまではちょっと青っぽい仕上がりになっていたんですが、今回はやわらかく自然な感じになりました。CINE1/PP5で撮影し、撮影後に調整した結果に近い。ただし、高感度に設定した時の処理はGH5Sのほうがちょっと調整の仕方がうまいような気がしました。

img_event_cpplus2018_shikano_15.jpgFHD240Pでの撮影

それともうひとつ、FHD120Pでの撮影も試してみました。ポップコーンがはぜる映像です。画角が狭くなるなどの制限があるのですが、こういった映像が撮れるという点は大きなメリットになりますね。

注目のHDRについて知っておきたいこと

ここで「HDR」について触れておきましょう。HDRは、sRGBはもとより、Adobe RGBよりも全体的に色域が大きく広がっています。輝度が高いものも強い色で表現できるというのが、その大きな特色です。鮮やかな色や、金色のような色味も非常に忠実に再現してくれる。特に肌色やオレンジ、ブルーの彩度は特に高く表現できるため、夕日を撮影した映像など、太陽の輪郭がはっきりと見えるほどです。ただし、HDRの映像は、専用のHDRディスプレイでなければ表現しきれないんです。環境に左右されるということは覚えておいてください。

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ところでHDRには、「PQ」と「HLG」のという2つの方式があります。それぞれの特徴は一覧にまとめましたが、HDRはドルビー社が提唱してきた方式で、とにかくものすごく明るい表現ができます。間近でスポットライトを見ているような、あるいは太陽をそのまま見ているような感じです。おそらくこれから、映画の爆破シーンなどではこのPQ方式が使われることになるんじゃないかと思います。ただし、このPQは、撮影した映像を映し出すことのできるディスプレイが限られてしまう。普通のディスプレイではまともに映らないんですね。素晴らしいが、敷居の高い方式だと言えます。

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一方のHLGは、NHKがBBCと一緒に開発した方式で、輝度をやや抑えることで扱いやすいようにしています。もちろん現在のディスプレイよりは圧倒的に素晴らしい映像表現ができるため、今すぐにでも使える方式だと言えます。今後どちらがより多く使われるようになるか、注目しておく必要があると思います。

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一眼ムービーカメラにはこんな機能が欲しい!

そろそろ時間がなくなってきましたので、最後にこんなテーマで少しお話をさせていただこうと思います。「それでもまだある『こんな機能が欲しい!』」です。HDRや4K60Pなどの優れた機能が実現する一方で、まだまだ欲しい機能はあるよ、と期待を込めてご紹介したいと思います。

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まずは1つ、ぜひファインダーを「HDR」化してほしいというのが今の一番の希望です。冒頭でまだ一眼レフのファインダーのほうが素晴らしいというお話をしましたが、HDR化が進めばその部分も解決に近づくことになるかもしれません。

さらには「AF」。AFの挙動をもう少し細かく指定したいというのがそれです。例えばカメラが被写体を見失った時に、どういう振る舞いをするか。そのままにするのか、それとも別の方式にするのか、といった点ですね。また、AFももっと滑らかに動いてほしいですし、絞りもカクカクと変わるのではなく、滑らかに変化してほしい。

また、「ISO」と「絞り」の連動ができるようになってほしいなと思います。例えばISO200を中心にして撮影を続け、その設定範囲を超えたら今度は絞り値が変化する、といった設定ができないものか、とよく思います。オートの範囲と希望値をそれぞれ設定できるといいのにな、と思います。

最後にNDフィルターですが、GH5Sはアナログ状態でゲインアップをすることで高感度耐性を高めていますが、その逆で、アナログ状態でゲインダウンをしてからD/A変換する、というような形ができたら面白いのになと思っています…。

おっと、いよいよ時間ですね。キリがないのでこの辺りにさせていただこうかと思います。本日は長い時間どうもありがとうございました。


取材:小泉森弥

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